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第6話 封印指定

ついに天使さんの修行が始まります!

 昨日の話の後、アンさんが直ぐにでも修行を始めたそうな顔をしていたが、マユさん達にM&Mで生活していく上での色々な説明をしてもらえるように頼んだ。

 アンさんの部屋の場所を決めたり、大浴場などの設備の場所や使い方の説明などだ。

 あとは、生活ルールなんかもか……。

 当然のように「後、任せるわ」とか言ってシーナは逃げ出していたな。


 で、それが終わると夕食時で、リーフさんやセリカが帰ってきて夕食しながら歓迎会っぽい事……自己紹介をお互いするぐらいだったが……をした。

 その時、少し奴隷契約の内容について話したが……。

 

「解放よりも、師匠に教えて欲しいであります」


 との事だったので、契約内容は、『修行の終了もしくは、双方の合意によって終了』とする事にしておいた。




 そして、今日の朝食後、アンさんはマユさんと一緒にお店の仕事をしている。

 シフトとかそういったものは考えていない……マユさんがお店で仕事をしたい人だし……が、一応店番をアンさん一人で出来るまでは、毎日午前中は一緒に仕事をする事になったようだ。

 まあ、マユさんに用事がある時は、他のメンバーで手が空いてる人が適当に店番って感じだったからな。

 これからは、アンさんが正式に店番を出来るように仕込む気なんだろう。



 というわけで、猶予はあと午前中だけだ。

 その間に、アンさんの修行方針というか内容というかを考えないといけない。


 まず、大前提として、俺は技術を教えるような事は出来ない。

 生産技術のほとんど全てが、職業スキル頼みだからな……。

 だからやる事は、いかに効率よくアンさんを生産職に……それも上位の生産職に……するかだ。

 必要な事は、効率よくレベルや熟練度を上げさせ、効率よく転職条件や昇格条件を満たさせる事だ。


 で、最初の難関が……。

 ここでもネックになる転職が出来なくなっている事だ。

 本当に上位の方の生産職にはコレが必須なのだが、今はひとまずおいておこう。

 

 まずは、アンさんの今の職業から【ビギナー】に、職を変えることだ。

 【奴隷調教師】のスキルで出来そうではあるが、まだ試していない。

 昨日は、もう夜だったし、レベリングとかも考えると急いで試すのもあれだと思ったのだ。

 まず今日は、これを試してみないとな。

 もし出来なかった場合は……転職方法について本格的に探していくしかないだろうな……。


 そんな感じで昼前まで頭を悩ませた。




 昼食を食べ終わって……。


「修行であります! さっそく始めるであります!」


 アンさんが凄く楽しそうにM&M横の空き地で準備をしていた。

 他にも俺が協力を要請した、セリカとシーナが一緒に居る。

 あと、ティナにも協力を要請して、今は馬車を砦に取りに行かせている。

 この三人は、レベリングの戦闘要員だな。

 ティナは、面白そうの一言でOKしてたし、シーナは経験値とか稼ぎたいからと言っていた。

 

 で……セリカは……。

 

「師匠は、私の師匠です!」


 何か、アンさんに対抗心むき出しでついて来ている。

 そういえば、こいつも一応弟子入りしてきたんだったな……。

 殆ど何もして無い気がするが……。


「みんな~馬さんつれてきたよ~」


 ティナがそんな事を言いながら馬車に乗って……乗って…………。


「おい、その馬はどこから連れてきた!?」


 馬車の御者台に乗ってティナが操っている馬……その馬がおかしかった。

 並の軍馬すらも圧倒するような迫力で……どこぞの世紀末をかける黒馬といった雰囲気をだしている。


「大きくなったんだよ~成長期なんだね~すごいね~」


 ティナ……成長期ってレベルを超えているぞ!

 同じ馬とは思えないぞ!

 気になって鑑定……『アイテム鑑定(M)』で何故か通った……してみたら。



 名前:大地駆ける軍馬


 分類:軍馬


 品質:上級軍馬


 詳細:地の属性の力を得た軍馬で、多少の悪路はものともしない。

    モンスターと対峙しても、弱いものならば蹴散らして駆け抜けていく。



 うん、何があった?

 全然違う種になっていないか?

 確か、普通の馬だったよな……。


「まあ、弱くなっている訳じゃないんだから気にしたらだめよ」


 何か諦めた様子で声をかけてくるシーナ。

 そうだな……気にしてたら進まないな。

 暴走とかしてるわけでもないし、ちゃんと御せてる訳だからいいか。

 ただ、世話を任せていたちびっ子達には、帰ってきてから色々話を聞かなきゃな。

 

「さすが、師匠の馬なのであります! 立派なのであります!」


 アンさんの中の株が、何故か上がったような……。

 俺がやったんじゃないぞ。



 そんな感じで、始める前から微妙にトラブルはあったが、修行を開始する。

 

「アンさん、それじゃあ始めるか」


「アンでいいであります。”さん”は、いらないであります」


「そうか、じゃあ、アンはじめるぞ!」


「了解であります」


 まず最初に、【奴隷調教師】のスキルと【ビギナー】について説明した。

 天使固有職の【大天使】に戻る事ができなくなるかもしれないと言う注意点も込みでだ。


「かまわないであります。一度試してほしいであります」


 と言う事なので、”隷属したキャラクターの職業変更”の機能を使ってみる事にした。

 契約奴隷なので本当に効果が効くか心配だったのだが……。



『アンジェリカ:大天使Lv83(職業変更中 0/100)』



 うん、問題も無く、発動したみたいだ。


 俺は、持ってきていた大き目のバスタオルをアンに渡して、馬車に乗るように促した。

 いい加減、職業を変えるときに裸になるのには慣れてきていたのだ。


 そして、馬車を走らせサーチ&デストロイで、アンが直ぐに【ビギナー】に、殆ど間をおかずに【ビギナー】をマスターした。


「体が凄く重くなった気がするのであります。ですが、スキルは、色々便利なのであります!」


 アンがアイテムボックスなどの機能を試して喜んでいる。

 彼女に聞くと、【ビギナー】と言う職業は、転職があった頃にも聞いたことが無かったそうだ。



 さて、最初の難関を無事クリアできたのだが……。

 直ぐに次の問題にぶちあたる。


「さて、アン。生産職といっても、色々な種類があるのだが……どんな職業になりたい?」


 間髪いれずに、「鍛冶がしたいであります!」との返事が返ってくる。


 やっぱり鍛冶か……。

 最初に鍛冶となると、比較的簡単になれて、転職条件(覚えている範囲で)が面倒じゃないモノ……。

 昨日から考えていて2つほど思い浮かんでいた。

 まあ、最終的には両方のマスターは、ほぼ必須に近いからどっちが先かの話になるのではあるが……。



 1つ目は、生産者ギルドのロドニーさんのような【武器商人】。それから昇格して【武器職人】のルートだ。

 【武器商人】が間にあるが、【武器商人】も装備品が全く作れない訳ではない。

 ロドニーさんは実際に生産者としてこの街で働いているしな。

 で、【武器商人】への昇格条件は……。


・商人系の職業から昇格

・一定レベル……20~30やっぱり覚えてない。まあ30にしておけばいいか……を超える事。

・商取引で武器を一定数扱う事。

 WMOでは最安値のNPC売りの武器を買って、NPCに売却を繰り返してたな。こっちでは少し面倒かな?

・武器の目利き……まあ、武器の鑑定を一定回数する事。



 【武器商人】から【武器職人】になるには……。


・一定レベル……これは大抵そうだよな。

・武器の作成を一定回数こなす事。こっちは熟練度上げもあって問題には成らない。


 こっちは、特に問題ない。

 【武器商人】をマスターしておきたいし、武器作りは熟練度や隠しパラメータの為にひたすらやることになるしな。



 2つ目は、【鍛冶師】だ。その名の通り、鍛冶をする職業である。

 こっちは、最初になる生産職としては少し面倒だったりするんだよな……。

 昇格条件は……。


・戦士系の職業から昇格。

・一定レベル……これはもうお馴染みに……。

・槌系(ハンマー系)の武器の熟練度を一定以上にする事。

・採掘で一定の成果をあげる事。

 これは、クズ鉱石でも鉱石類を一定個数掘り出せばいい。

・武器を5個ほどだったかな? なまくらでもいいから武器を完成させる事。

 コレが少し問題に成りそうなんだよな。



 そんな感じで、説明したら……。

 間髪いれずに、


「【鍛冶師】が良いであります!」


 との答えが返ってくる。



 う~ん、【鍛冶師】か……。

 やっぱりネックは武器作成か……。


 WMOの昇格クエストって言うのは、基本的(もちろん例外はある)に、チュートリアル的な側面が強かった。

 つまり、クエストクリアすれば、昇格条件を全て満たせるだけで、条件の効率的な達成方法を知っていればクエストをわざわざ受けなくてもいいのだ。

 まあ、クエスト報酬として、昇格した職業で使う物(最低限の装備やアイテム)を貰えたりたりはするのだが……。

 

 そんな中でも、【鍛冶師】の昇格クエストは初期にやるときは、クエストを使わないと昇格は出来ない珍しい部類のものだったからな。

 簡単に言うと、生産スキル無しでは武器が作れないが、クエスト中限定で、スキル無しでも最低ラインの武器の作成に挑戦出来たんだよな。

 他の武器系統の生産職をマスターしてれば、関係無かったけどな。


 この、武器をスキル無しで作るってのがネックになりそうなんだよな。

 この事を説明して、最終的に【鍛冶師】もマスターするから、順番だけの問題だってのも説明したんだが……。


「【鍛冶師】が、いいであります!」


 アンの気持ちが変わりそうに無かったから、【鍛冶師】を目指す事にした。

 どうしても無理そうなら、【武器商人】をマスターして武器の生産スキルを覚えさせてからやり直す事もできるしな。

 取り戻せない選択でもないからいいか。



 そうして、アンは、まず【ビギナー】から【戦士】に昇格した。

 

 

 


 それから、アンは……。

 午前中はM&Mのお店のお仕事。

 午後からは、自重しないティナとセリカ……他に合宿から帰って来たちびっ子達や、シーナなんかも参加する事もあった……とレベリング。

 夕食後は、木材をナイフで削って、木製のナイフを作るのを目指す。

 そんな生活を送っていった。


 アンは、非常に不器用で、木製のナイフすら全然完成しなかった。

 う~ん。『未来の匠』の成長の遅さはここにも関係するのだろうか?

 やっぱり、【武器商人】マスターの方がはやかったんじゃないかな?




 そして、一週間ほどたった夜。

 

「クロちゃん~~アンちゃんが武器完成したよ~~すごいよ~~」


 なんて、俺の部屋に走りこんで来た。

 この頃ティナは、「なんか面白そう」とか言って、アンと一緒に木を削っていたのだ。

 まあ、リーフさん曰く「すぐにあきるでしょう」との事だったが……。

 2~3本完成させて、アンを地味に凹ませてたりもした。


「やっと出来たか」


 俺は、急かすティナに引かれて、工房の方に向かった。





 そして、工房でアンに完成した武器を見せてもらったのだが……。

 なんか一発目で引き当てていた。

 アンの素質スキルの『恐ろしい才能』の事だ。

 出来た武器を『アイテム鑑定(M)』してみた結果がこれだ。



 名前:眠り姫の棘の剣


 分類:武器(片手剣)

 

 品質:カースドレア


 攻撃力:35


 詳細:呪われた木剣。

    装備すると眠り続ける。

    また呪いで装備を解除するのが不可能。

    ただし、特殊効果のオートカウンター(100%)は、凶悪の一言。



 うん、色々と恐ろしい効果の武器になったな。

 装備したら眠り続けて、外す事も出来ないとか……。

 ただそれよりも、オートカウンター(100%)は、恐ろしい。

 オートカウンターってのは、自動で反撃して敵の攻撃を潰すと同時に、カウンターダメージを与える特殊効果だ。

 ただ、強力なだけあって、普通は5%~高くて20%ぐらい、特殊な条件下で50%がせいぜいだ。

 それが100%、すべての攻撃に反応するとか。

 まあ、魔法とか弓とかの遠距離攻撃にはカウンターが効果ないだろうが……。

 それでも凶悪な事には間違いが無い。


「う~ん、どうしたものか……」


「これ使ってみたい!」


 期待のこもった目で件の武器を見ているティナ。


「ダメだティナ!」

 

 俺は慌てて止める。

 まあ、ティナが眠り続けた方が平和な気はしないでもない。なんて一瞬頭のよぎったが……。


「失敗なのでありますか?」


 アンの方は、俺の様子に気落ちしている。


「まあ、武器の能力が特殊なだけで完成はしたな。あとは、4本だ。がんばれ!」


「はい、であります!」


 初めての武器が出来たと俺に認められた事で、凄くうれしそうに頷いている。



 それにしても、『恐ろしい才能』って……レシピ外の呪いのアイテムを作る効果なのか?

 たまたま、呪われた武器が出来上がったのか?

 これは、注意が必要だな。

 俺は、アンに、「これから出来上がった装備品は、鑑定を行うまで絶対に、装備するな。誰にも装備させるな」と厳命した。



 そして、出来上がった『眠り姫の棘の剣』は、封印指定として、宝物庫に厳重に封印された。

 取り出すには、俺、シーナ、マユさん、リーフさん、レナさん、アン、の全員の合意が無いと取り出せない設定にしておいた。

 破壊する事も考えたのだが、アンの初めて作った記念の装備品だそれもしのびない。

 それに今は、素材なんかの関係できついが、解呪の儀式で呪いを解いたら結構化けそうな気もするからな。





 こうして、アンは、生産者としての長い道のりの第一歩をやっと踏み出したのだった。

 この先どんな職人になるのかは、全く想像がつかない。


 良い職人になってくれる事を願おう。

次は……今回の章と同じ時間の別の場所での話を、短編でやろうかと考えています。

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