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第5話 採掘に挑戦!

今回は採掘に出かけます。

ちびっ子達がついて来てるけど……大丈夫かな?

「……ツルハシに、お弁当、念の為の回復アイテムもあります。準備OKです」


「がんばるであります! 師匠!」


 今、俺達はM&Mのゲートの部屋に集まっている。

 やっと、マユさんが1日店を空ける準備が出来て、本日、採掘に出かけることになったからだ。

 メンバーは、俺とアンとマユさん……と……。


「お宝探しだよ~~~~」

「…………(おたから、おたから)」

「…………(ざっくざく)」

「掘るニャン!」

「ここほれ、ワンワン!」


 何故かちびっ子達もついてくることになっていた。

 それにしても、そのちびっ子サイズのツルハシはどこから持ってきた?

 ちなみに、俺達3人のツルハシは、昨日の夜俺が作った物だ。


「ま、がんばりなさいよ」


 シーナはちびっ子達を一瞥すると、ご愁傷様といった感じで応援してくる。

 く、トラブルが起きるのが当然みたいな……俺もそう思うけどさ……。

 せめてリーフさんが居れば……。

 何かこの頃、出かけるのが多いんだよな彼女。

 トラブルでもあったのかって聞いたら「自分の修行をちょっと……」とか言ってたので問題はなさそうなんだけど……。

 その分、ティナが自由になるのが問題といえば問題か……。



「ミルファさん、お店の方よろしくお願いします」


 マユさんは、ミルファさん達にお店の事を改めて頼んでいるみたいだ。


「マユさんも気をつけて」


「はい、気をつけます。レナさんもよろしくお願いします」


「がんばります!」


 まあ、ミルファさんの方は普通に仕事をこなしてくれそうなんだけど……両手を握って気合を入れているレナさんからは不安を感じるんだよな。

 大丈夫……だよな?


 そんな感じで留守番をお願いして、エルフの森に向かった。

 ちなみにセリカは、いつもの如く狩に出かけている。

 アンが来てから、対抗意識か妙に気合が入ってるんだよな……あいつ。




 エルフの森のゲートについてから4時間ほど歩いて、前も来たティナの隠れ家跡地にやってたどり着いた。

 前みたいに変なモノが住み着いてないか一通り確認した後、採掘を始める。


「沢山掘り出すであります!」


「少しでもマジックアイテムの素材を……」


 うん、二人とも、やる気十分だな。

 俺も幻惑石をある程度掘り出しておきたいんだよな。ちょっと作りたいものもあるし。

 お昼まで1~2時間、あと午後が4~5時間あるから十分だとは思うけど……。

 帰りについてはいつもの通り帰還の指輪だ。

 当然アンも持っている、そういえば渡したのはレベリングはじめる時だったか?

 まあ、それはともかく、俺もがんばって沢山掘り出そう。


「お宝掘るよ~埋蔵金だよ~徳川だよ~」

「…………(おたから~)」

「…………(ざっくざっく)」

「食べきれないお魚ニャ!」

「お肉いっぱいだワン」


 ティナ……また変なマンガ読んだだろう。徳川埋蔵金はこんな場所には絶対に無いぞ!

 狐っ娘姉妹は、期待のし過ぎだろ。

 あと、タマ&ポチは、いつの間にか食欲になってるぞ!


 う~ん、ちびっ子達は色々と不安だな……。




「師匠、これはどうでありますか?」


 採掘を始めてから30分。

 アンが木の籠に、石を一杯入れて持って来る。

 彼女は鑑定系のスキルが全く無いので、俺が代わりに鑑定してるのだ。

 まあ、後でまとめての方が効率が良いような気もするんだが……。

 最初の頃は1個掘り出すごとに持ってきていたので、木の籠を渡してそれに一杯になったらって事にした。


「これは、ただの石ころだなハズレ。これも、ハズレ」


 …………。

 ……。


「これもダメだな」


 …………。

 ……。


「ハズレ」

 

 …………。

 ……。


「う~ん、全部ダメか……」


 やっぱり、これは……あのスキルが威力を発揮してると見るべきか……。

 『未来の匠』……恐るべし。


「そんな~であります……」


 ガックリとうなだれているな。

 流石に、此処まで数回籠を持ってきたけど、全敗だからな……さすがに応えるか……。


「でも、負けないであります! もう一度いってくるであります!」


 うん、1分で復活するのは凄いと思う。

 

 さて……問題は、ただの石ころを掘り出したのが【鍛冶師】への条件の採掘回数に含まれるかだな……。

 これは流石にだめな気がするんだよな……。

 このまま、あと昼飯まで1時間弱。それまで全敗なら何か考えた方がいいかもしれないな。

 俺の採掘は、本当に必要最低限ならなんとか昼までに終わりそうだしな。ま、多いに越したことがないのは確かだが。




 そして、昼時になったので一旦作業をやめる。

 ティナにウンディーネを呼んでもらい、皆で汚れを落として昼食にする。


「全然、掘り出せなかったであります」


 しょんぼりとした様子でチビチビお弁当を食べてるアン。

 流石に、午後からは彼女を手伝った方がいいよな。

 条件達成しないと此処に来た意味が無いしな。


「銅鉱石などは、多少見つかりましたが、幻惑石とか属性石とかマジックアイテムの素材になりそうなのは、中々見つかりませんね」


 マユさんの方も、芳しくないか……。

 ただまあ、マユさん採掘系のスキルとか無かったはずだしな。

 そういう意味では、順当なのかもな。


 そういえば、ティナ達はどうなってるんだ?

 だれも鑑定できなかったはずなんだが……。


「ティナ達は、どんな様子なんだ?」


「何か手ごたえがあるよ! もう直ぐな気がするよ!」


「…………(いっぱい、ほった~)」

「…………(がんばった~)」


「手が痛いニャ~」

「お肉食べたいワン」


 うん? 何かおかしいような……。


「掘り出した石とかってどうしてるんだ? 少しは掘れてるんだろ?」


「うん? 石とかなら全てあそこに捨ててるよ!」


 ティナの指差す先を見ると5つの石の山が……。

 おい、お前たちは何をしに来てるんだ!?

 一応、山を鑑定してみると……。

 質はあんまり良くないけど、銅鉱石、鉄鉱石などが混ざっている。

 う、凄く質の悪い幻惑石も数個あるじゃないか……それどころか、土の属性石まで1つだけど見つかった。

 なんだかな~。





 昼食が終わり、少し休んだ後作業を再開する。


「アン、午後から俺が手伝う。頑張って鉱石を掘り出そう!」


「師匠! 師匠の方はもう掘らなくていいのでありますか?」


 アンが少し申し訳なさそうに尋ねてくるので。


「一応、最低限の量は確保できたからな。今日中にアンの目標の方をクリアしておきたい」


「了解であります。よろしくお願いするであります!」


 頭を下げた後、期待がこもったキラキラとした目をこちらに向けてくる。

 信頼度が半端ないな……。

 

 さて、手伝うとは言うもののどうするか……。

 ここはシンプルに行くか!


「俺が今から鉱石がありそうな場所に目印を付けていくからそこを掘っていくようにしてみろ」


「了解であります!」


 単純に、俺の『採掘(M)』で鉱石を見つけて、アンに掘らせるだけなんだが……少しズルかもしれない……。

 流石に、俺が掘った時だけ、いい鉱石が埋まってるとかそんな無茶はないだろうからな。

 WMOのゲーム内だとありそうだけど……そういう補正。



「頑張るであります! 頑張るであります! 頑張るであります!」


 アンが目印にツルハシを振り下ろして採掘を始める。

 1つ目、出てきたのは石ころ……ハズレだ。


「負けないであります! 負けないであります! 負けないであります!」


 2つ目は……石ころ……またハズレだ!


「師匠を信じるであります! 師匠を信じるであります! 師匠を信じるであります!」


 3つ目も……ハズレ……。 


「くじけないであります! くじけないであります! くじけないであります!」


 4つ目も……。

 あ……アンの瞳にうっすらと涙が……。

 う~ん、まいったな。

 この方法じゃダメだったか?


「泣かないであります! 負けないであります! くじけないであります!」


 5つ目は……。

 

「お、これは……」


「どうだったであります? 師匠?」


「品質は最低だけど……一応、銅鉱石だ!」


 助かった何とか掘り出してくれたか……。


「スゴイであります。流石師匠であります! やったであります!」


 うん、飛び上がらんばかりに喜ぶのはいいけど、ツルハシ振り回すな危ない!



 その後、4時間ほど同じ方法で掘り続けた所、アンは、大体3回に1度ぐらいのペースで、最悪でも10回連続でハズレを出すことは無かった。

 

「う~ん、これだけ掘り出せば何とか条件はクリア出来そうだな」


 俺のアイテムボックスに仕舞った、アンの掘り出した鉱石の数えてみたところ30個を越えている。

 確か、25回ぐらいだったはずなんだよな……。

 だめだったらもう一度、堀に来ればいいよな。今度は1日掛からないはずだしな。


「そうでありますか! やったであります!」


 さて、そろそろ帰る準備を始めるか。流石に疲れてこれ以上掘る元気がない。


「マユさん~そっちの調子はどうだ?」


 マユさんが掘っている場所に行ってみると……石ころの山が何個も出来ている。

 結構沢山掘ったみたいだな。


「それなりには見つかりましたけど……まだまだ足りないです……」


 そもそも此処は、マジックアイテムの素材になりそうなのは土の属性石と幻惑石ぐらいだからな。

 いい鉱脈は自分で見つけるか、ダンジョンと化した廃鉱に行くしかないんだよな。

 モンスターが襲ってくる中でゆっくり採掘とかもきついだろうし……。

 

「じゃあ、予定通りあと1時間――」


 その時、『危機感知(M)』が危険を訴えかけた。

 鉱山での危険といえば、落盤だ。

 マユさんと、一緒についてきていたアンを抱えて最大威力&無詠唱で防御魔法を発動させる。

 MPが8割近く持っていかれるが気にしない。

 

 1秒、2秒、3秒……。


 『危機感知(M)』は、相変わらず危機を訴えかける。

 これは、帰還の指輪で戻った方がいいか?

 だけど、ちびっ子達を置いていく訳には……。

 そう考えた時だった。


 真っ赤な炎が洞窟の入り口の方から押し寄せてくる。

 幸い、防御魔法で俺たちは無傷だが……。


「テ、ティナさん達の方向では?」


 マユさんが青い顔で呟く。


「たいへんであります! たいへんであります!」


 アンは少しパニックになりかけている。


「二人とも、急いであいつらの所に行くぞ!」


「はい!」

「了解であります!」


 ティナはともかく、妖精さん達がいるから大丈夫だとは思うけど……万が一がある。急ごう!





 ティナ達が掘っていた所にたどり着くと……。


「…………(きゅ~~)」

「…………(くるくるくる~~~)」

「ニャぅぅ~」

「ワぅぅぅ~」


 目を回してる、4人のちびっ子達。


「びっくりしたよ~ありがとう~みんな~~~」


 赤い火トカゲの妖精……たぶんサラマンダーだろうにお礼を言ってるティナ。

 やっぱり、妖精が助けてくれていたか流石に心配したぞ。


「ティナ! お前、何をやった!」


「あ、クロちゃん。うんと――」


 そう応えようとした所で、ピシピシと何か嫌な感じの音が聞こえてくる。


「ティナ! 話は後だ! あいつらを抱えてすぐに外に出るぞ!」


 少し遅れて追いついてきたマユさんとアンにも手伝ってもらってちびっ子達を運ぶ。

 速度と力が上昇する補助魔法を皆にかけて、それぞれちびっ子を背負って逃げ出す。

 俺が天狐、ティナが地狐、マユさんがポチでアンがタマだ。


 そして、最後尾を走っていた俺が、洞窟から飛び出した直ぐ後に、轟音を立てて崩れていく。


「あ、あぶなかった……」


「危機一髪であります!」


「すごかったよ~~~」


「………………」


 本当に危なかった。

 マユさんなんか絶句して言葉が出てこないで居るぞ。

 あと、ティナやっぱりお前は感想がおかしい!






 その後、ティナに何があったか聞くと……。


「穴を掘っていたら……シューって音がしたんだよ! この先に何かがあると思って急いでツルハシでガンってやったんだよ! そしたら……どっか~~~んって……」

 

 うん、何となく解った。天然ガスでも掘り当てたんだな……。

 何かあるってのは間違っていなかったんだが……少しは考えて行動しろ…………。

 いや、知らなかったのか? 危険性を……。

 

 帰ったらリーフさんに相談しておこう。



「洞窟がつぶれてしまったし……今日はこれで帰るか……」


「了解であります」


「…………そう……ですね……」


「え~~」


 ティナお前はもっと反省しろ!




 その後、ティナ達の捨てた石の山から鉱石類を鑑定して使えそうなものを拾って帰ってきた。

 何気に、マユさんの放り出した鉱石よりも多かったりした。まあ、5人分だしな。













「ティナ……洞窟で可燃性のガスを見つけたら火気厳禁でしょ! 何をやっているの!」


「炎なんて使ってないよ!」


「ツルハシを壁に打ち付けたんでしょ! 火花が出るに決まってるじゃない!」


「火花……?」


「解りました……。しばらく、みっちり勉強ですね!」


「えええ~~そんな~~~リーちゃん許してよ~~~~」


「興味無い事は、ひたすらサボっていたツケです。丁度いいから色々みっちりやりましょう!」


「そ、そんな~~~~~だれか~~~たすけて~~~~」

次の話は、ついにアン【鍛冶師】になる?

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