第1話 やってみたい
更新です。
今回は、狐っ娘姉妹の話になるのか?
「あ~、あ~~、あ~、あ~」
声が震える感じが面白い。
「ワ・レ・ワ・レ・ハ・ウ・チ・ュ・ウ・ジ・ン・ダ」
扇風機の前に来ると何となくやりたくなるよな、これ。
今俺は、長イスに座って風に吹かれながら、朝風呂で火照った体をさましている。
「なに、バカやってるのよ風邪引くわよ」
いつの間にか脱衣場に入って来たシーナがあきれた声をあげながら、脱衣籠の所まで歩いていく。
ブル ブル
う、確かに少し冷えすぎたな。
せっかく風呂に入ったのに風邪引いたら意味がないよな。
アイテムボックスから着替えを取り出してササっと着てしまう。
当然、鎧なんかを装備するのではなく、見た目はラフなズボンにTシャツだ。
性能は、そこらの皮鎧どころか鉄の鎧より防御力が高い持ち込み品だったりするのだが……。
浴室に続く扉の、開く音に振り向けば、シーナが裸で入っていくところだ。
相変わらずペッタン――。
何か危険を感じて上体をそらすと、目の前を通り過ぎる……黒い影……。
トスっと言う音に後ろを振り返ると壁に刺さったナイフが一本。
「おい、シーナ!」
「何となく、投げないといけない気がしたのよ。それに、そんなナイフじゃあんたに傷ひとつ付けられないでしょ」
なんていいながら、浴室に消えていく。
あいつ、隷属の呪縛が弱まってないか?
いや、本気で危害にならないと思ってるのか?
ツッコミで叩く程度に……。ツッコミでナイフ投げる……。
せめて木のナイフにしてくれ。
あ……あと、順調にアイテムボックス使いこなしてるな。
さて、着替えたは、良いのだけど、なんか動く気がしないな~。
部屋に戻って休むとしたら、たぶんベッドで横になるだろうしな。
そのまま二度寝モードだよな。
やっぱり、グターとお風呂入った後ゆっくり出来る場所がほしいな。
となると、何か休める部屋が欲しくなるけど……。
今のままの2階だと窮屈な感じがするよな、やっぱり3階を増設して、大浴場とかを持っていった方がいいよな。
階層追加は少しGP掛かるけど、部屋の追加や床や壁の設定なんかは凄く安く済むし、前も考えたけど、やっぱり宴会場みたいな畳敷きの大広間、良いよな~。
そのほかにも、マッサージチェアーや普通のソファーのあるラウンジみたいなところも欲しいな。
いっそ、ガラス張りの展望室なんてのも……。
ガラス張りでも、ギルド拠点だと壁の一種になってるから比較的安く出来そうだよな。
というか、一番高いのが、マッサージチェアーやソファーの気はするけど……。
あ、あと、フルーツ牛乳の自販機が欲しい!
コーヒー牛乳もいいけど、やっぱり俺はフルーツ牛乳派なんだよな。
うん、大体こんな感じでいい気がする。
後で皆と相談して、くつろぎ空間の作成に掛かろう。
じゃ、まずは腹ごしらえだな。
少し早いけど、ダイニングで朝食に食べに行こう。
ダイニングに着くと……。
「…………(じーーー)」
「…………(じーーー)」
台所を覗き込む二人のちびっ子。
「お腹減ったのか? マユさんに言って何かつまませてもらうか?」
ただ今絶賛料理中のマユさんだが、台所の調理台の上には完成したおかずがいくつかのっている。
そんなにお腹が減ったのなら頼めば分けてもらえると思うのだが……。
「…………(フルフル)」
「…………(フルフル)」
台所の中を見つめたまま首だけ横に振る狐っ娘姉妹。
お腹が減った訳じゃないのか……。
じゃあ、何だ?
俺も一緒に台所の中を見てみる。
特に変わった様子も無いのだが……。
何をさっきからじっと見続けてるのだろうと二人の視線の先を追うと……マユさん?
何だろう?
マユさんが気になるんだろうか?
もう少しジックリ観察してみる。
あ、違う、マユさんじゃなくてマユさんの……手先の方を注目している?
あ!
「もしかして、料理がしてみたいとかか?」
「…………(コクコク)」
「…………(コクコク)」
正解みたいだな。
うん、それなら……。
「俺が教えようか?」
狐っ娘姉妹が二人が同時に凄い反応速度で振り向く。
「…………(コクコクコクコクコクコク……)」
「…………(コクコクコクコクコクコク……)」
凄い勢いで首を縦に振る。
「わかった、わかった。朝食を食べたらな」
「…………(わ~い!)」
「…………(やった~)」
何かクルクル踊って喜んでいる。
ま、やらせてみるのもいいよな。
食事を作れるメンバーが増えるにこした事はないからな~。
そんな事をしていると、マユさんが朝食を完成させる。
「「「「「いただきます」」」」」
「…………(いただきます)」
「…………(いただきます)」
今日は、珍しくリーフさん以外全員がそろっている。
いつもの朝食は本当にばらばらなのだ。
ちなみにリーフさんは、エルフの森のフォレストドラゴン……フォレンストの所に用事があるとか。厄介事じゃなければいいんだが……。
「師匠! やっと3つ目が完成したであります!」
アン、食事中に木のナイフなんて取り出すなよ。と思いながら、受け取って確認する。
名前:不恰好な木のナイフ
分類:武器(短剣)
品質:普通
攻撃力:1
命中率:-5%
詳細:少し不恰好な木製のナイフ。
バランスが悪く、少し攻撃を当てづらい。
うん、一応、武器になってるな。
これで3つ目と言う事はあと、2本か。
最初の物騒な代物を作ってから数日、着実に進んでいるな。
このペースだと5本完成も、もうそろそろか……。
あと、ティナは……呪われた武器が出来た次の日ぐらいに、飽きたとか言って予想通りに投げ出していた。
まあ、三日坊主はクリアしたから続いた方なのか?
まあ、ティナの事はいいか、いつもの事だし。
あとは……アンの他の条件の達成も考えていかないとな。
現状は……。
・戦士系の職業(達成)
・武器を5個完成(目処がついた)
・一定レベル(たぶんOK)
・槌系(ハンマー系)の武器の熟練度を一定以上にする事。(未完)
・採掘で一定の成果をあげる事。(未完)
うん、熟練度と採掘か。
採掘は一度掘りに行けばいいよな。掘り出すものは何でもいいから、ティナの秘密基地(跡地)で問題ないだろう。
問題は熟練度か……。
軽く上げる程度だから、ザコをハンマーで殴って乱獲が一番良さそうだけど、都合がいい場所ってあるかな? これは冒険者ギルドで聞いてみよう。
「あと、2本だな。残りは、ハンマーの熟練度と採掘だけだから、そろそろ掘りに行くか?」
「了解であります師匠! 今からでありますか?」
それに答えようとした時……ふと狐っ娘姉妹が目に留まる。
「…………(わたしたちと!)」
「…………(やくそく!)」
ああ、そうだな。
それに……。
「アンは、今日午前中は仕事だろう! 武器作りの方も、もう少し掛かるんだから時間調節して1日空いた日にするぞ」
「了解であります! マユさん休みが欲しいであります!」
アンが早速マユさんに休暇の交渉を始めている。
「それなら、一緒に採掘に行きましょう! 丁度、マジックアイテムの素材が欲しかった所なのです。私も採掘します!」
「って、店はどうするんだ?」
「ミルファさん、レナさん。よろしくお願いします」
「わかりました」
「任せてください!」
うん、レナさんだけだと少し心配だがミルファさんも居れば大丈夫だろう。
というか、店よりも素材採取って……ああ、マジックアイテムのお店と思われてないってのを気にしてるのか。
「…………(りょうり!)」
「…………(つくる!)」
「ワン!」
「ニャ!」
「おお~」
「シーナ、この後闘技場で勝負しましょう!」
「パス、パス。この後は街で色々見て回る予定よ。あんたもギルドで依頼でも探したら?」
朝食が終わった後、さっそくちびっ子達がやって来た。
狐っ娘姉妹の他に、ちびっ子三人追加されている。
「…………(りょうり~~)」
「…………(りょうり~~)」
「お肉だワン!」
「お魚ニャ~」
「試食なんだよ~」
うん、後の三人は食べに来たのか……。
だけど、最初から肉とか魚とかの料理するとは言ってないぞ、タマ&ポチ!
というか、何を作らせたらいいだろう?
う~ん、肉類……これはダメだな、うちは、セリカやティナなんかが倒してくるモンスター肉が溜まってるからな。
あれ、種類によっては、複雑な処理が必要だったりするからな。それしないと毒があるとか……。
そういう意味では、野菜関係もあれか……薬草なんかと一緒にとってきたりするから混ざってるんだよな結構。
肉にしても、野菜にしても、食材とかの鑑定スキルがないときついんだよな。
自分達だけでもやれるようにしたいからな。転職にも【鍛冶師】みたいな一定数作成の条件があるしな。だから最低限作れないとダメだしな。
それ以前に、二人は転職は嫌がりそうだけど……。
魚は……そもそも、取りに行く奴が居ないから、うちでは殆ど無いんだよな。港町でもないから、冒険者の街で売られてる量も少ないしな。
う~ん、固いパンを火であぶって焼きましたとかじゃ、料理と納得はしないだろうしな……。
どうしたらいいかな?
「…………(りょうり! りょうり!)」
「…………(りょうり! りょうり!)」
あ、うん引っ張らなくてもわかってるから。
そのまま台所に引っ張られていきながらふと……この台所で練習してもいいのか疑問に思う。
WMOだと料理失敗で毒料理なんてのは結構あったし、生卵を電子レンジでチンしたみたいな感じに、料理が爆発なんて事もあったんだよな。
あ……生卵……卵か……初心者料理としては、それもいいかもな。
冒険者の街でも簡単に手に入るし、セリカ達が取ってくる事もないから変なのも混ざらないし。
卵を割らないように戦うなんて繊細な事しないからなあいつら。
それはともかく、今回の一回だけなら、ここの台所でやってもいいんだが……う~ん、どうするか。
「天狐、地狐、二人とも料理を作りたいって言うのは一度作ってみたいって事か? それともこれからも練習して色々作れるようになりたいのか?」
料理要員に成ってくれるとうれしいんだけどな……強制はする気はないしな……。
一度やってみたいだけってなら、それはそれで……。
「…………(いろいろ~いっぱい~)」
「…………(たくさん~つくりたい~~)」
そうか、料理要員になる気はあるのか……。
となると、別に狐っ娘姉妹専用の練習用キッチンを作ったほうがいいかもしれないな。
ま、ティナみたいに直ぐ飽きたとかになったら、2階に簡単な給湯室として解放すればいいしな。
「よしわかった、それじゃあまずは二人の練習用のキッチンを設置するか。場所は……確か今使ってる部屋って二人で1部屋だけだよな。もう1つの部屋は丸々あいてたよな?」
「あ! 掘り出し物を買いに行かなくちゃダメだったんだ~~。クロちゃん皆~出かけてくるよ~~~」
突然ティナが声を上げて外に飛び出していく。
おい、ティナ掘り出し物探しに行くならともかく、買いに行くってなんだ?
まあ、いいか……ティナだし。
「ティナの事はまあいいか、二人とも、GPはどのくらいある?」
「…………(ぜんぜんつかってない~)」
「…………(どれだけあるんだろう?)」
まずは、ギルドコアに行って確認すると、ちびっ子四人のGPは全然減ってなかった。
ティナと一緒になにか色々出してたと思ったんだけど……あれ全部ティナが出してたのか……。
ちびっ子四人のGPをせびってないのは感心かな。
まあ、これならキッチンを設置するGPは十分だな。
まずは、一番簡単なものを選んでっと……天狐、地狐の二人で半分ずつGPを使うって事でOKもらって設置しようとしたのだが……。
荷物があって設置できないとエラーが表示された。
「うん? 荷物? 二人とも使ってないんだよな?」
「…………(つかってない~)」
「…………(つかってない~)」
「…………(でも~ティナちゃんが~)」
「…………(つかわせて~っていってた)」
「…………」
うん、何となく解った。
まずは、荷物整理からだな。
「タマとポチは、荷物整理手伝ってくれるか?」
「やるニャ~。(焼き魚~)」
「やるんだワン。(焼肉~~)」
うん、目に魚や肉のマークが出てる気がするのは気のせいか?
う~ん、こりゃ、ちゃんと肉と魚を食べさせてやら無いとかわいそうだな。あと、卵も用意しないとだよな。
ちょっと、シーナにチャットで頼む。
『クロ:シーナちょっと街で、卵2ダースほどと、おいしそうな魚を買ってきてくれないか?』
『シーナ:いいけど何に使うのよ?』
『クロ:昼飯に魚で、ちびっ子の料理の練習用に卵を使う予定だから昼食前までに頼む』
『シーナ:まあ、いいわ。たまには魚を食べるのもいいわよね』
うん、材料の方の手配は完了。
じゃあ、昼食までにとっとと部屋を片付けるか。
そう思って、狐っ娘姉妹の使ってない方の部屋に来たのだが……。
うん、見事にティナの倉庫になっていた。
あいつめ、整理させられると思って逃げたな。
なんだ?
ワンちゃんのソファーに、猫のソファー、狐のソファーが2つ?
猫のバットにワンちゃんバットに、狐のバットが2つ?
狐のお皿2枚に、猫のお皿に、犬のお皿?
うん、何だこの脈絡の無いラインナップは……。
あ、これは使えるかも。
猫のキッチンセット×1、犬のキッチンセット×1、狐のキッチンセット×2。
おままごとで使うようなお子様用の感じだけど、箱の説明見ると普通に機能はついてるらしい。
WMOの頃は、ままごとセットで火が出たり、包丁で実際に切れてもゲーム内だったから問題なかったんだよな。
うん、当面はこれを使えばいいだろう。勝手に使ってもいいよな逃げたのあいつだし。
じゃあ、丁度いいから狐のキッチンセットを二人に1つずつ使うってことでいいよな。
あ、そうか……これ、ポチ、タマ、天狐、地狐の四人分か!
そう考えるとこの部屋全部、猫、犬、狐、狐のセットの物ばかりだ!
何となく、集めた理由はわかる気はするけど……ちゃんと自分の部屋にしまえ。
もしくは、倉庫を自分のGPで買え!
と言う事で、料理道具以外の物をひたすら俺のアイテムボックスに突っ込んでいく。
そして、ティナの部屋に運び入れる。
軽い物なんかはちびっ子達がティナの部屋まで運んでいる。
そんな感じで、そろそろお昼って時間帯にやっと整理が終わる。
結構時間が掛かったな。
「…………(やっと……)」
「…………(おわった~)」
狐っ娘姉妹は疲れた~って感じでのびている。
「ワンワン(お肉~~~)」
「ニャンニャン(お魚~~~)」
うん、タマとポチはこれ以上は無理そうだな。
そろそろ、昼飯作ったほうが良いだろうな。
色々手伝わせたしな。
少しがんばってみるか!
そうして、狐っ娘姉妹に料理の説明などを交えつつ、シーナが買ってきた魚と、冷蔵庫にあった肉を使って料理をする事になった。
そういえば、何時から冷蔵庫が設置されていたっけ?
前まで食糧庫の真ん中に氷を作って冷やしていたような覚えがあるんだが……。
完成した料理は、妙に豪勢なモノになっていた。
「お肉~だワン! 美味しいんだワン!」
「このお魚、美味しいニャ~~」
「…………(おいしいね~)」
「…………(つくりたいね~)」
次の話は、料理教室開催です!
※お風呂快適化計画・改
前に検討していて中々実現していなかった物が、計画内容だけはパワーUP!
いつになったら実現できるのか?
何気に、ダラける為の計画に、ダラける時間を使う事が出来ないだけだったり……。
でも、そろそろいい加減に計画を進め始めるかも?




