第6話 とある冒険者の一日
更新です。
今回でSSシリーズは一旦終わりです。
う~ん、やけに苦労したな。
やっぱり、ティナでバカやってる方が楽なんだよな……。
今回の主人公は、冒険者Aとかかかれる感じのモブキャラです。
とある王都の様子を彼の視点で書いています。
「それでは、カードの内容をご確認ください」
セントリナ王国の、王都の、冒険者ギルド本部!
その受付で今、受付のお姉さんからギルドカードを渡される。
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名前:モブス
職業:戦士Lv7
冒険者ランク:E
セントリナ王国冒険者ギルド本部発行
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うん、冒険者ランクがFからEに上がってる!
最低ランクから卒業だ!
Gランク? あれは見習いで、まだ冒険者じゃない!
「あと、此方が規定の報酬となります」
受付のお姉さんが、お金の乗ったトレーを差し出してくる。
硬貨の枚数をちゃんと確認する。
うん、確かにある。
「はい、確かに受け取りました」
「それでは、これからのご活躍お祈りします」
「はい、がんばります。ありがとうございました」
う~ん、収入が入ったし、ランクアップのお祝いに少し贅沢するのもいいよな。
だけど、その前にお金があるうちに備品の方を買い足しておこう。
この頃、色々値上がりが激しいからな、買える時に多めに買っておいたほうがいいだろう。
装備の方は、まだまだ店で直してもらうほど痛んでないしな。
良い装備に代えるには、お金が全然足りないからな。
「おじさん、こんにちは~」
裏道のとある場所で開いている、道具屋のおじさんだ。
地面に直接布をひいて商品をならべただけの簡単な露店だが、値段が凄く良心的で助かっているのだ。
「おう、坊主。久しぶりだな」
そういえば、そうだな。
この頃は、外への狩は殆どせずに、砦の防衛に行ってたからな。
殆ど消費はなかったんだよな。
だけど、あれ?
店の商品がほどんど無い?
売り切れたのかな? この頃物不足だしな。
「商品が殆ど売り切れてる気がするんですが?」
「ああ、店を閉めようと思ってな。閉める前に坊主に会えたのは運がよかったよ」
「閉めちゃうんですか?」
見習いの頃から、お世話になってる店だったんだけど……ざんねんだな。
「限界までがんばってみたんだが、王都ではもう、普通に商売するのは無理っぽくてな」
確かにそうかもしれないな。
凄く貴重な回復薬のクエストが10億Gなんて報酬で出て一気に回復薬関連が不足した頃から、色々おかしくなり始めたんだよな。
その後、迷いの森に魔族が現れて、迷いの森を拡大したりして……。
で、「魔族の脅威は去った」とか王の名で宣言がでた後、「王の宣言があったのになのに魔族の脅威に備えてアイテムを高値で売るとは何事だ! 妙な噂を流そうとするとは反逆の意思があるんだな!」とか無茶苦茶な理屈で財産没収の上投獄されたり処刑されたりしてますます酷くなったんだよな。
どんどん、商人とかが王都から逃げ出して……。
王家のお抱えの商人とかは普通にボッタクリで販売してたのにな、笑っちゃうよな~。
それに、あの砦の防衛だって魔族に備えてだってのは公然の秘密だしな。
「残念です。せっかくランクが上がってこれからもお願いしたかったのですが……」
「おう、あがったのか! それじゃあ、何かお祝いでもしたいところだな。う~ん」
道具屋のおじさんが、肩に下げたままのカバンの中をあさって、一本のビンを取り出す。
「特別だ、これを格安で譲ってやろう」
「お祝いでくれるんじゃないですか?」
おじさんが苦笑を浮かべながら答える。
「流石にこれは、タダでやるのはきつくてな。利益無しの仕入れ値でいいぞ」
仕入れ値か相当お得そうだけど……。
「そもそも、それって何なんですか? ポーションですか?」
「いや、これはハイポーションだ。鑑定書もついてるぞ」
うわ、鑑定書なんて初めてみた。
確かにハイポーションだ!
「でも、ハイポーションに鑑定書ですか?」
「それはな、今王都だと偽物が大量に出てて鑑定書が無いと売るに売れないんだよ。それこそ使う時はピンチの時の保険だからな。偽物だったりしたら命に関わるだろ」
確かに、ハイポーションと思って使ったらポーションでしたなんて言ったら命は、ないな。
「確かにそうですね」
「というか、その辺もこれからはもう少し用心しろよ。これから冒険者続けていくなら」
確かに、必要な事なのかもしれません。
「で、これが――」
おじさんが、僕の耳に値段をささやきます。
確かにハイポーションとしては破格だ!
だけど、買ってしまったら……しばらく生活がカツカツになる……どうしよう。
「ま、お金に余裕が足りないならともかく、あるなら買っておけ。この王都、ますますきな臭くなってるからな」
おじさんが少し真剣な目をしている。
「わかった、これまでお世話になったし、おじさんを信じるよ」
「おう、まいど~。これから北西の方の国に行こうと思ってるからよ、そっちに来る機会があったらまた、店を利用してくれや」
「そっちの方に行ったとしても見つからないんじゃないの?」
「ふ、その頃はきっと、どでかい店を持ってるさ」
「じゃあ、その時は、安くしてね」
「ちゃっかりしてやがる。わかった、その時は安くしてやるよ。死ぬんじゃねぇぞ!」
「うん、またね~おじさん」
その後、お金に余裕もなくなったので、砦に戻る事にした。
冒険者ギルドのクエストで砦の警備の一ヶ月の定期契約をしているのだ。
残りは2週間、道具屋のおじさんの話を聞くと、今度は更新せずに国を出た方がいいかもしれないな~。
そう思いつつ、王都側の門を護ってる王国軍の兵士の人にあいさつする。
「こんにちは~」
「おう、ギルド証の確認良いか?」
「はい、これです」
僕が、新しいランクになったギルド証を見せると、「通っていいぞ」と直ぐに通された。
分かっていたけど、ランクが上がった事に何もないのはかなしいよな。
さてと、僕は砦を見回す。
この砦は、迷いの森と王都の間に魔族騒動の後、急遽作られた物だ。
まあ、魔族の備えってのは誰でも分かるよな。
表向きは迷いの森が拡大して王都に近づきすぎたから用心の為とかいってるけど……。
急遽作られただけあって、砦というにも凄くみすぼらしい……まあ、田舎の村って感じだよな。
周りに堀が掘られて木の柵が作られている程度だからな。
砦らしいのは、木組みの見張り台が、四隅にあるのだけかな?
僕たちはこの砦で、3交代制で働いている。
任務時間8時間、これはそのままお仕事時間だ。
待機時間8時間、これは砦の中なら自由にして良いと言う時間だ。何かあった時には直ぐに呼び出される状態だね。まあ、殆ど睡眠時間にしてるけど。
最後に、休憩時間8時間、これは本当の自由時間だ。王都まで出かけて買い物したり出来る。今の僕は丁度休憩時間だったから王都行けたのだ。
これが6日間続いて、丸1日休み、その後シフトを変えて……って感じになっている。
夜、待機時間で寝るのが一番楽だから、シフトの交代があるんだろうな。
「おう、モブ帰ったか~」
「あ、隊長! ただいま戻りました」
「いいって、いいって。休憩時間まで堅苦しくやる必要はないさ」
この人はうちの隊の隊長だ。
ギルドランクCって聞いた覚えがある。
だけど、気さくな良い隊長だ。
「飯は食ってきたのか?」
「いえ、王都で散財しちゃって……金欠なんでこっちで食べます」
「そうか、じゃあ一緒に行くか」
「はい!」
食堂にいくと、結構な人数が集まっている。
この仕事中は何食食べても無料なので結構利用してる人もおおい。
味は……食べれないほどではないって感じだけど……。
「龍の牙のやつらが居なくなってから、うまい仕事になったよな~」
「ああ、モンスターが攻めて来ても。王都まで逃げ延びて報告するだけで報酬がでるんだからな~」
「このまずい飯さえがまんすりゃ良い仕事だよな~」
トレイの上にいつもの通りの、固いパン、少し干からびたサラダ、ほんの少し硬い肉の欠片の入ったスープを載せて席に着く。
さっきから隣の席の大声が少し煩いかもしれない。
まあ、空いてる席が他になかったからしょうがないんだけど……。
持ち込んだお酒を飲んでるみたいだし、絡まれないように注意しよう。
「龍の牙か~」
隊長が隣の話に出ていたチームの名前を口にする。
冒険者のパーティではなく、もっと大人数のチーム。
結構有名な冒険者のチームで、もっぱら傭兵として働いてるらしい。
その名前は、ドラゴンを退治したかららしい。
手に入れたドラゴン牙から作った剣はリーダーの証なんだとか。
僕には、雲の上の話だな~。
だけど、龍の牙が契約内容でもめて、更新しなかった辺りから条件が良くなったのは確かなんだよな。
それまで、此処で食べれるのも1日一食までだったし。
龍の牙が居なくなったのに続いて、この仕事を請ける人が一気に減ったのが理由らしいけど……。
ま、そんなことより、龍の牙のドラゴン退治の方が気になるな!
いつか僕もそんな冒険者になりたいな~。
そのまま、食堂でノンビリしてると、鐘の音が聞こえる。
後10分で交代時間の合図だ。
「さて、休憩時間もそろそろ終わりか」
「はい、今日も仕事をがんばりましょう!」
そして、今日も、砦の周りの堀を掘って深くしたり、木の棒と紐を使って柵をせっせと作ったり。
次の契約更新まで一生懸命働いていく。
でも、これで冒険者ランクがあがっても、強くなれるのかな?
次の章は……やっと、本編にもどります!
大まかな内容は、決めてるので結構早くかけると思います。
(ただし……予定は……未定です!)
※セントリナ王国
忘れている人が大多数の気がしますが……。
クロ達が王族とトラブル起して逃げ出した国です。
一応、レナはこの国の第三王女だったりもします(現在公式には死んだ事になってたり……)。




