即席エロトラップダンジョン
ビデオが終了してから1分ほどが経過したときのこと。
空が割れた。
魔王の魔力を感じる。
空を見上げると、大気圏を焼きながら何かが突入してき、衝撃でブタペスト上空の雲が一瞬で蒸発。
青空が赤黒い渦に塗りつぶされた。
そして次の瞬間。
――ドガァァァン!!!!
轟音と共にスタジアム全体が揺れた。
空から堕ちてきた人影を中心としてスタジアムの何もかもを吹き飛ばしていく。
痴漢電車に乗っていなかったら私たちもただじゃ済まなかっただろう。
どうせこうなると思ってビデオが終了した直後にアイテムを発動していてよかった。
ケイさんや翔太さんが乗っているマジックミラー付きトラックも遠くに見えるので同じくおそらく無事だ。
そしてスタジアムだった平地、私から見て数百メートル先の土煙の中から見える人影が、ゆっくりと立ち上がる。
デコイ産アイテム『盗撮望遠鏡』をのぞき込み、人影を見る。
私の前世の妻、魔王が能面のような表情でそこにいた。
表情こそ能面なものの、目は真っ赤に血走り、髪は逆立ち、口元から涎が垂れている。
人間って怒りが限界値を超えるとあぁなるんだ。
今の魔王を人間カテゴリに入れて良いかは知らないけど。
そして徐々に大きくなる魔王が発する声。
「――――滅殺銃殺絞殺刺殺抉殺殴殺格殺撲殺斬殺焼殺毒殺撃殺滅殺銃殺絞殺刺殺抉殺殴殺格殺畜殺扼殺圧殺射殺斬殺ころすころすrころあZFvぬいshせうvgへうwsBVIUhbヴぇlwvZSあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
最後の方はもはや獣の咆哮と言っても良い叫び声があたり一帯に響き渡った。
同時に、魔王を中心として黒い霧と赤い光が地面を薄く包み込み始める。
ブタペスト全域から住民や兵士を退避させていなければ、この咆哮と瘴気だけで多数の死傷者が出ていたことだろう。
しかし、この魔王の状態は私にとっては想定通りだ。
「はい、魔王さんが到着するまでに1分15秒かかりました。今から魔王さんが静かになるまでの10倍ほどの時間酷い事をします」
まるで小学校の集会で静かになるまでかかった時間を咎めるかのような言動をする校長先生の真似をできる程度には余裕がある。
やっぱりバチ切れしてる人を前にすると逆に冷静になるっていう現象、あるよね。
そんなわけで作戦開始だ。
「じゃあ……始めようか」
そう言って私はモッさんの方を見る。
私の視線に頷いて、モッさんはひとつのアイテムを取り出す。
アクメスイッチだ。
「アクメスイッチ!!!対象:魔王!!!」
ターゲットを指定して勢いよくグーでスイッチを押すモッさん。
「ンヒィィィィ❤!?」
その瞬間、魔王の体が震え悲鳴が上がった。
魔王の腰がくの字に折れ、両手で股間を押さえる。
顔が真っ赤になり、膝がガクガク震える。
明らかに絶頂している。
つまりはHPがモッさんの1.5倍以上はないということ。
いけるぞこれ!
しかし、さすがは魔王。
「ああああああ■△▼☆!!!!」
なんか謎の呪文を途絶えたかと思うとアクメスイッチの効果を打ち破り、私とモッさんとリリムが乗る痴漢電車に向けてまっすぐ突進してくる。
「よし、フェーズ2!翔太さんケイさんGO!!」
私は電車内に転がっているコンセントに向けて叫ぶ。
これは魔族がドロップしたデコイ産アイテム「盗聴器」。
その名の通りコンセントに仕込まれた盗聴機だ。任意のスピーカーから音声を聞ける。
「「了解!」」
電車の天井スピーカーから二人の声が返ってくる。
同じものが2個別々の魔族からドロップしたため無線機として使用している。
「さぁ、殺し間にようこそ魔王」
スタジアムの芝生がもぞもぞとキモイ挙動をしながら盛り上がり、無数の光の粒子が舞い上がる。
次の瞬間には魔王と私たち痴漢電車の間にはここまでで確保した様々なデコイ産エロアイテムが発動していた。
題して『即席エロトラップダンジョン』
普段なら絶対に引っかからないだろうが、私の確保を最優先にしている理性を失った魔王であれば引っかかってくれるであろうという見込みのもと、魔族産デコイアイテムを含めて数十個のアイテムを動員した一大トラップエリアだ。
「はい、ではまず一番手!エロ触手さんGOGO!」
うねうねと地面から這い上がる触手が魔王に襲い掛かる。
モンスター的には雑魚モンスターなのだが、魅力値で攻撃力が上がるという謎仕様に基づき、この中で一番魅力値の高い翔太さん発動により魔王に瞬殺されないタフさを持つ一品だ!
地面から粘液まみれの触手が湧き上がり、魔王の体に絡みつく。
「くっ……離せぇ!らああああ!!!!」
魔王が魔力を爆発させて触手を吹き飛ばす。
うーんもう少しで穴に入れたのに惜しい!
じゃあ次!
「うあっ!?」
次の瞬間、魔王が足元の足元が崩れ、魔王の下半身がすっぽり収まる。
「次の選手は感覚遮断落とし穴さんダァーー!!!!さあ感覚がないから避けれないぞ!どうだ!?」
「あぁ、もう……!このっ!!!」
手で下半身を抜こうとしたもののすっぽりハマって動けない魔王。
これは行けるんじゃないでしょうか。
「あああああああ!!!!!弱・破壊光線!!!!」
魔王が地面に向けて魔法を放ち、地面が大きく浮き上がる。
おー地面ごと破壊することで脱出を図るか。力技だね。
しかし脱出まで無抵抗で十数秒経過している。
どうだ!?
私は魔王の股間を盗撮望遠鏡で凝視する。
地面から這い上がった魔王の股間からずるりと短めの触手が落ちた。
「よしっ!よしよしよし!!!前か後かわからんけどどっちかに侵入したぞぉ!」
触手君よくやった!
君の一歩は小さな一歩だが、私にとっては偉大な一歩だぞ!
穴に入ることの表現が一歩でいいのかは知らんけどな!!
見ると魔王の動きが少し鈍っている。
HPダメージじゃなくてあれはアクメ数値だな。
私にもあるステータスだから分かるぞ。
あれ溜まるときついんだよな。
じゃあ追加ぁ!!!
巨大な口を持つなんかキモイウツボみたいなモンスターが魔王の頭上に現れ口を開く。
丸呑みトラップだ。
そのまま頭から魔王を飲み込んだ!
「やったか!?」
どうせやってないだろうけど楽しいのでフラグを立ててみる。
「■■■■■■――――!!!!」
魔王の方向と共にはじけ飛ぶ丸呑みトラップ君。
「丸呑みトラップダイーン!!!!」
私は叫んだ。
特に思い入れもないが叫んだ。
そうしているうちに魔王は望遠鏡がなくても見える距離にやってくる。
後は大体2~3分くらいで全部のアイテムをなぎ倒してこの電車にやってくるだろう。
じゃあ次の準備をするか。
「準備するから残りのエロトラップ全開放しちゃってー!」
「「おっけー!」」
後のアイテムは割と秒殺されるものが中心だがそれでも魔王のエロ系ステータスにダメージは与えられるはずだ。
ケイさんと翔太さんにそう依頼をした後、私は着ていた服を脱いで次に使うアイテムと最後に使うアイテムを持ち、モッさんの前に立つ。
もっさんは覚悟が決まった表情でうなずき、準備を始める。
これが最後の私の策、さあ電車のドアを開けた時、お前はどうする?魔王。




