第3話 掘り出し物
今回は、ティナが……掘り出し物(?)を手に入れてきます。
ティナ……目利きとか相場とを知らないと掘り出し物は買えないぞ!
※2014/06/28 追記
製造前に補助魔法で成功率の底上げをする描写を追加。
「掘り出し物なんだよ~すごいでしょ!」
「ティナさん……それは……」
「どうしたのマユちゃん? いいでしょ~」
「あの、それは……」
「あんた、それいくらで買ってきたのよ?」
「あ、シーナちゃん。1万ゴールドなんだよ! 掘り出し物なんだよ~!」
「ティナ……それ……相場は5,000Gぐらいよ……」
「えっ………………」
「まあ、それ自体は凄いレアだけど……使い道無くて安いわよ」
「そ、そんな~~~」
「ま、探そうとした場合、10,000Gでも手に入るか微妙な物だから、ボッタクリとまでは言えないけどね」
俺が、料理教室を終わらせて1階に降りてくると、なにやらお店の方が騒がしい。
外を見てみると、少し暗くなって来ていて、そろそろ夕飯の準備の時間だ。
料理教室は結構時間を食ったな、片付けは狐っ娘達に任せたんだけど……。
今日の夕食は、俺の当番だけど……少し店の方を覗いておくか。
あ、そういえば、狐っ娘達に料理の見物と簡単な手伝いさせてもいいな。
そんな事を考えながらお店に顔を出すと……。
カウンターで撃沈しているティナ。店番としてその対面に立って苦笑いしているマユさん。
ティナの隣ではシーナが呆れ顔を浮かべているし……。
アンはカウンターの上のアイテムを興味深そうに見ている。
うん、一体何があったんだ?
「このバカが、掘り出し物とかいって変な物つかまされたのよ」
バカという部分を特に強調すると同時にティナを一瞥するシーナ。
ああ、その説明だけで何となく理解した。
そういや、掘り出し物を買って来るとか言ってたからな……。
「で、問題の買ってきた物ってのはそれか?」
アンの目線の先にある、金色のアイテムを指差す。
「そうよ。ま、レアな素材には違いないんだけどね……」
う~ん、瓶に入った黄金の液体に、黄金のぷるるんとしたゼリーみたいなのに、金色の欠片……何の素材だ?
何処かで見たことあるような気はするけど……。
『アイテム鑑定(M)』のスキルで鑑定してみる。
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黄金の雫
ゴールドスライムの体液で、金色に輝く液体。
ゴールドゼリー
ゴールドスライムの体の欠片で、金色のゼリー状のアイテム。
ゴールドスライムのコアの欠片
名前そのままで、ゴールドスライムのコアの欠片。
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ああ、何処かで見たと思ったら、ゴールドスライムの素材か~。
あれは、経験値UP系の装備やアイテムの材料になるんだけど……効果が微妙すぎて殆ど使われてなかったよな。
上位種のゴールドキングやエンペラーならまだ使えないことはないんだけど……。
あと、その上のランクのプラチナのエンペラーならそれなりに愛用とかする職業があって、結構高値で取引されてたな。
プラチナの上には、レインボーが居るとか居ないとか言う話があったけど、都市伝説とか言われてたし居たとしても恐ろしく希少なんだろうな。
ちなみに、ゴールドとかプラチナとかってのは、凄いレアなモンスターで、もし出会えても直ぐに逃げ出し中々倒せないのだけど……倒すと大量の経験値や熟練度をくれるボーナスモンスターだ。
ゴールドがあって、シルバーがないのかって聞かれそうだが、シルバーの方はアイテム系のボーナスモンスターだったりする。上位種にジュエリーだったかな?
熱心にゴールドスライムの素材を見続けるアンを見ながら考える。
う~ん、まあ、経験値UPや熟練度UPの倍率が低くて気休め程度でも、修行の効率が良くなるなら作るのもありかもな~。
他に用意する素材もゴールドのインゴットで金貨つぶせば作れるし……。
ティナに交渉してみるか。
「ティナ、良かったらその素材譲ってくれないか? お金なら払った分出すぞ」
俺がそう声をかけると……突然復活し偉そうな態度で胸を張る。
「ふふ~ん、”きちょうな”アイテムだからお金では売れないよ!」
俺が欲しがったから、こいつ調子に乗ってるな。
さて、どうするか……。
そこまでして必要か?
アンの方に目を向けて考える。
「師匠、どうしたでありますか?」
うん、師匠と言って慕ってくれるし、多少骨を折るのはいいか。
「いや、なんでもない」
それじゃあ、どうやって交渉しようかと考えていた所で、「いらっしゃいませ~」というマユさんの声が上がった。
あ、お客が来たか此処じゃ邪魔だな。
「ティナ、話は中でするぞ」
「うん、わかったよ~でもオマケはしないよ~」
俺とティナはダイニングに移動して交渉を再開する。
何故かシーナも着いて来たけど、まあ店で仕事もないだろうしな。
さて、交渉材料は何にするか……。
「ふっふ~ん。同じぐらいきちょうな物じゃないと交換してあげないんだよ!」
いつの間にか物々交換になっている。
ま、いいか。
問題は、ティナが気に入りそうなアイテムは何かって事だよな……。
う~ん、アイテムボックスの中を色々見てみる。
エリクサーとかの貴重な回復アイテムとか……却下だな死蔵したらもったいなすぎる。
素材とかでも、使えそうなのはダメだな。そもそも、貴重な生産素材に興味がなさそうだし。
う~ん、何かアイテムでも作ってそれと交換がいいか?
そんな事を考えてると一つの素材に目が止まる。
うん、これならティナでも満足しそうな気がする。ネームバリューもあるから知らないことは無いだろうし。
ちょっとした加工で、防御や魔法防御なんかを多少あげれるアクセになるしな。ちびっ子達に渡すのも良さそうだな。
「そうだな、これなんかどうだ?」
俺は、その素材をティナの目の前に取り出す。
「何これ? 緑の鱗?」
ティナは不思議そうに首をかしげる。
「あんた、それって……まさか……」
シーナは驚いた表情でそれを見ている。
「シーナは気づいたか……ドラゴンの鱗だ」
「ド、ドラゴン!?」
ティナは、ドラゴンの鱗に目が釘付けになっている。
「はぁ、なんて物を出すのよ! どう考えてもつりあわないわよ!」
シーナは、色々通り過ぎてあきれてしまった。
「ド、ドラゴン……凄いけど、こっちは一杯あるんだよ! 1つじゃ……ダメなんだよ!」
うん、ティナ欲張りすぎるなよ……シーナが絶句してるぞ。
「そうだな、ドラゴンの鱗5枚分でどうだ? ちびっ子達で1人1枚ずつ分けれるぞ」
「分けるの?」
「独り占めするのか? あいつら悲しむぞ……」
「う、解ったよ! その代わり、この欠片は1つお気に入りにして部屋に飾るよ!」
まあ、いいか……ゴールドスライムのコアの欠片は残り5つあるしな。
「OK、商談成立だな。あとで、そのドラゴンの鱗をアクセサリにしてやるから5人で何にするのがいいか相談して来いよ」
「おお~~。解ったよ~~相談してくるよ~」
そのまま、ティナは部屋を飛び出していく。
あ、狐っ娘達に、夕食の準備の見学させようと思ったけど……今日はいいか……これから機会はいくらでもあるしな。
「あんた、うまく乗せたわね……。何も無くても、そのうち渡すつもりだったでしょ」
う~ん、今思いついただけなんだけど……まあ、勘違いさせておけばいいか。
「ふっ」と、笑いを浮かべる事でシーナに答える。
夕食後、作業場にゴールドスライムの素材を加工しに来た。
食べてる時に、素材の加工の話をしたら……。
「作るところ見せて欲しいであります!」
「私も、ゴールドスライムの素材の加工を見せて欲しいです。素材として使えると聞いた事が無いので気になります!」
と、アンとマユさんが興味を示して見学に来た。
う~ん、ゴールドスライムの素材使って経験値UPアイテムってのはこっちの世界には無いのか?
あ、もしかしたら、経験値を正確に計測しながらモンスターを倒す方法が無いから解らないのかも知れないな。
「じゃあ、始めるぞ」
「はい、であります」
「はい」
まずは、素材について考える。
ゴールドゼリー。これは、使用した本人が一定時間、取得経験値UPもしくは取得熟練度UPする、飲み薬の素材になる。
あ、両方UPするものもあったな。
黄金の雫。こっちは、フィールドに散布すると、ゼリーの時のように取得UPする薬になる。
一定時間散布した範囲内で倒した敵に対して効果があるので、その場で戦う人全員に有効だ。
ゴールドスライムのコアの欠片。これは、上のUP効果のついた装備品の素材になる。
装備している間ずっと効果はあるが、UP率そのものは大分低下する。
うん、薬系は……あんまり使い道もないし、後でマユさんにレシピ教えて作らせて見よう。
効果そのものが微妙だから、例え失敗してもいいだろう。
というわけで、今回は装備の作成だな。
効果は微妙でも積もり積もればってやつだしな。
こっちは、高品質を狙いたい。
確か、品質によって効果が違ったはずだ。
最高 :取得経験値・小UP&取得熟練度・小UP
凄く良い :取得熟練度・小UP
良い :取得経験値・小UP
ちょっと良い:取得熟練度・微小UP
普通 :取得経験値・微小UP
こんな感じだったはず。
できれば最高品質を作りたい。あと、普通より下の品質の物は経験値なんかが逆に減る。
出来るだけ品質のいいものを作るために、ゴールドのインゴットは最高品質の物を使いたい。
多少、ロスが出てもいいからがんばっていこう。
というわけで、まずは、最高品質のゴールドのインゴットを作るために、金貨の選別から始めた。
『アイテム鑑定(M)』のスキルで一枚一枚金貨を見て、金の含有率の高い金貨……品質の高い金貨をより分ける。
微妙な差なんだろうが、少しでも上を目指すためだ。
「金貨をつぶすのはもったいないですよ!」
「金のインゴットを買うにしても、品質を選んで買うとかするほど品揃えは多くないしな。金貨なら沢山あるからな」
「確かにそうですか……」
もったいなさそうに、金貨を見つめるマユさんだが……、この世界の金貨は、価値的には、額面とほとんど差が無いからな。
良い金貨を選べば、インゴットを買うのとそこまで値段に差は出ないんだよな。
金貨を選び終わった所で、マユさんとアンにも手伝ってもらい、金貨の洗浄。汚れを落として、少しでも不純物が少なくなるようにする。
次に、金貨を溶かしてインゴットにしていく。品質が悪かった物は、目減りしてもいいからもう一度溶かしてインゴットに作り直す。
そうこうして、7つほど最高品質のゴールドのインゴットが出来上がった。
「私もやってみたいであります!」
「さすがに、金はそれなりに値段がするから、最初は銅なんかで練習してからだな。それも、【鍛冶師】になってからだけどな」
「がんばって早く【鍛冶師】に、なるであります!」
「ま、金は比較的扱いやすい素材ではあるから、練習していけば、そう遠くない未来に扱えるようになるさ」
「ほんとうでありますか! 凄くがんばるであります!」
さて、ゴールドのインゴットが出来上がった所で、此処からが本番だ。
ここからの作業は、一発勝負。やり直しは効かない。
素材に関しては、欠片が5つあるから、5回のチャンスはあるが……。
できれば最高品質の物を作りたい。
物は、腕輪だ。ゴールドに混ぜる欠片と、特殊な模様が製造の肝だ!
スーハー、スーハー、スーハー。
深呼吸して、よしやるぞ!
と、忘れる所だった。
まずは、現状出来る範囲の補助魔法などで成功率をあげる。
特殊な素材が必要な物はさすがに使えなかったが……。
よし、準備完了。
スーハー、スーハー、スーハー。
改めて、やるぞ!
まずは、最高品質のゴールドのインゴットを溶かして、ゴールドスライムのコアの欠片を1つ添加する。
よく混ぜて全体がうっすらと光を帯びた所で、取り出して、腕輪の形に整形していく。
ここまでは、問題無い。
細工しやすい温度になるまで少し冷ます。
さて、問題は此処からだ。
細工系の生産スキルのおかげで、模様は金の腕輪に重なって浮かんでいる。
この模様通りに加工できるかどうかだが……。
もう一度、深呼吸。
スーハー、スーハー、スーハー。
よし! やるぞ。
そこからしばらく丁寧に模様を細工していく。
「よし、出来た!」
「すごいであります!」
「やっぱり、クロさんは凄いです」
アンとマユさんの尊敬の眼差しに少し頬が熱くなる。
「じゃあ、鑑定してみるか……」
『アイテム鑑定(M)』っと。
名前:成長の腕輪
分類:アクセサリ(腕輪)
品質:普通
防御力:0
詳細:成長が少し早まる腕輪。
特殊効果:取得経験値・微小UP
う~ん、これでも普通か……。
中々に厳しいな。
「すごくよい出来だと思ったのですが……」
「がんばるであります。師匠!」
うん、気を取り直してもう一度。
…………。
……。
品質:良い
特殊効果:取得経験値・小UP
まだまだ~~!
…………。
……。
品質:ちょっと良い
特殊効果:取得熟練度・微小UP
勝負はこれからだ!
…………。
……。
品質:凄く良い
特殊効果:取得熟練度・小UP
く、惜しい。
これでラストか……。
「がんばるであります!」
「がんばってください!」
二人の応援を受けいざ勝負!
…………。
……。
品質:最高
特殊効果:取得経験値・小UP&取得熟練度・小UP
「おおお~~最高品質!」
「やったであります! 師匠!」
「おめでとうございます」
ふぅ、何とか最高品質が出来てよかった。
ああ~疲れた。
その後、成長の腕輪の品質:最高をアンに……。
「これをいただけるのでありますか! 凄い感激であります!」
「早く、【鍛冶師】に成って沢山作ってもらわないとダメだからな」
品質:凄く良いをマユさんに……。
「生産関係の熟練度上げは大事だからな」
「ありがとうございます。クロさん!」
品質:良いをセリカに……。
「少しでも経験値上がった方が成長はやいからな」
「師匠! ありがとうございます」
品質:ちょっと良いをリーフさんに……。
「ティナの訓練に使えるだろう」
「確かにそうですね。ティナ明日からは弓の特訓です!」
「えええ~~そんな~~~~」
品質:普通をミルファさんに……。
「少しでも早く強くなって。レナさんを守れるようになれ」
「ありがとうございます」
ちびっ子達には、何も無かったが、さっき渡したドラゴンの鱗を何にするか相談中で気にしてなかったようだ。
「私だけ……何も無い……」
レナさんが凄く悲しそうにするので、残ったゴールドのインゴットを使って何かを作ると言ったら……。
「指輪がいいです! 薬指にあう大きさで!」
うん、指輪とか薬指とか気になったが、断れる雰囲気でもなくて作ることにした。
名前:魔石の指輪
分類:アクセサリ(指輪)
品質:最高
防御力:10
詳細:ゴールドの指輪に魔石をつけた指輪。
こんな感じの物を、持ち込み品の魔石を使って作った。
ついでに、リバースドールの様な死亡時、一度だけ身代わりになる効果を付与しておいた。
まあ、保険だ。
「ありがとうございます! クロ様!」
レナさんは、俺がつけたあげた指輪を大事そうに見つめている。
左手の薬指とか、特に深い意味は無いよな?
無いよな?
元いた世界とは違うし……。
「そういえば、私、忘れられてない?」
次回は、アンさんの昇格への追い込みです!
成長の腕輪が、大活躍か?




