第1話 魔法の訓練
魔法の訓練を始めたクロ……。
敵は……マスタースキル?
※2014/03/03
メテオの描写追加。
闘技場が出来て1週間程がたった。
このところ俺は闘技場で、魔法の練習の日々を送っている。
相手は……と言うより的はティナだったりする。
色々あったが……もう好きにさせる事にした俺の方には実害は無いしな……。
最初は、セリカと一緒に見学だけしてるはずだったのだが……。
あれは、闘技場が完成して2~3日たった頃だろうか?
セリカとティナが戦い疲れて休憩していたので、丁度いいと言う事で、俺は魔法の訓練をすることにしたのだ。
流石に現状の攻撃魔法を使う事に不安を抱えたままだと、いざというときに困ると思ったのだ。
この闘技場なら人的被害だけでなく周辺の環境への影響も無い。うってつけだったのだ。
まずは、『ファイアー』『ウィンド』などの初級魔法を少し離れた地面に対して使う。
普通に炸裂して、地面を焦がしたりするのだが……。
「う~ん、いまいち解りにくいな的がほしいな……」
何か無いかと考えて、ふと思いつき、鍛冶で作ってあまってる鉄の鎧や鉄の兜を地面にならべる。
こんなとこか……。
30mほど離れた場所まで移動して、魔法を打ち始める。
「『ファイアー』」
鉄の鎧に命中し、溶けた鉄の塊になる。
うん、いい感じだ。
「『ウィンド』」
鉄の兜が真っ二つに切り裂かれる。
「『アイス』」
鉄の兜が氷漬けになる。
「『マジックアロー』」
鎧が大きな穴が開く。
「『ロック』」
飛んでいった石に潰される。
そんな感じで調子よく威力を確かめてた俺だったのだが……。
「なにやってるのよ! あんたは!!!!」
いつものように闘技場に見物に来たシーナに大声で止められる。
「魔法の訓練だが?」
「その的に装備品を使い捨てるなっていってのるよ! もったいないじゃない!」
「使い道も特に無いし――」
「い・い・わ・ね!」
なんかシーナから恐ろしいプレッシャーを感じた。
そんな訳で、装備品を的にすることは禁止された。
あまってるのに……。
とは言っても、的を作っても殆ど使い捨てになったので、的を作る時間の方が訓練時間より長いなんて馬鹿らしい事になってしまった。
そのため俺は、ギルドコアのところまで行ってカタログで何か無いかと探してみることにした。
拠点の設備のゴーレムとか使えればいいのだが、そもそもが高いし、修理用にGPとられちゃな……。
闘技場の機能拡張すれば何とかなるのかと思ったりもしたが……これまた高い。
そう思いながら、カタログを見ていると……。
訓練場なんて施設をみつけた。
そういえば、セリカ……最初はこっちを作るとか言ってたよな。
最低限の機能なら闘技場より遥かに早く出来るし、もっと前に完成してたはずなんだけど……。
ちょっと気になったので、セリカに聞いてみた。
「…………あ! 訓練場の方ならもっと早く完成してました!」
何か忘れてたっぽい。
まあ、その後よくよく聞いてみると……。
色々トラブルがあって個人で施設作るのを止めてる間に、闘技場が射程に入るほどGPが溜まって途中で変更したみたいだった。
まあ、俺も所持金が1,000Gの時に、1,500の武器を購入しようとお金をためていたら臨時収入で10,000G入りましたなんて時は……。
1,500G買うよりももう一段上の12,000Gの物を目指したくなるからな。
1,500G使って8,500G貯金とか出来なかったからな……。
お金があるとついつい上を目指したくなるからセリカの選択も良くわかる。
「訓練場の方も……あ! 決闘の結界水晶が足りません!」
ああ、そういえば、闘技場の方を作るときに使ってたな。
そんな事を考えながら改めて、訓練場と闘技場の説明を細かく調べていく。
すると……。
訓練場の方は、場所と言うよりも訓練用の設備がメインぽかった。
簡単に言うと、適当な広さのある場所に訓練場を作る感じだ。
その場所に結界で事故で死なないように結界が張られると同時に、低レベル(10以下)の時のみ経験値がもらえる訓練用の人形や、的などが用意されるようだ。
機能を追加していくと、訓練用のモンスター(経験値1/10 ドロップ無し)なども出すことが出来るみたいだった。
こっちの機能は前に見たな。たぶんセリカはコレがほしかったんだと思うのだが……。
それに対して、闘技場の方は、戦う場所の提供っぽかった。
つまり、このコロシアムの建物の方がメインっぽい。
ふと……コロシアムの対戦相手は俺たちが誘致するんじゃないのかと不安になった。
一応追加機能でランク別の対戦の機能はあるのだが……どっから相手をつれてくるんだ?
まあ、結果論的には、闘技場の方で正解かもしれない。
ティナ達が暴れまわったら回りに被害が及ぶからな……。
闘技場の異空間なら安全だ。
訓練場の方だと俺の魔法の練習も出来なかったしな。
そんな感じで一通り調べてみたが、いい的は見つからなかった。
「じゃあ、わたし達が相手になってあげるよ!」
結局、ティナがそんな事を言い出し、ティナとセリカが魔法の防御をする訓練を始めた。
最初は二人とも、防御に専念していて問題なかったのだが……。
すぐにセリカが耐え切れなくなる。
「防御だけでは埒が明きません!」
などと言って、俺に攻撃を仕掛けてくるようになる。
当然、俺は魔法の制御の訓練したいのであって、魔法戦闘の訓練をしたい訳ではないので、セリカを追い出した。
逆にティナは、妖精さん達と協力して的確に防いでくる。
「あまいよ! クロちゃん! そんなんじゃ傷一つ与えられないよ!」
「…………」
「もっと強いのじゃないと効かないよ!」
「…………」
「全然弱いよ!!!」
「…………」
「もっと魔法を練習しないと! 戦いでは使えないよ!」
「…………(ピキ)」
「へたっぴだよ~~当たらないよ~~」
「…………(ピキピキ)」
「私たちの守りは”てっぺき”なんだよ! そんな弱い攻撃じゃ効かないよ~~」
「…………(ピキピキピキ)」
「クロちゃん……下手だよ~~もっと練習しないと」
「…………」
うん、練習は大切だよな。
最大火力を試してみるのも必要だよな。
ここなら被害も出ないし……。
よし、やってみよう。
「うん、わかった」
「え? クロちゃんどうしたの? なんか怖いよ?」
「天空より――――――『メ・テ・オ』」
俺の魔法に従い、天空に幾つも隕石が現れる。
ティナは始めてみる魔法なんだろう俺の周囲に注意を払ってまだ気がついていない。
「え? え? 何もおきな……うわああああああ~~大変だよ~~~~~なんか凄いよ~~~~逃げなく……何処に逃げればいいの~~~~」
ティナが見上げた空には……。
今まさに降り注がんとする隕石の群。
それが……雨の如く二人を襲う。
その後、俺とティナは仲良く闘技場の外へと転送された。
闘技場に戻ろうにも、修理中で一晩使用禁止に……。
「酷い目にあったよ~」
「本当に……そうだな……」
『メテオ』……説明文の中に禁呪って文言があったのだが……誇張などで無くまさしく禁呪だった。
今後、説明文に禁呪とある魔法は、絶対に使用しないぞ!
特に全開のフルパワーや支援でガンガンに強化して打ち込んだらどうなるか想像もつかない。
それが解っただけでも収穫と思おう。
うん、それがいい。
そんなことがあって、ティナを的に魔法の訓練をすることになっている。
ティナの挑発に耐えるのも訓練の一つと思えば……思えば……。
俺の魔法の制御もある程度……まあ、魔法自体は術者やPTメンバーもダメージを受けるってことさえ解れば、訓練でどうにか形になった。
それと同時に、一つ問題点が浮かび上がる。
弱点属性に対する補正が強すぎる事だ。
ティナに弱点付与するデバフのスキルを使って試した所……。
迷いの森を火事にしかけたように、この世界では弱点に対する攻撃ではダメージを増幅するだけでなく、威力も増幅させるっぽかった。
まあ、マスタースキルによる影響で対象のモンスターが、ガソリンとかのような可燃物の様に燃えやすくなってるだけかもしれないが……。
う~ん。これは結構厄介だったりする。
範囲魔法でまとめて焼き尽くそうとしたら、威力が増幅されて味方まで……なんて事に成りかねないからな。
しばらくは、無属性魔法を中心に使った方が良さそうだな。
そうしてしばらく魔法の訓練の日々が続いて……。
ティナのと言うより、妖精さん達の防御技能が大幅に上がった頃。
俺は、リーフさんに呼び出されて砦の樹の家に顔を出した。
「そろそろ、この子達をM&Mの方で生活させようと思います」
「……」
「……」
リーフさんのその宣言に、狐っ娘姉妹がぐっと歯を食いしばりながら二人で手をきつく握るのが見える。
そのまま、具体的な日程や部屋の場所、引越しの準備などを行い、次の日。
ちびっ子達がM&Mの方に引っ越してきた。
ポチとタマは元気に挨拶していたが、狐っ娘姉妹は緊張と恐怖でガチガチだった。
「……(リーフお姉ちゃん~)」
「……(帰りたいよ~~)」
ただし、ラスボスのティナは、セリカと一緒にモンスター狩りに行かせているので、本番はまだまだこれからだ!
次回、M&Mに引っ越してきた狐っ娘姉妹。
トラウマは克服できるのか!?




