バフ効果検証ブートキャンプ:DAY1
――――ナント=ホール領南部山岳地帯
――――キ=タナイ地下廃都市遺跡ダンジョン
「ステハゲビーム100%!!!!」
クアッ!!!!
ピッ―――――――
激キモ種付けおじさん『キモデブ』こと俺がスキルを発動した途端に頭に温かい感覚、一瞬後に視界が真っ白になったかと思うと光の筋が目の前の光景を横一文字に薙ぎ払い、光が当たった正面の一帯が爆発する。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
いつもならパワーレベリングブートキャンプ終盤のメインディッシュになるオークリッチとオークゾンビ――かつてこの都市を守っていた亜人のなれの果ての軍団が断末魔を上げながら光の中に消えてゆく。
ゴシャァァァァァァァアアアアアン!!!!
巻き添えで光が当たった高層ビル群も一瞬遅れて轟音を轟かせながら爆発炎上、数百年の時を耐えていた強靭さが嘘のように崩壊してゆく。
まるで空爆でもうけたみたいだぁ。
現状確認の後、俺はバフ時間内にバフの計測するためにオリヴィアに憑依することになったTS転生者の相方(あの後話し合いの結果、ヴィーさんと呼ぶことになった)を連れ、俺の屋敷から600キロ南西にあるいつものレベリング会場に訪れていた。
いつもと違うのは今日はレベリングが目的ではなく効果確認が目的ということ、いつもは軍勢を引き連れての二週間遠征だが今回は少数精鋭の2泊3日旅ということ。
そんな感じで、初手最後に行くエリアに凸ってバフ中限定スキルの『ステハゲビーム』の出力100%を放ったのが今。
(すっげぇ……)
使っておいてなんだが、あんまりにも規格外の威力に一瞬固まる。
ゲーム内では数値でしかなく、エフェクトであっさり消えていった大軍団。
しかし、現実にはあの大軍団がどれだけ強いのかはよく知っている。
転生してからの半年、エリクサー増殖バグで確保したエリクサーを使った対アンテッドオンリーパワーレベリングはしたけど、それでも倒す集団はこれの100分の1にも満たない。
それでもガチの命の張り合いという感覚はあったし、必死にエリクサーをばらまいで何とかコツコツ勝利を得てきた。
しかしそんな半年をあざ笑うかのような覚醒後の能力。
軍団レベルを倒す技の威力って……こんなにすごい風景なのか……。
こんなんチートじゃん。
あ、そうだチートだったわ。
というか威力の派手さもそうだけど入る経験値もやばい。
こそこそと隠れるように小規模な集団へのピンポンダッシュを繰り返し、週一遠征でコツコツ半年溜めてようやくレベル1からレベル10。
それが勇者覚醒で生えた戦術スキル一回で今レベル19。
ピロンピロンとレベルアップ音がDDos攻撃みたいに頭の中で連続で響く。
半年間の努力あってこそのこの覚醒効果だろうし、レベル10だって男の娘勇者の覚醒後程度の強さはあるんだけど、なんかもにょる。
そんなことを考えながらゆっくりと振り返る。
そこには俺の後ろで勇者の巫女を守るために待機していた騎士たちと、勇者の巫女である同郷のTS転生者のヴィーさんがこちらを見ている。
「すごい……これが、覚醒した勇者の力……!!」
騎士たちは呆然とした表情で、しかし興奮気味につぶやく。
しかし、その目はどこかバケモノを見るような目。
慕ってはくれてるんだろうけど、それはそれとして一個人がこんな戦略兵器じみた威力持ったらまぁ引くよね。
でもその目は凹むんだけど?
騎士たちの中心で守られているヴィーさんに視線を移す。
肩から背中までガバっと開いた花魁風の巫女服。
まだ前世の感覚に引きずられているヴィーさん。
ダメかなーと思いつつダメもとでお願いしたら「モッさんもすきだねぇ」とにやにやしながら着てくれた。
なおモッさんとは俺である。おっさん呼びでもよかったんだけどTPOにそった呼び方にしようということで妥協案でそう呼ばれるようになった。
「モッさんしっかり強くて安心したわ。ヤられ損にならなそうでなにより」
そんなモッさんは満足顔で腕を組み、その上に見せつけるように大きなおっぱい載せてうなづいている。
「それだけ?」
ちょっと威力に惹かれると思っていたけど。
「あえて言うなら絵面がうるさい。でも強いのは最高」
そう言って笑顔を向けてくるヴィーさん。
最高。
メンタル回復した。
そんな感じに大天使ヴィーさんの神対応に感動していると、ヴィーさんはそのまま俺に近づいてくる。
ん?
なんだっけ?
「じゃあそろそろおっぱい補給する?」
「すりゅ」
ヴィーさんの提案に即答する俺。
そうだった、大技展開後にご褒美もあるんだった。
巫女とセックスすると発動するバフ効果。
じゃあセックス以外で男がうれしいセクハラ行為だと効果あるのか?
というのをヴィーさん発案でするんだった。
「ほい」
腕を組んだまま胸を目をつぶり、こちらに押し出してくるヴィーさん。
「で、では……」
むんずとヴィーさんのおっぱいを鷲掴みにする。
一瞬びくっとしたもののそのまますげぇ嫌そうな顔でされるがままのヴィーさん。
「あぁーヴィーさんのもちふわおっぱい最高なんじゃぁ」
嫌そうな顔もアクセントなんじゃぁー。
やっべちょっと勃つかも。
「モッさん。ステ確認」
ヴィーさんの声に我に返る。
あ、そうだったこれは検証だった。忘れてた。
「――ステータスオープン」
理性を振り絞ってヴィーさんのおっぱいから手を放し、ステータス画面を開く。
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名前:キーモ・デ=ブーデス
職業:勇者
称号:ブーデス伯爵
種族:人類
年齢:36
lv:19
-------------------
HP6000/6000
MP300/400
ATK645
-------------------
ステータスバフ:
HP:300(通常セックスバフx20)→6000
※通常セックスバフ/有効時間残り6時間24分
MP:20(通常セックスバフx20)→400
※通常セックスバフ/有効時間残り6時間24分
ATK:43(通常セックスバフx10)→430(オッパブx1.5)→645
※通常セックスバフ/有効時間残り6時間24分
※オッパブボーナス/有効時間残り30分
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「まじかよおっぱいもむだけでもバフかかるわ」
「いやオッパブってなんだよ」
予想外のバフにお届く俺と、スキル名に突っ込むヴィーさん。
「そんなこと言ったら俺の必殺技ステハゲビームだよ?」
「まぁ、そうか。頭のおかしいやつの考えたスキル名に一々突っ込んでたらきりないか」
納得したのか、そのまま護衛騎士の輪に戻っていくヴィーさん。
あぁ俺のおっぱいが。
いや、もしかしたらこれ単発ボーナスかもだしちゃんとい30分毎に確認しないとだよな。
①MP尽きるまで大技連打→②エリクサー→③オッパブ切れたらおっぱいお替り→①に戻る。
いいね、オッパブートキャンプと名付けよう。
そんなタイミングで崩壊したがれきの先から新たな敵の集団。
『メスオチ……フタナリ……ジコジュセイ……』『ハードコア……スナッフフィルム……』
めっちゃヴィーさんを狙ってるのが一目でわかる。
怯えた表情のヴィーさんと目が合う。
「モッさんGO」
「何俺の女見てんじゃ殺すぞ!」
ステハゲビーム90%!
『ンァーーー!!』
「ステハゲビーム80%!!!!」「おっぱい!」
「ステハゲビーム70%!!!!」「おっぱい!」
「ステハゲビーム60%!!!!」「おっぱい!」
「ステハゲビーム50%!!!!」「おっぱい!」
「ステハゲビーム40%!!!!」「おっぱい!」
「ステハゲビーム30%!!!!」「おっぱい!」
「ステハゲビーム20%!!!!」「おっぱい!」
………………。
…………。
……。
そうしてオッパブートキャンプ12セット目。
「ステハゲビーム10%!!!!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」
最弱の10%でも高層ビルをなぎ倒しほとんどのオークリッチが光の中に消えていく。
「あ……あ……あぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!」
その中で残った一体だけがよろよろと最後の力を振り絞ってこちらに襲い掛かってきた。
見たところHPは残り一桁程度しかないだろう。
俺はおもむろに懐からトミーガンを取り出し、構える。
一般兵が1~5ダメージを連発できる程度の兵器。
ズダダダダダダダダ!
「ああああああああ!!!!」
ピピピピピピ!
断末魔を上げてオークリッチが絶命するのと同時に、腕時計からバフ終了予定時間になるように設定したタイマーが鳴る。
「ステータスオープン」
-------------------
名前:キーモ・デ=ブーデス
職業:勇者
称号:ブーデス伯爵
種族:人類
年齢:36
lv:47
-------------------
HP580/580
MP0/60
ATK76
-------------------
ステータスバフ:
なし
-------------------
ブートキャンプ開始から6時間以上。
ステータスはバフが消えたことを表している。
それはこの巫女巫女セックスによる勇者覚醒バフの効果が着れたことを表している。
つまりは……。
後ろを振り向く。
途中でヴィーさんに負担をかけないようにスキルで呼んだマジックミラーが全面に張られたトラックからヴィーさんが出てきた。
そして親指をグイっと後ろにさして一言。
「うっし、じゃあヤるか」
そう、今回のブートキャンプにおいて、バフ消失=ヴィーさんとのセックスお替りの合図である。
「ひゃっほい!おせっせのじかんだぁ!」
このブートキャンプ、天国では?
前世でどんだけ徳を積んだらこんな体験ができるんですかね?
前世でそんなに得を積んだ覚えないんで前々世でもしかして俺ってばキリストかブッダだったのでは?
「……ちゃんとマジチンのスキルは10%にしろよ?」
ジト目でこちらをにらんでくるヴィーさん。
もちろんですとも。
それはそれとしてその目もっとしてもらっていいですか?
なんか新しい扉が開けそう。




