一日目 ⑨ 店先の大商人
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先生はおおまかな事の顛末をコーエンのおっさんに話して聞かせた。俺は洞窟に隠れているアンジーやチビ達が心配だったんで先に洞窟に行きたいといったのだが……
「俺の部下が迎えに行ってる。お前は大人しくしてろ」
と来やがった。
「おっさん……部下って……さっきの従業員以外にそんなヤツいたのか?」
おい、おっさん……なんでそんな“可愛そうな人間を見た”みたいな顔になってやがんだよ……
「フォーティ君……こう見えてもコーエン殿は“環十地方”一円に100以上の支店を構える大商人なんだよ。ついでに言えば我々“聖遺物”の研究者の支援者でもある」
先生の話を聞いた俺は絶句しちまった……どうも俺の持っている“買い取り屋”としてのおっさんのイメージはアテにはならないらしい。
それから暫く先生の話を大人しく聞いていたコーエンのおっさんは……盛大に溜息をついて頭を掻きむしった。
「話は分かった……クロムウェル殿、聖杯をこのバカに持たせたのは失敗でしたな」
「ああ……銃声を聞いた途端走り出してしまったのでね……どのみち彼等を最優先で逃がすつもりだったんで持たせたままにしておいたんだが……」
……俺が暴走したせいでって事か……でも……
「先生……あんた……もしもの時は帝国兵に自分から捕まるつもりだったのか? だから俺に聖杯を持たせて……?」
今度は……ハッキリと驚いた顔を見せた先生と……ついでにコーエンのおっさんも驚いてやがる。
「どうだねコーエン殿。フォーティ君は多少向こう見ずな所があっても物の見えない人間では無いよ」
「あっしは……先生の方がよほど無鉄砲だと思いやすがね……」
「そうだぜ。先生のこったから考え無しじゃあなかったかも知んねぇけど……無鉄砲なのは間違いね……」
その時……森の小径から、
「フォーティ!!」
「「「「あんちゃーん!!」」」」
アンジーとチビ共がワラワラと走り出して来て……
「お前ら! ……ちょっと待て……」
― ドドドドッ ―
もみくちゃにされちまった。お前らな……俺は怪我人なん……いや治ってるのか?
「ふう……まぁいいや。ともかく……お前らが無事でよかったぜ」
――――――――――
「社長、準備完了しやした」
「……その呼び方はやめろと言ってるだろう……」
「すいやせん社長」
それを聞いたおっさんは……溜息をついて言葉を飲み込んだ。
「お前ら……いいな?」
おっさんは松明を片手に俺達に確認してくる。その向こうには……おっさんの手引で獣脂を撒かれた俺達の家がある。
「ああ……やってくれ……」
最低限必要な物は、アンジー達と共におっさんが用意した馬車に移した。中に居るのは……クロムウェル先生の服を着て銀の器を握りしめた帝国兵の死体だけだ。正直……こんな子供騙しでどうにか出来る相手じゃないだろうが……ちょっとでも時間が稼げりゃ御の字だろう。
― ボッ ―
軒下に蓄えられた薪に松明が放り投げられた。特に念入りに撒かれた獣脂に火が移ると……あっという間に俺達の家に炎が拡がって行く……
「アンねぇちゃん……燃えちゃうよ??」
アンジーが抱いていた一番小さなマーグが不安そうに呟いた。よく見れば……みんな泣きそうな顔をしている。チビ達の境遇なら当然と言っていい感情だが……今はどうしようも無い。
「心配すんな!! これからはもっと良い所に住めるさ!! 飯だってたらふく食えるぞ……こんな見た目だけどよ、このおっさんはすんげー金持ちなんだぜ!」
今の俺に出来るのが……適当な励ましくらいしかないのが腹立たしい……
「ちっ、人の財布を当てにしてるクセに勝手な事を言いやがる。分かってんだろうな?」
「ああ、こいつらが無事に暮らせるなら……俺が出来る事は何でもするさ」
――――――――――
全員が揃った後、クロムウェル先生は俺の手首に巻き付いた腕輪を何とか引っ剥がす事が出来ないかじっくり観察したが……俺がざっと見ただけでも腕輪は俺の手首に隙間無く巻き付いて継ぎ目すら見当たらない……
結局……俺はアンジー達の保護を交換条件におっさんが支援している組織に協力する事を約束した。とりあえずだが、家を焼いて多少時間を稼いだ後……俺達はチチブ渓谷を渡って環十地方を抜け長野共和国に渡る事になった。なんでも……大東京帝国の侵攻から逃れた元環十玖圏の難民が住む隠れ里があるらしい……
家から離れた俺達は……おっさんの付けた護衛と共に夜をおしての逃避行の最中で……後ろの馬車では皆が疲れて眠っている。
街道はそれなりに整備されており、月明かりもあってそれほど無茶な行軍でもないが……俺は、手綱を握る先生が疲れた時の助手として隣に陣取っていた。
「すまないフォーティ君……結局……君達の事を巻き込んでしまった」
……不意に先生から謝罪の言葉が漏れた。
(もしかして暫く無言だったのは……どう切り出したらいいか悩んでたのか?)
「……まったくとんだ一日だったよ。身に覚えの無い争いに巻き込まれた上に……今や俺は立派なお尋ね者……いや、それは俺のやらかした事が原因か………」
「…………」
先生は悲痛な表情を浮かべて……無言のまま前方を見ている。
「でも……まっ気にしないでくれよ先生。元々悪いのは帝国だし……皆はともかく、俺の命は一年前に先生に貰ったようなもんだからさ。アイツラが普通に生きて行ける所に落ち着けるなら……移住くらいどうってことないし、俺だって……帝国に一泡吹かせるってんなら……」
― パシッ ―
俺の拳が掌に打ち付けられた音に……数人の護衛が反応したが……すぐに視線を警戒に戻した。俺は少しバツが悪い思いをしたが……
「俺だって黙っられねぇ。帝国に……これ以上大事なモンを奪われてたまるかよ」
「すまない……フォーティ君」
「ああ……もう気にすんなって先生、どのみち俺だってこのままクズ鉄堀りを続ける……」
「シッ……静かに……」
突然……俺と先生の話を、護衛の一人が制止した。何事かと思ったが……
「クロムウェル先生……もう少しで帝国の関所が見えて来ます。現在、長野共和国と帝国は休戦協定を結んでいますが、無条件で往来出来る訳ではありません」
どうやら……夜明前に国境にたどり着けたらしい。
「ああ……分かっているつもりだ」
「では……手筈通りに……」
「心得た。もう一度皆に言い含めるので……行軍は暫く休止してほしい」
さっき護衛隊の隊長だと紹介された女性が……コクリと頷いて手を振ると、護衛隊の人達が周囲の警戒の為に散っていった……
「さあ……正念場だ」
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