第5話 どうやって売ろう?
クロ達がどう売るか悩みます。
しかし無常にも開店時間は迫り、即興で決める事に……。
いいのかそんなに適当で!?
※2014/02/10 クジ引きの説明追加。
シーナに目一杯お説教を受けた。
時間が無いので後でみっちりやるわよとか言われたが、今回は俺が全面的に悪いと思うのでなにも言い返せない。
「わ~~~クロちゃんがしかられてる~~何したの~~~?」
だが、起きて来たティナがそんなふうに楽しそうに尋ねて来るのには、ズベシと一撃入れておいた。
「痛いよ~酷いよ! クロちゃん!」
いや、お前にだけは叱られる事を指摘されたくない!
「ちょっと熱くなりすぎたわね。後は暇が出来たらにして……開店までそう時間が無いわ。どうする?」
シーナがその場に居る、俺、マユさん、急遽呼んだミルファさんにレナさんの4人に尋ねる。
ティナには賢明にも聞こうとしてない。うん、当然だな。
セリカはM&Mの入り口あたりを守り続けている。流石に彼女は移動させるわけには行かなかった。
まあ、相談より警備の方がうれしそうだったけどな。
「1人、1個の制限で普通に売るわけには行きませんか?」
マユさんの案は、現状だと下策中の下策だろう。
そんな事をしたら……。
「そんな事をしたら、誰が先に買うかで大混乱になるわよ!」
だよな……。
「先に並んでる人からでは……」
「それが誰かもわからないし、外の皆が納得するような証明も出来ないわよ」
だな、一列に規則正しく並んでいたとかならまだ可能性はあったかもだけど……。
M&Mの前に群集が集まってる感じだからな……。
「そうですか……」
マユさんが暗い表情でうつむく。
彼女は普通にお店をしたいんだろうな……でも今は出来ない、よな……。
「じゃあ、”売り切れだよ~”ってすればいいよ!」
「それじゃあ収まらないわよ!」
ティナの言葉に即座にシーナが返す。
実際に売り切れになった時にも困った事になりそうなんだけどな……。
本当に、どうしたらいいんだ?
「オークションをするのはどうでしょうか?」
王族とか貴族っぽい提案だ。高価な物を買うときはオークションとかを使うのが普通だったのかもな(本人は直接行かなくても)。
確かに、それも手ではあるんだが……。
「それは……悪くはなさそうだけど……多分、殆どを商業ギルドに買い占められるわよ。そんな事になったら他が収まりそうに無いわよ」
確かにな~。商業ギルドと、集まってる冒険者達との資金力を比べるとな殆ど買い占められるだろうな。
そうなると、あいつらに利益を献上するだけになるだろうしな……それは避けたいんだよな。
「抽選なんかは?」
ミルファさんが意見を出す。
「何を抽選するの? 参加費とってクジ引きでもするの?」
「じゃなくて、買う順番を!」
買う順番をクジで決めて、購入制限か……これはありかもしれないな。
「ただそれだと、ハズレを引いた奴等が納得し無い気がするわ……特に朝早くから来ていた連中とか……」
まあ、ハズレたら文句を言いそうではあるけど……冒険者ギルドに応援を呼ぶんだから何とかならないか?
「あと、そっちだと相場がやばそうなのよね……できればオークションの方がいいんだけど……何か転売を禁止する方法があればね……」
転売を禁止か……。
うん? ちょっと待てよ?
譲渡禁止、持ち主本人以外は装備不可能にする方法なら……あったな。
確か……【名を刻むモノ】とかいう職業名とは思えない職業のマスタースキルだったはず……。
基本的に自作のアイテムの名前を変更したり、ブランド名(マークも)をつけたりするネタ職業だったのだけど……。
唯一実用的なのが、所有者の名を刻むスキルだ。
装備品の所有者を決定してそれ以外の人物は装備する事が出来なくなると同時に、無くしても特定の手段で召喚して取り戻す事が可能になるのだ。
つまり、デスペナで落としたり、PKで取られたり、盗む系統のスキルで奪われる心配も無くなるのだ。
また、装備品の能力もいくらか上昇する。上昇値はその装備のランクによってまちまちだが……。
そんな便利なスキルなら、すべての装備品に自分の名前を刻めば良いと思うかも知れないが、ここに1つ落とし穴がある。
この所有者を変更する方法が全く無いのである。
つまり、一度所有者をきめてしまったら、売る事も、譲渡することも出来なくなるのである。
もっと端的にいうと、資産的価値が0になるのだ。
まあ、売らない一生物の装備品なら問題は無いのだけどな……。
「シーナ、本人以外はその装備品が使えなくなる方法はあるぞ」
「え!? 本当に?」
「ああ」
「それが本当なら、オークションやるのもいいかもしれないわね」
「いっそ、商業ギルドのやつらに大量に高値で買わせて打撃を与えるのもいいかもしれないぞ」
「そうね、オークションの参加条件を譲渡や売却など禁止して本人が使う目的のみとすればいいかもしれないわね。それに市場に流れる事がないなら混乱も最小限になるしね」
あいつらの強欲にはいい加減ちょっと頭に来てるしな。
市場の混乱を最小限にしておきたいからな……。
「それに、あいつらに目にモノ見せてやれるしな」
「ふふふ……そうね……」
「転売禁止と言っても、口約束だと思ってるだろうしな……」
「そうね、正式な契約とかをしなければ……踏み倒すのは躊躇しないでしょうね」
「「ふふふふふふふ……」」
俺とシーナの黒い笑いに、マユさん、レナさん、ミルファさんが若干引いていた。
ティナは……「面白そう!」と楽しそうにしていたが……。
ひとしきり俺たちが笑った後、ポツリとマユさんが呟く。
「その方法でオークションすると、殆ど冒険者の手に渡らない事になりませんか?」
「ああ、そうだな……」
確かに、マユさんの言うとおり、冒険者のお客さんが買える目がほとんどない……。
その問題が残るか……。
「では、半分をオークションに出して、残り半分をミルファの言った様にクジ引きで購入順を決めたらどうでしょうか?」
レナさんがさっきのミルファさんの意見を持ち出して来る。
それなら、運だけでは無いからまだ反発は少ないのか?
「いっそ、オークションに出す装備なんかの出品数を秘密にしておくのもいいかもしれないわね。在庫の半分を出しますって感じで……それで、オークションが終わった後クジ引きで」
残りいくつかわからないから高騰するか……。
逆に、クジ引きで購入順を決めた後は、在庫の個数を全部と主張も出来る。どれだけ効果があるかはともかく……。
「それで行くか……穴だらけかもしれないけど、もう時間がない」
「そうね……。開店時間が遅れたらどんな事になるかわからないもの……」
「それに今からクジを作らないとダメですし……」
「ミルファがんばるわよ」
「はい、レナ!」
「ワクワク~オクークションか~クジ引きか~~楽しそう~~~」
おい、ティナお前は店側だろう!
それをやったら……お前……サクラに……。
そして、開店時間が来る。
「開店だよ!!!」
ティナが屋根の上に登って声を上げる。
「違うでしょ!」
同じく屋根に上ったシーナがティナに突っ込みを入れる。
「痛いよ~~シーナちゃん」
ティナは結構涙目だ。
「おう、いいぞ~やれやれ~」
「「かわいそう~」」
などと、声援やら悲鳴やらが飛んでくる。
何か大道芸の一つみたいに見られていそうだ。
「おバカは、黙らせた所で……集まってもらった皆さんにちょっと残念なおしらせよ!」
「なんだ!?」
「今日は休業とかじゃないだろうな!?」
「チャント売れよ!」
シーナの言葉に野次がいくつも飛んでくる。
「ここに来てる人数に比べて圧倒的に在庫がたりないのよ! だから今回は売り方を変える事にしたわ!」
「何だと!」
「普通に売れ!」
「早い者勝ちでいいじゃねか!」
うん、店の入り口付近のお客から特に文句が出ているな。
「じゃあ、あんた達の購入順は最後でいいのね? 多分、商品のこってないわよ!」
「ふざけるな~」
「朝早くからならんでんだぞ!」
「文句を言うなら、参加資格をなくすわよ!」
「参加資格って何だよ!」
「何だそれ?」
「だから今から説明するんでしょ!」
うん、シーナも大変そうだ。
マユさんに行かせなくて良かった絶対のまれてたぞ!
俺も行きたくない。
「まず前半ね。在庫の半分をオークションで売る事にしたわ! 場所は、門の前は邪魔だからこの店の裏ね!」
なんていいながらシーナはオークションのルールの説明をする。
文句や野次は当然黙殺、酷いと参加資格剥奪でどんどん進めていく。
所有者本人が使う人だけ参加する事。
譲渡や他人への売却なのど本人以外が使うのは全て禁止。
などなど、さっき話していた内容と、オークションの細かいルールだ。
となりで「おおお~~~」「そうなんだ~」「すご~い」とか相槌なのか、ティナは色々声を上げていた。
う~ん、必要あったのか? あいつ……。
「次は、後半ね。前半の残りの半分……端数はこっちに入れるわ。今度は普通に購入してもらうわ。ただし、購入順をクジ引きできめるわよ! あと、前半と同じく転売とかは禁止ね!」
こっちの説明は、クジ引きの段取りの説明だけだった。
「じゃあ、早速準備するから店の裏に回って!」
何て言葉と共に、文句をたれていた奴らも一緒にM&Mの裏に向かっていく。
う~ん、殆ど段取りも何も即興でつくった奴で本当に大丈夫なのか!?
まあ、最悪、冒険者ギルドの活躍に期待するか……。
次はオークションとクジ引きを行います。
さて……どうなるのやら……。




