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第2話 お祝い

ミルファさんのマスター&昇格のお祝いです。


困難で長い道のりを達成したからこそのお祝いでしょうけど……。

この先マスターや昇格する毎にやる気なんでしょうか?

 ミルファさんを包む光が消えて行き……。

 その場に現れたのは……肌色の……肌色の……。


「…………」


 その肌色が……少しずつ赤みを増して……。


「…………」


 全身真っ赤に……。


「きゃあああああぁあぁぁぁぁぁあぁぁ」


 耳が痛くなるよな悲鳴が……。


「ふく、ふく、ふく、ふく……」

「これつけると、いいですよ」

「クロさんは見ちゃダメです!」

「見ちゃダメなんだよ~~~」


 他のメンバーも、結構慌てている。


「そうだったわ……装備品は全て外れるんだったわね……」


 シーナが忘れてたと言わんばかりにつぶやいている。


 ああ、そういやWMOでも昇格とか転職すると装備品全部強制解除だったよな。

 装備品無しの状態は、あっちだと、Tシャツに短パンだったけど……場所によっては湯煙装備もあったな~。

 この世界だと、すべての装備が解除されるとああなるのか……。

 そういえば、装備品は……あ、ギルドコアの前に並んでいるな。

 あ……あの面積の少ない布は……ダメだ! 見ちゃ!


「あんたもヤッパリ男よね……」


 シーナからじっとりとした目で見られたのは気のせいと思おう。




「お騒がせしました」


 着替えなおしたミルファさんが改めて、ギルドコアの前に立つ。


「あの時は、慌てましたけど……クロ様には前にも見せた事あるんだから気にしなくてもよかったのでは?」

「!???」


 レナさん……それは言わなくてもいいでしょ……ミルファさんが、また真っ赤に染まってるぞ。

 他の何名かも顔を赤くしてるしな。




 気を取り直して数分後……。


「色々と……お騒がせしました……」


 大分疲れた様子のミルファさんが頭を下げる。


「色々トラブルはありましたが、おめでとうございます」


 リーフさんが言葉を皮切りに。


「おめでと~~」

「おめでとうございます」

「おめでと」


 など皆口々に祝福の言葉を送る。

 俺も、「おめでとう、ミルファさん」とお祝いを述べる。



「それで、何に転職したの?」


 一段楽した所で我慢できなくなったのだろうティナがミルファさんに尋ねる。


「はい、これです」


 ミルファさんはギルドコアを操作して、ウィンドウ画面を皆に見せる。


『ミルファ:シールドナイトLv1』


 ああ、それを選んだのかミルファさんは……。

 レナさんを守るという意味では、確かに一番適してるかもしれないな。


「おめでとう~ミルファ」

「ありがとう。レナのことは絶対に守ってみせます!」

「無理だけはしないでね」

「はい!」


 ミルファさんは、さっきの様子が嘘のように、キリリとした表情でレナさんに誓いを立てている。


「おおおお~~~【シールドナイト】だ~~~いいな~私もやりたい~~~」

「ティナ……もう少しエルフとしての……今言っても無理ね……」


 ティナ、リーフさんがため息混じりになってるぞ、あとなんか後で説教追加になる気がするが……まあ、いつもの事か。


「お祝いのパーティが必要ですね」

「マスターと昇格のお祝いですね!」

「あと、BOSS戦の残念会もね」

「うううう……」


 この世界ではマスターや昇格って、盛大に祝う物なのか?

 まあ、WMOと違ってレベルUPとかが遅いから、何度も昇格できるわけじゃないのかもな……。

 


 その後、今日はもう遅いので、明日の夕方頃からお祝いのパーティを開く事が決まる。

 明日その時間までそれぞれ準備をする事になった。

 う~ん、マユさんの料理だけでいい気もするけど……特にティナの準備は怖いな……。


 

 

 皆が解散していく中、シーナが丁度隣に居たので、ふと疑問に思ったことを聞いてみた。


「そういえば、こんな時間なのに教会って普通に開いているんだな」

「当然でしょ! 怪我人に回復魔法とか、掛けなきゃいけないんだし。それに、酒代に消える前の懐の方が金払いいいじゃない!」


 何となく言う事は解らないでもないが、俗物過ぎないか?

 教会……。




 さて、次の日。

 俺は、朝から冒険者ギルドにやって来て居た。


「素材の購入かぁ~。買取はギルドメンバーならいつでもやっているが、購入となると依頼出してもらうしかないな~」


 ガロウズさんが渋い顔で答えてくる。

 そう、今は俺はモンスターの素材を探して冒険者ギルドに来ていたのだ。

 モンスター素材は冒険者ギルドで引き取ってもらえるんだから逆に購入も出来ないかと思ったんだが……。

 どうやら、売却先は決まって居たようだ。

 まあ、WMOでも冒険者ギルドで素材を買うとかは無かったからな~。

 あって鉱石なんかがギルド内のNPCに売られてるぐらいだったから……。


「依頼を出すとどのくらいで?」

「普通に受ける人を待って、そいつらが倒しに行ってだからな……」


 うん、それぐらいなら俺が直接狩に行った方が早い。


「まあ、おめぇが自力で手に入れるよりはかかる事は確実だな」

「そうですか」


 う~ん、どうするか?


「それなら、街の門の外で買取の募集した方がいいかもな~。いっそ、お前らの店でやったらどうだ? ああ、街の中ではやるなよ色々商業ギルドがらみで面倒になるからな……」

「わかりました、それじゃあちょっと昼前までちょっと募集してみます。誰か売りに来た人がいたら色をつけるって言って置いてください」

「おめぇな~一応、こっちも買取してんだぞ。まぁ、急ぎってんなら、急募で依頼出して置けよ。それなら案内できるぞ」

「わかりました、依頼料は買い取った時だけって感じにできますか?」

「割高になるがまあ出来なくは無い」


 何て感じで、素材募集の依頼を出して冒険者ギルドを去る。

 昨日の夜に急ぎでPTクリスタル使いに来ていた件やらBOSS戦の事を聞いて来たが、急ぎってことでシーナに丸投げしておいた。

 俺がしゃべって変なボロが出たらまずいからな。

 決して面倒だったわけじゃない。




 その後、一応街の中の店を一通り見た後、M&Mの前に陣取って買取の募集を始める。

 探しているのは、防御が硬い系のモンスター素材だ。

 まあ、持ち込み品のドラゴンの鱗とかって手もあるんだが……あれだと、他の素材がな……。

 

 

 さて、買取を始めたは良いが……。

 内容が、『防御力が高いモンスターの素材を探しています』だったものだから……。

 色々持ってくる人が並んで結構な列になってしまった。

 良さそうなのは買い取るが、値段などが折り合わないのや買い取った物より程度の落ちる物は結構断っていた。

 そのうち一つ一つ交渉するのが面倒になったので、並んでいる人の中で一番良い素材と、俺が作成したポーションを交換する事にした。

 なんかお金よりも、鉄の剣などの装備品や、回復アイテムなどが欲しいって人が多かったのだ。

 まあ、装備品の方は現状、冒険者ギルドとかとの話し合いも終わってないし出すわけには行かないからな。


 シールドタートルの甲羅と言う、亀型のモンスターの甲羅を買い取った。

 まあ、最上位の物を作るわけでもないし、他の素材からいってもこれくらいが無難だな……。



 俺が買取をした冒険者は、思わぬ幸運に大喜びをしていた。

 あとでシーナに聞いたのだが、M&Mのポーションってのは相当に高値で取引されているらしい。

 転売かよ……。

 ポーションも何か対策をと考えようとした所で、シーナには止められたが……。

 ランクの低い冒険者が持つより、ランクが高く資金力のある冒険者が持った方が有効活用が出来るって事だった。

 たしかに、最大HP以上に回復させても無駄だからな……。




 そして……。


 トンテンカン、トンテンカン、トンテンカン


 またもや鍛冶作業に戻っている。

 今回は、鉄にモンスター素材を加えて特殊な効果のついた装備を作ろうと思っている。

 ランクは低いが、使えそうなら色々本気で材料集めするのも良いかなって感じだ。

 

 まあ、あくまで、急造のお祝いの品だからな……。

 品質なんかが落ちるのは勘弁してもらおう。





 トンテンカン、トンテンカン、トンテンカン


 トンテンカン、トンテンカン、トンテンカン


 トンテンカン、トンテンカン、トンテンカン


「うん、こんな感じかな?」



名前:守りの剣

分類:武器(片手剣)

品質:普通

攻撃力:5

防御力:5

特殊能力:大ダメージを受けたとき耐久度で肩代わりをする事がある



 鉄で出来た防御用の片手剣だ。

 鉄の剣よりも攻撃力は低いがその分防御力も上がるし、特殊能力もついている。


 品質はもう少し上げたかったのだが……色々無理やり作ったからな……。

 正規の材料とか無視してやったから形になっただけでもよしとしよう。





「「「「「おめでと~~~~」」」」」


 M&Mのダイニングに、砦のちびっ子組以外が全員集合していた。


「ありがとうございます」


 うん、ミルファさんもうれしそうだ。

 ちなみに、彼女は今日一日リハビリのような事をしていた。

 レベル1になってステータスが大きく下がるのは、WMOと違ってこっちではリアルに能力が落ちるからな。

 色々、慣れるのに苦労していたみたいだ。

 シーナが「まあ2~3日慣らして、弱いモンスターと戦うのが普通よ」なんて言っていた。



「ミルファこれを……」

「レナ! これは!」


 レナさんは何か凄く細かい装飾の入った短剣を渡している。

 何か曰くのある品なんだろうな。


「これはレナが持っているべきです!」

「何時も一緒に居てくれるのでしょ?」

「!? はい、解りました大事に預からせてもらいます」


 その短剣を恭しく受け取っている。

 うん、騎士なんかの叙勲なんかを思い出す。



「これ、ハイポーションです。役に立ててください」


 マユさんが、結構無茶をして作ったんだろう、品質が少し悪いハイポーションを渡している。

 それでも作れるだけいいか、結構腕を上げたんだな。


「あ、ありがとうございあます。大事に使わせてもらいます」


 ミルファさんは大事そうに受け取っている。



「私からは、これよ」


 シーナは、石?

 『アイテム鑑定(M)』で調べてみると、幸運の石と出ていた。

 生産系の素材だな。

 確か、素材として使うと完成後の装備の運が微妙に上がったはずだ。


「シーナとかぶりましたが……」


 セリカも同じような石を渡している。

 こっちは、守りの石か……。防御を上げるやつだな。


「ありがとうございます」


 ミルファさんはうれしそうに受け取る。

 後で聞いた話ではお守りになるそうだ。

 う~ん、使ってこそだと思うんだが……。



「ミルファさんこれを……」


 リーフさんからは、何か樹木で出来たアミュレットの様なものだ。

 『アイテム鑑定(M)』を使うと樹のアミュレットと出た。

 ほんの少し樹木から加護がもらえて、防御と魔法防御が少しあがり、森での戦闘でほんの少し補正がかかるみたいだ。


「ありがとうございます」


 そういって、ミルファさんはアミュレットを身に着ける。



「俺からは、これだ。防御力が多少上がる剣だ」


 俺は守りの剣をミルファさんに渡す。


「あ、ありがとうございます」


 ミルファさんは剣を抜いてみて使い心地を試している。

 うん、シーナ「あんたまた……」って感じの顔で見るな。

 結構これもまずい物だったらしいな。



「ミルファちゃんのお祝いに、これを上げるよ~~」


 ティナは……。


「こ、これは……(ぼっ)」


 ピンク色の本を渡していた。

 その選択は何かおかしいだろう?

 後ろでリーフさんが怖い顔してるぞ!


 でも、ミルファさんは赤い顔をしながらも嫌そうにはしてなかったな……。




 その後、マユさんが作った豪華な食事に舌鼓を打ったりしながら夜遅くまで騒ぎ続けていた。

 

 あまりに色々酷いと思ったら、飲み物にアルコールが混ざっていた。

 

 ああ……状態異常耐性ってアルコールの酔いもガードしちゃうんだな……。

 一人だけシラフのまま、ほんの少し悲しくなった。






 後日、アルコール耐性を下げるアクセサリがあるとシーナに教えられた時は、なんともいえない気持ちになったが……。


 そこまでして酒が飲みたいのか!?

次回は……ミルファさんのパワーレベリングの予定です。


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