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異世界に飛ばされた俺は奴隷調教師になっていた  作者: 七瀬 優
第16章 狐っ娘姉妹のトラウマ解消大作戦?
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第6話 大浴場

ついに完成!

大浴場!

 今、リーフさんを除くうちのメンバー全員が、M&M2階のある部屋の前に集まっていた。

 だがその部屋はまだ、結界のようなモノに覆われて入ることが出来ない。

 それに加え、丁寧に建築中の張り紙のような表示まである。

 見た目はまんま、工事中の建物を覆うシートって感じだな。


「まだかな? まだかな?」

「時間的にもうそろそろのはずだけどな」


 待ちきれない様子のティナにそう返す。

 外はそろそろ夕暮れ時、さっきギルドコアで確認した所、残り時間は5分を切っていたはずだ。


「わくわく、ドキドキだね~」

「…………(コクコク)」

「…………(コクコク)」


 狐っ娘姉妹はいまいちわかってないような気がするけど……。

 今日の試合の後、リーフさんの特訓がはじまったティナの様子をみて仲間意識が生まれたのか。

 今までの様子が嘘のように仲良くなっている。


 ちなみに、ティナが無事生きてこの場にいるのは、リーフさんの特訓が終わったからでも、課題をクリアしたからでも、無かったりする。

 端的に言うと、練習用の矢が尽きたからだ。

 普通だったら何度も使えるのかもしれないが、命中率はともかく威力は弓の得意な【森の守護者】の高レベルだ。

 それを闘技場の頑丈な壁にぶち当てたら簡単にダメになるのだ。

 的にあたるんだったら、消耗しにくくしてあるのだが、全く当たらないからな。

 ついでに、だだっ広い外でやれるなら壁に当たってダメになる事も無いが、なまじ威力の強く命中力皆無の弓は、闘技場以外では危なすぎる。

 そんな訳で、矢玉が尽きた事で本日の特訓は強制終了になったとリーフさんから聞いた。

 

「特訓の後のお風呂は格別なんだよ~」


 うん、明日も同じ方法で特訓をしのげばいいと考えてるんだろうな……能天気に喜んでいる。

 だけど、俺は明日は強制終了が、まず無い事を知っている。

 2~3時間でレベリングを終えたちびっ子達と特訓が終わったティナが遊んでる間。

 俺やシーナは、リーフさんの準備を手伝っていたのだ。

 

 まずは、砦の異次元倉庫に溜まって使い道の無かった木材。

 鉱石類しか使ってなかったので、俺とマユさんだけが異次元倉庫の操作権限を持っていたが、リーフさんにも設定しなおした。

 今、リーフさんが居ないのは、その木材から明日使う分を選んでいるからだったりする。

 次に、俺とシーナで、冒険者ギルドで融通してもらうように頼んだモンスターなどの羽。

 出来た矢の一部を渡す約束で快く譲ってもらえる事になった。

 明日の朝一でM&Mに届く手はずだ。

 他に、加工用のナイフなどの道具や、他の材料などの用意をし終わったら夕方になっていた。


 まあつまり、練習用の矢の補充の準備は完璧に整ってるのだ。

 無くなったら、ティナに作らせるといっていたので……うん、明日から地獄だぞティナ。



「あ、完成したみたいです」


 部屋の入り口を覆っていた結界が細かい光になって消えていく。

 それにしても、マユさん……お風呂の為にM&Mを早めに閉めてよかったんだろうか?

 俺がお風呂を作ろうとした時、ちゃんとありますとか文句を言っていた様な気がするんだが、何だかんだ言って期待しているよな。


「じゃあいくよ~~~ってドアじゃないよ?」


 完成した大浴場の入り口で不思議そうに首をかしげるティナ。

 俺は彼女や他のメンバーに見せるように、茶色い暖簾に白で『ゆ』とかかれた物が掛かった、入り口の引き戸を開ける。


「おおお~~~お? お風呂?」


 またもや疑問符を上げるティナ。


「?」

「???」

「お風呂ですか?」


 他のメンバーも不思議そうな顔をしてこちらを見る。

 引き戸を上げた先には玄関のような下駄箱と一段上がった板張りの床。まあ、玄関でいいや面倒だし。

 この先土足厳禁で、この場で靴を脱いで下駄箱に入れると説明する。

 

 皆で靴を脱いでそれぞれ下駄箱に靴(足に装備する防具)を入れていく。

 狐っ娘姉妹が同じ場所に入れようとして後から入れようとした天狐ちゃんの方がはじかれてた所を見ると、結界みたいなものでロックが掛かるようだ。

 無駄に防犯機能が高いなと感心する。



 そのまま玄関を上がり、真っ直ぐな廊下の突き当りを直角に曲がる。

 これは、公衆トイレなどで入り口から中が見えなくなるようにする為のものと、同じような意味があるんだろう。


 で、曲がった先には、いくつのも棚に竹のような物で編んだ沢山のカゴ、鏡や石鹸などが準備された広い洗面台が3つ、長イスに扇風機、体重計までばっちりある。

 うん、細かい所まで行き届いているな。トイレと思わしき扉も2つほど確認出来るしな抜かりは無いな。


「ここがお風呂??」

「…………(なんかちがう)」

「…………(ちがうちがう)」

「へんニャ」

「だワン」


 見たことも無いいろいろな物に目を輝かせてるよりも、お風呂っぽくないのに疑問を持っているようだ。


「何なのよここ? お風呂を作ったんじゃないの?」


 皆を代表する形でシーナが尋ねてくる。


「ああ、ここは脱衣所だ。まあここで風呂に入る為に服を脱ぐんだ」

「…………無駄に広くない?」


 う……この人数で入るには無駄に広いような気は、しないでもなくもない。


「でだ、奥に進んで――この扉の先が……」


 そういいながら脱衣所の奥の扉を開く。


「肝心の大浴場だ!」


 

 そこは、黒っぽい石で統一された内装。

 大、中、小の3つの浴槽。小は2×3m程、中はその4~5倍、大は中よりだいぶ大きい。

 シャワー(鏡や蛇口にボディーソープ、シャンプー、リンスが完備)が10個ほど。

 一角に、洗面器とイス(ともに木製)がピラミッド状に積み上げられているのも見える。


「ちょ……あの広い枠にお湯をはるってんじゃないでしょうね……」


 シーナが若干諦めの混じった声をかけてくる。


「いや……その通りだぞ」


 う……実際現物見ると……温泉旅館とかホテルとかの大浴場のノリで作っちゃったから……広すぎるような気がしなくもない。


「ひっろ~~~~~い」

「…………(おおおおお~)」

「…………(おおおおお~)」

「ひろいニャン!」

「泳げるワン!」


 ちびっ子達は大喜びだな。


「昔に入った王宮のお風呂より大分大きい気がします」

「そうですね」


 レナさんとミルファさんは特に広さには動じてないようだがシャワーの辺りが少し気になるようでずっと目がそっちに行っている。


「……………………」


 マユさんは固まっている。

 うん、今はそっとして置いてあげよう。


「師匠、せっかくですから早くお湯を入れましょう」


 セリカは殆ど動じてないな。入れればいいやって感じであまり興味がないのかもしれない。


「そうだな、じゃあ入れるか……」


 と思ったんだが……浴槽にはお湯が出てきそうな口は見つけることが出来たんだが、湯量を調節するハンドルやスイッチらしき物が見当たらない。

 浴室全体をみまわしても操作盤なんかはなさそうだ。

 どうやってお湯を入れるんだ?


 脱衣場までもどって何かそれっぽい物はないかを探す。

 う~ん、どうするんだ?


 そんな感じで探している途中、トイレのドアを見ると片方は『WC』扉を開けてちゃんとトイレを確認する。

 だけど、もう一つの方は、『STAFF ROOM』のプレートが……。


「ああ、ここか」


 中に入るとATMの機械の様な感じのタッチパネル式の操作版がある。

 細かい操作は追々として、浴槽にお湯を入れる。

 大は普通の温度、中は熱め、小はぬるめで設定し『OK』っと。


「ああ~~~お湯が出てきた~~~」


 ティナの声が浴室から聞こえてきたからちゃんと出来た様だ。

 浴槽にお湯が溜まるまで、シャワーなんかの使い方を説明してしまおう。




 そして15分後。


 一通り説明し終わった所で、


『お風呂の準備が出来ました』

 

 と言うシステムメッセージが流れる。

 何気に便利だな。



「じゃあ、入るか~」


 ちびっ子達の方に声をかける。

 まず、ちびっ子達にというのが重要だ。


「おお~~」

「…………(コクコク)」

「…………(コクコク)」

「ワン!」

「ニャン!」


 ちびっ子達は、スポポーンって感じで服を脱いで浴室に行こうとする。


「ちゃんと着ていたものはカゴに入れて棚にしまえ!」


 そう注意すると、カゴにぐしゃぐしゃ服を放りこんで、棚に入れる。

 M&Mの店舗ではともかく居住区では、ミルファさん以外は基本皆ラフな格好でいるので防具とかは無い。

 まあ、シーナやリーフさんがナイフを懐に忍ばせていたり、セリカが剣を腰に下げたままだったりするのだが……。

 しかし、ミルファさんだけは、胸当てにも使えるちょっと特殊な形の盾と剣を、常に持ち歩いている。

 最初は、防具とか着けたままだった。特に昇格後は大盾を持ち歩いて色々じゃまになったので、室内用の装備を特別に作って渡したのだ。


「あんた……まあ私は、今更見せる見せないで騒ぐ事でもないんだけどね……」

 

 隣にやってきて服を脱ぐシーナがポツリとこぼす。

 うん、彼女にはちびっ子達を先行させた理由を感づかれているな。

 ポーカーフェイスで知らぬ振りを通す。


「何のことだ?」

「まあ、いいけどね……」


 シーナの着替えをジロジロみたりしないように注意して、服をカゴに入れて棚にしまうと、アイテムボックスから取り出したタオルを腰に巻き、浴室の方に行く。

 中に入ればいくらでも……ゲフンゲフン。




 浴室に入ると、さっきとは違い、湿度が高く暖かい空気だ。これぞ、お風呂だよな。

 そのままシャワーの方に向かおうとした所で、ちびっ子達が浴槽に飛び込もうとしてるのを見つける。


「まて~~おまえら~~~」


「!?!?」

「!!!!」

「ニャ!?」

「ワン!?」

「ぎゃう」


 ちびっ子四人は急ブレーキをかけて難なく止まるが、勢いがつきすぎたティナは足を滑らせてゴチンと地面に頭をぶつける。凄く痛そうな音がした。


「きゅうに言うから、すごく痛いよ!」


 ティナが文句を言ってくる。

 まあ、それはすまんと頭を下げる。


「まずは体を洗ってからだ。結構泥だらけになってるだろうお前ら」


「そっか~~~お湯が汚れちゃうね~」

「…………(コクリ)」

「…………(コクリ)」

「ワン」

「ニャン」



 うん、ちゃんとシャワーの方で体を洗い始めたみたいだ。

 「目がしみる~~~」とか「やったな~お返しだ~」とかやってるけど、まあ好きにさせよう。

 俺は、体を洗うと……うん、ボディソープとかシャンプーとかリンスを使ったのは何時ぶりだ?

 こっちの世界にはそれっぽい物は一応あったけど、あんまり泡立ちとか良くなかったんだよな。

 久々に使うと凄くさっぱりするな。



 さてと、体も洗い終わったし念願のお風呂だ!

 大きい方の普通の温度設定の浴槽に、ゆっくり足の方から入っていく。

 最初は少し熱く感じるがすぐに慣れる。


「ふわ~~やっぱりいいよな~疲れが取れる」 


 浴槽で体を思いっきり伸ばして湯に浸かる。

 極楽~~極楽~~~。


「そうね~悪くないわね~」


 隣にやってきたシーナが幸せそうに呟く。

 タオルで隠すとか全くしてなくて色々丸見えなんだけどいいのか?

 俺の考えを読んだかのように、


「ま、今更でしょ~。それにしてもあんたも男よね~」


 少しあきれの混じった顔で声をかけてくる。

 うん、シーナには色々ばれているな。

 ポーカーフェイスをがんばりながら色々堪能させてもらおうと思っていると、


「いっくよ~~~~」

「…………(お~~)」

「…………(お~~)」

「ニャー」

「ワン、ワン」


 ちびっ子達の元気な掛け声。

 直ぐ後に、ドボーンという水しぶき × 5 うん、ちびっ子達と一緒に入るとのんびり静かに~ってのは遠そうだ。

 これはこれからの課題だな。

 時間で分けたりすると薮蛇になりそうだし。


 

 他のメンバーは、まだ来ないかと周りを見回すと……。

 セリカが中の浴槽に手を突っ込んで温度を見た後、入ろうとせず小さい方の浴槽に向かっていた。

 あ、もしかしてあいつ、熱い風呂は苦手なのか?

 小さい方の浴槽も手を入れて温度を確認した後、一つ頷いてゆっくりと入っていく。

 う~ん、あとで湯の温度に関しては皆で相談した方がいいかもしれないな。

 ちなみに、セリカはスポーティーな感じのボーイッシュな体形だった。

 シーナは並で、セリカは並+って感じだ。

 ドングリの背比べとは言わないでやってほしい。

 



 う~ん、他のメンバーは、やっぱり無理だったかと諦めかけた所で、脱衣所の扉が開く。

 マユさん、レナさん、ミルファさん、リーフさんの四人だ。

 あ、リーフさんは、明日の特訓の準備は終わったみたいだな。

 まあ、それはともかくとして……。

 

「白い……白い……大きなバスタオルなんて何処にあったんだ!?」


 ついつい俺の口から漏れた呟きが聞こえたのか、少し顔を赤くしたリーフさんがチャットでわざわざ答えてくれる。


『リーフ:この布でしたら、色々入った戸棚の中にありましたよ』

『クロ:ありがとう、後で調べてみるよ』


 うん、棚がずら~っとあったから全部脱衣カゴばかりだと見落としてた。

 く、しくじったな。


「残念だったわね」


 シーナのあきれ半分の笑い半分の表情に、ポーカーフェイスを貫く。

 ポーカーフェイスは大事だ!


 まあでも、真っ赤になって恥じらってるマユさんや、ほんのり頬を染めたリーフさんもいいものだ。

 いつもとは逆にレナさんを盾にするように隠れているミルファさんもいい。

 隠れきれない顔や手がトマトのようになっているな。

 少し恥じらいながらにこっと此方に笑いかけてくれるレナさんもまたいい。

 俺の隣のシーナを見て表情が抜け落ちたり、お湯に浸かっているのに肌寒い気がしたりするのが無ければなお良かったんだが……。


 

 その後、レナさん、ミルファさんがボディソープやシャンプーなんかの泡に感動していたり。

 リーフさんがリンスの効果に目を丸くしていたり。

 マユさんがボディソープ、シャンプー、リンスの成分を調べようと器具をアイテムボックスから取り出したり(後で作業場に持っていって調べてていいからと仕舞わせた)。

 何気に四人とも楽しそうに体を丁寧に洗っていた。

 あと、体を洗っている時はバスタオルガードが外れて色々見えた。

 リーフさんはペタン(ギロ)……じゃない並(?)って感じ。

 レナさんは……凄くきれいな上って感じ。

 ミルファさんは上+だ!

 マユさんは、意外に……だった。


 その後、体を洗い終わった四人は浴槽に入ってくる。

 レナさんは俺の隣シーナの逆側に。

 ミルファさんは……珍しくレナさんから一番離れた一番小さい所にセリカと一緒に……。

 マユさんとリーフさんは熱めの中の浴槽に。

 う~ん、色々好みがばらけてお湯の温度を決めるのは一苦労しそうだな。


 あと、お湯にタオルを入れるなとかいうマナーはこっちの世界であるはずも無く。

 隣のレナさんもバスタオル装備のまま、お湯に入っている。

 まあ、俺も腰にタオル巻いてるから人の事は言えないのだが……。

 この辺は徐々に慣れて、バスタオル装備を忘れる事に期待しよう。

 今のままでも、これはこれでいい気はするんだけどな。




 こうして俺は、大浴場は混浴と言う既成事実を作ることに成功する。

 細かい所は、徐々に改善すればいい!



 






次章は……生産者ギルドの話に成りそうです。

その前に番外編が入るかも?

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