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異世界に飛ばされた俺は奴隷調教師になっていた  作者: 七瀬 優
第16章 狐っ娘姉妹のトラウマ解消大作戦?
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第4話 可愛そうなクマさん

最大の被害者は……。

たぶんクマさん。

 空が青いな~。

 凄くいい天気だ~。

 そこらへんの木陰で昼寝でもしたら気持ち良さそうだよな~。

 あ、でもこの辺で昼寝とかしたらモンスターに齧られるか~。


 それにしても、本当に空が青いな~。

 雲ひとつない快晴だな~。


「にゃ~~~」

「ワにゃ~~」

「!!!!!」

「!!!!?」


 うん、ちびっ子達が空を飛んでる以外何も無い、いい天き……って、まずい!


「『ヒール・ウィンド』」 × 4


 4連発した魔法で、ライトグリーンの風が四人それぞれを包み、ほんの気持ち落下速度が弱まると同時に彼女達の傷を癒していく。



 そして……。


 スタ、と空中で体勢を整えて綺麗に着地を決めたのが、ネコ耳、ネコシッポのネコ獣人のポチ。

 

「ワギャン」


 べチャット言う感じで顔から地面に突っ込んで声を上げるのが、犬耳、犬シッポの犬獣人のタマ。

 タマとポチはネーミングが逆だと思うんだが……まあ、名づけられたのはしょうがないよな。


 グルグルグル~と、受身を取って地面を転がる二人が、天狐と地狐の狐っ娘姉妹。

 あ、そういえば起き上がろうとしてる二人を見て気がついたんだが……狐耳はあるんだが、あいつら狐シッポは無いのか?

 二人のお尻を見てみてもそれらしき物も、ふくらみも無いんだが……。

 狐獣人には尻尾がないのか?

 いや、あいつらは狐のなかでも、九尾の狐だったはず、特徴の九尾が無いのはおかしくないか?

 何か秘密があるのか?


 何て考えてると、目の前を何かが貫いていく。


「何をやってるんですか! 戦闘中に気を抜けば即、死がまってますよ!」


 と言うリーフさんの怒鳴り声が響く。

 というか、今目の前を通り過ぎたのって……。

 鼻の辺を流れ落ちる汗を無意識に拭う。


 うん、汗って赤い色してたっけ?


 あんまり深く考えないで置こう。

 ただまあ、一つだけいえるのは、現実逃避すら許されていないって事だな。


 

 ちびっ子達も、大分へばってたはずなのに気合が入ってる。

 うん、俺たちには逃げ場は何処にも無いんだな。


 ちびっ子達の向こうに突っ立っている、3mぐらいの大きさの熊。

 あいつを(ちびっ子達が)倒さない限り(リーフさんからは)逃げられない!


「何を休んでいるんですか!」


 トス、トス、トス、トス、トスと、俺たちの足元にそれぞれ一本ずつの矢が突き刺さる。


 回復や支援魔法以外は、禁止されたはずだと口に出すことも出来ずに、ただ、ちびっ子達が一刻も早く熊を撃破するのを祈るのみだ。

 適度な休みがないとMPもたないぞ!


「ワン!」

「ニャー!!」

「!!」

「!!」


 ちびっ子達は頷きあうと熊に突っ込んでいく。

 そのまま、それぞれが持った剣で切りつけようとするも、大振りの熊の右手にカウンターを喰らって吹き飛ばされる。

 

 そこで、俺は慌てて『ヒール・ウィンド』4連発して、ちびっ子達を一人ずつ回復させる。

 ちなみに、『ヒール・ウィンド』ってのは、風属性の回復魔法で、詠唱短縮系のスキルなしでも殆ど無詠唱で使えるほど出が早く、クールタイムもほぼゼロ、遠距離に使え、その上発動時一瞬ではあるが風の力で守られるという結構便利なスキルだったりする。

 まあ、利点だけのはずは無く、欠点はひたすらにコスパが悪い事だったりする。

 回復量は、一応『ヒール』と同等だが、これはゼロ距離で100%当てた場合の話で、距離による減衰や、風というか、イメージとしては霧状の回復魔法の弾が当たった分だけ回復と言う感じなのだ。

 まあ、遠距離で使うなら『ヒール』の半分も回復すればいいところだろう。

 それに加えて、MP消費は『ヒール』の約5~10発分(熟練度などによって微妙に変化)だ。

 ゲーム中では単体回復魔法だったが、この世界では一応範囲回復魔法にはなっているのは微妙に救いではあったが……。

 

 その上、『連続魔法(M)』や『クールタイム破棄(M)』などのスキルで連発しまくる事になるから益々MPを消耗して行き……めちゃくちゃカツカツになっている。

 『連続魔法(M)』はクールタイムを後回しにして魔法を連発するスキルで、2つ目以降の魔法の消費MPが2倍、4倍、8倍……と増えていくデメリットがある。

 『魔法クールタイム破棄(M)』の方は、クールタイムの代わりにMPを支払う感じのスキルだが、クールタイム1秒分でも相当なMPを消費して、クールタイムがまともに発生する魔法では気軽に使えるような代物ではなかった。

 

 本当に、ちびっ子達の特訓に来たはずなのに、なんで俺は全力でMP管理や支援魔法なんかの、ゲーム内で言う所のプレイヤースキルの方の支援スキルの特訓になってるんだ!?



 だがまあ、これでもリーフさん的には初級とか言いそうなのが怖い所だよな。


 さっきから繰り返してるように、ちびっ子達が突っ込んで、カウンターで吹き飛ばされるという所からわかるかもしれないが……。

 あの敵の熊、いや可愛そうなクマさんは、両足が木の根? いや、蔦か? で固定され移動を阻害されている。というより、移動できないようにか……。

 両足の辺りが真っ赤に染まってるのは気のせいだろう……足の真ん中を木の根が貫通してるような気がするのも気のせいだろう……気のせいと言う事にしておきたい。

 ついでに、クマさんの手は丁寧に爪切りがされている……クマさんの手が真っ赤に染まってるのはちびっ子達の返り血のせいだと思いたい……。


 

 そんな感じで特訓1日目は、殆どちびっ子達がダメージを与えることなく、両足の拘束の為の継続ダメージで3匹のクマさんが犠牲になって終わった。





 2日目。


 今日は、ちびっ子達が時間差で攻めるようになって、少しずつではあるがダメージが入るようになっていた。

 その分俺は休み無く魔法をフル回転させる事に成ったのだが、一気に全員がダメージ食らうような場面が少なくなり、『連続魔法(M)』や『クールタイム破棄(M)』などを殆ど使わなくなった事で、MP的には結構余裕は出来た。

 まあ、常時適切な魔法の選択を強いられ続ける感じになったので精神的には疲れるようになった気がするが……。

 

 そんな訳で、昼前にも関わらず、ちびっ子達はもう二匹のクマさんを仕留め、3匹目も瀕死の状態になっている。


「……(いく)」

「……(コクコク)」


 クマさんがタマとポチに攻撃して隙を見せた瞬間、狐っ娘姉妹が左右から同時攻撃を加える。

 攻撃は両手に持った剣で突き刺すという単純な物だったが、両側の腰に深く突き刺さり、最後の止めとなったようだ。

 力無く倒れていくクマさん……最後になんか安堵したように見えたのは気のせいか? 気のせいと言う事にしておこう。


「ワン~~~」

「ニャ~~~~」


 ポチとタマが勝鬨の声を上げる。

 狐っ娘姉妹も剣を掲げうれしそうに光だし……え? 光りだした?


「????」

「!!?!」


「どうしたんだニャ?」

「ワン? 大丈夫だワン」

「大丈夫か?」

「どうしたんです?」


 俺たちの注目が狐っ娘姉妹に集まる中、光が消えると……。

 素っ裸の狐っ娘姉妹が……。

 裸と言っても、ちびっ子だから、特に真っ赤になって恥ずかしがるという事も無くと不思議そうにしている。

 俺もロリコンとかじゃないから特に何も感じる所は無く、ただやっぱり狐の尻尾はないな~なんて感想を持った。




 素っ裸のままと言うのも何なのでマントを二人に渡したリーフさんが首をかしげながら呟く。


「これは、職業の変更でしょうか?」


 ああ~そういえば、狐っ娘達は職業変更中だったな。忘れてた。

 直ぐに皆にそれを伝える。


「では、丁度いい機会ですしこの子達は、【ビギナー】をマスターさせておきましょう」


 そう言って、リーフさんはクマさんを引っ張り出してきた森のほうに弓を構えると、一瞬、目を細め……矢を射る。

 そしてまた、弓を構え……矢を射る。

 10射ぐらいしただろうか?

 

 狐っ娘達の職業を見ると……。


『天狐:ビギナー★MASTER★』

『地狐:ビギナー★MASTER★』


 マスターしている。

 うん、ここから森まで100mぐらいあるとか……索敵はともかく目視では敵影を確認できない距離だとかは……うん、考えない方がいいんだろう。

 


 もうそろそろ昼時と言う事もあり、M&Mに戻って昼飯までの時間を利用してちびっ子達に【ビギナー】の説明をしてしまう。


 で、説明が終わって職業を戻す為に職業ツリーの操作方法を教えてみたのだが……。


『天狐が【一尾の狐】に転職しようとしています。許可しますか?(Y/N)』

『地狐が【一尾の狐】に転職しようとしています。許可しますか?(Y/N)』


 YESっと……って違うだろ!

 NOを選択してやりなおさせ……。


 直ぐにピコーンっと、またメッセージが浮かぶ。


『天狐が【一尾の狐】に転職しようとしています。許可しますか?(Y/N)』

『地狐が【一尾の狐】に転職しようとしています。許可しますか?(Y/N)』


「違うだろ、【戦士】に戻るんだよ」


 といいつつNOを選択……。

 ピコーン。


『天狐が【一尾の狐】に転職しようとしています。許可しますか?(Y/N)』

『地狐が【一尾の狐】に転職しようとしています。許可しますか?(Y/N)』


 NO

 ピコーン

 

 NO

 ピコーン


 NO

 ピコーン

  ・

  ・

  ・



「お前ら……」


 俺が狐っ娘達に注意をしようとしたところで、彼女達の真剣な表情に気がつく。


「……(ジー)」

「……(ジー)」


 こっちをじっと見つめ、絶対に引かないぞといわんばかりの表情だ。

 

「(絶対にこれがいい!)」

「(絶対にこれがいい!)」


 なんかステレオでそんな思いが伝わってくる気がする。

 だが、今はダメだ。

 今いきなり職業を変えたりしたらリーフさんの特訓をやり直しになる気がする。

 こっそりと二人にだけ聞こえるよう声を抑えてそう伝える。


「……(ど、ど……)」

「……(どうしよう……)」


 うん、二人の動揺が伝わってくる気がする。


「リーフさんの特訓が終わったら好きな職業に変更させるから……」

「(ほんと!)」

「(ぜったい?)」

「特に俺は職業を強制する気はないから……だからな……」


「……(こく)」

「……(こく)」


 ってな感じで無事に狐っ娘達は【戦士】に戻った。


 

 それにしても、【一尾の狐】か~聞いたことが無いけど、種族の固有の職業なんだろうな~。

 リーフさんの特訓が終わったら詳しく調べてみるか。






 

 その後、一週間ほどクマさんと戦い続け、リーフさんの拘束なしで撃破できるようになったところで、


「今回は、このぐらいでいいでしょう。これでなんとかティナと戦えるでしょう。そういうわけで、明日、天狐と地狐の二人にはティナと戦ってもらう事にします」


 と言う事で、明日。

 ティナと狐っ娘姉妹が戦う事になった。


「…………(コクリ)」

「…………(コクリ)」


 前みたいに露骨な恐怖が表れていないだけ成長したんだろうか?

 まあ、とにかく明日か。



 

 そういえば、この一週間の稼ぎで念願の大浴場のGPが溜まった。

 うん、なんか目指すお風呂が最初の時と比べて豪華になってる気がするのは……気のせいだろう。

 ともかく、明日の夕方ぐらいを目処に完成させて、結果はどうあれ新しいお風呂で特訓の疲れを皆で癒そう。

次回は……ティナVS狐っ娘姉妹!

狐っ娘姉妹に勝ち目はあるのか!?


まあ、目的は勝つ事では無かったような気はしますが……。

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