第3話 機能開放
二日酔い……回復魔法で一発回復とか夢だよな~。
普通の頭痛とかでも、魔法で回復とかしたいけど……。
ミルファさんの【騎士】マスターと昇格をお祝いした次の日。
当然の如く、二日酔で死屍累々になると思っていたのだが……。
酔うのが状態異常ってのをこれ以上無いくらい完璧に理解させられた。
状態異常回復させる魔法の『リカバリー』で一発で二日酔いが治ったのだ。
ただ、こうなると飲酒にブレーキが全くかからないよな……お金はともかく肝臓とか傷めそうだ。
飲酒による二日酔いは、非常時以外は回復魔法を禁止しよう。
そういえば、肝臓のダメージも回復するのか?
あれ? 飲酒止める意味が無いのか?
まあ、いいか。飲みたい奴は二日酔い覚悟すれば良いだけだしな。
M&Mに居るメンバーで朝食を取った後、ティナがミルファさんのレベル上げをしようと言い出した。
他のメンバーも皆賛成しているし、俺もレベル上げ自体は賛成なのだが……。
「今からか?」
「そうだよ~~せっかく昇格したんだからガンガン上げよ~~~」
昇格したばかりでレベルが落ちている時は、出来る限りあの半分シェルターになっている馬車に乗せたままレベリングしたい。
WMOではそんな面倒な事したりする事はなかったけど、あれは死に戻りがあったからだ。それに低レベルだとデスペナが凄く軽い。
ただ、こっちの世界だと死なせるわけにはいかない!
蘇生スキルや蘇生アイテムの類がどういう扱いなのかもわからないしな……使えるかどうかも含めてな……。
一度試してみましょうとかいって試せる類でもない。
「職業を変えた後はLv1からだから出来る限り安全にレベリングさせたい。ちびっ子達みたいに馬車に乗せたままとかな……」
「じゃあ、馬車でいけばいいよ!」
「馬がな……」
昨日のうちに、砦に繋がる大型のゲートは完成していたので、砦の厩舎で馬を休ませているのだが、まあ酷い無茶をさせたからなしばらくはな……。
馬車の方の修理は特に問題なく昨日の夜のうちに終わっているんだが……。
「そっか~~あ! いい事思いついた!」
うん、その言葉嫌な予感しかしないぞティナ。
その後、ティナは馬車をプチゴーレムに引かせようとか言い出たので試してみたのだが……。
まあ、馬力が全然足りずに引っ張れ無かった。
安物だしな、上位の物を買えば出来るんだろうけど。
そして……何を何処で間違えたんだろう?
「じゃあ、いってくるよ!!」
「行って来ます師匠!」
「いってくるわ」
ティナとセリカで馬車を引いている。
まあ、レベルが上がって力もそれなりについてたから出来るとは言え……。
なんか間違っているだろう!
シーナが、「それだったらあんたらが引っ張ったら?」なんて言ったからだな。
俺も含めて、真に受けるなんて思ってなかったんだがな……。
「レナ、気をつけてくださいね!」
「それはこちらのセリフですミルファ」
レナさんは今回留守番をしてもらった。
下手に彼女が危機に陥るとミルファさんが無茶をしかねないからだ。
そんな感じで、ミルファさん育成部隊は出かけて行った。
「無茶はするなよ~~~」
俺は、今回ミルファさんのレベリングにはついていかなかった。
それは、少し調べたい事があったからだ。
その為に、彼女達を送り出した後、教会までやってきたのだった。
ティナとセリカだけなら不安でついていかざる負えなかっただろうが、シーナが行ったからな。
面倒だからいやだと言いそうなのについて行ったのは、一人レベルが低いままを危惧したのかもしれない。
レベルが低いままだと、ティナのバカに巻き込まれて即死とかなりかねないって方向性の危惧かもしれないが……。
野戦病院みたいな状況……そのものずばり野戦病院だったのかもしれないけど……は、是正されていた。
たぶん、部屋とかベッドとかをちゃんと確保できたのだろう。
そんな事を考えながら建物の中に入っていく。
中はまあ、一般的に教会と言って思い浮かぶような十字架が正面に飾ってあって、その前に神父さんが立つ場所、あとは木でできた長イスが並んでるやつだ。
俺は、礼拝の邪魔にならないように隅のほうに座ってステータス画面を開く。
今朝少し気になって、ギルドコアの前に行き、俺の職業ツリーを確認してみたのだ。
『ステータス表示(M)』スキルとギルドコアによる表示に何か違いは無いかの確認だ。
結論から言うと、違いはなく全く同じ表示がされた。
なんで、こんな事をやりだしたというと、【奴隷調教師】から昇格して何か別の職業になれないかと、ふと思ったのだ。
昇格できれば、この人聞きの悪い職業をやめられる。
まあ、上位互換で今以上にまずい事になる可能性は大いにあるのだが、それは昇格できる職業を見つけた後の話だ。
そんなわけで、あとは場所によって職業ツリーに変化が無いのかを確かめようとして教会まできたのだ。
あとで、冒険者ギルドにも行く予定だ。
PTクリスタルや職のクリスタルを使うかは迷ったが、表示させたデータを集められていたりすると面倒なのでやめておく事にした。
ギルドコアでも、『ステータス表示(M)』と内容が一緒だったからたぶんこっちも一緒だろう。
「やっぱりだめか~~~」
俺はそんなことを呟きながら冒険者の街をぶらついている。
教会や冒険者ギルドで試してみた結果。
やっぱり、ギルドコアの前と同じく、俺の職業ツリーは、【モンスターマスター】だった場所が【奴隷調教師】に変わっており、【モンスターマスター】から昇格可能だった職業へのラインは切れていた。
う~ん、職業ツリーのラインが切れるってのは見た事も聞いた事もなかったんだが……やっぱり、バグかなにかで不具合が起きたんだろうな……。
まあ、ダメ元で職業ツリーを表示しながら街をあるいてみるか。
場所によっては、いくつか職業ツリーに変化がある場所はあったのだが、【奴隷調教師】とは関係ない職業だからな……転職が出来ないから今はなりようが無い。
そんなこんなで、収穫ゼロでM&Mに戻ってみると……。
入り口あたりで、マユさんとレナさんが何かを貼り付けていた。
よく見てみると……。
『----------------------------------------------------
素材買取始めました!
Gでの買取の他に、素材と回復薬の交換もはじめました。
詳しい買い取り価格などは、
薬草 xxxG
どく消しそう xxxG
・
・
・
注意事項
…………………………………………………………
…………………………………………………………
…………………………………………………………
----------------------------------------------------』
なんて張り紙だった。
もしかしたら、昨日俺が素材の買取をしてるのを見て思いついたのかもしれない。
エルフの森や、砦の周辺ではしばらく採取はできそうにないし。
冒険者の街周辺では枯渇してるしな。
それに加え、オーガの渓谷の先には当分いけそうに無いしな。
買取の仕事だけでも、マユさんはそれなりに満足しそうだしな。
ちゃんとお店をやれてる感じがするし。
「ただいま~」
「あ、クロ様お帰りなさい」
「おかえりなさい~」
俺は、M&Mに戻った後、ギルドコアの部屋までやってきて色々調べる。
職業ツリーの件が収穫無しだったので、暇になってしまったのだ。
う~ん、これだけ早く終わるならミルファさんのレベリングついていけばよかったかな……。
そんな事を思いながら、GPで購入できるアイテムのカタログなどを見ていく。
ああ、そういえばそろそろ大浴場が作れそうだな。
セリカの闘技場や、シーナの不思議な宝箱もいけるかもしれないな。
マユさんの生産設備は随時更新されてそうだけど……。
今日の夜にでもその辺の話をしてみるか。
結構忘れてそうな気もするし。
「あとは……」
あ、『調教』スキルの”隷属したキャラクターの能力強化”の機能は何か追加されてないかな?
MP強化とか防御力強化とか増えてたら結構育成の自由度が増えるよな。
なんて思いながら……ステータスの【奴隷調教師】のスキルの所を開いてみたのだが……。
増えていた。
結構この世界ではやばい気がする物が増えていた!
『調教』
・隷属したキャラクターのステータス閲覧
・隷属したキャラクターの能力強化
・隷属したキャラクターの職業変更 <NEW>
”隷属したキャラクターの職業変更”と言うやつだ!
これは、奴隷に限定した転職開放なのか!?
説明文を読んでみると、能力強化なんかと同じく、取得経験値の0~10%を割り振る事によって職業変更の項目に経験値を溜める事が出来るらしい。
経験値が100%溜まった時点で職業が変更されるようだ。
う~ん、即効で職業変更と言う訳では無いみたいだな。
となると、特殊職業への転職って可能性もあるのか……。
迂闊に弄っていきなり転職とかでもまずいし、今夜皆に話してみよう。
いけに……げふんげふん……挑戦者は立候補がいいよな。
いったいどんな職業に変更されるんだろうな?
普通に転職と同じ機能なら……この世界では恐ろしいアドバンテージになるんだが……。
次回は、人体じっ……げふんげふん。
『調教』の新機能”隷属したキャラクターの職業変更”の解明です。
クロ達は、チート集団になれるのか?
もうすでに、色々チートな気がするが……。




