前世と転生後、私の主体は今どちら?
「神は言っている。ヴィーさんはメス堕ちすべきだと」
「2Pカラー、バフ補充終わったからモッさん食っていいぞー」
「あぁ管理者様今日は1時間で10回目指しましょういざ天国へですわ!」
「アッ――――!!!!」
セックスバフ後の入浴終わり早々にアホなことを言うモッさんに2Pカラーをたきつけ、流れる動作でバスローブを脱いで襲い掛かる2Pカラーから視線を外し、浴室から立ち去る。
襲われて情けのない声を上げるモッさん。
しかし最初は絞られてミイラになっていたモッさんだが数日で絞られてもぼろ雑巾で済むようになっている。
流石種付けおじさん。
そいつだったら魔王領侵攻後なら孕ませでもいいぞ。
頑張れ。
二人の情事の音が聞こえないようにリビングを通り過ぎ、2つある寝室の内、普段私と2Pカラーが使っている寝室に入り、そのままベットにダイブする。
「うぐっ……❤」
今回はマジチン少し強めでセックスバフを行ったので下腹部がまだかなり敏感になっている。
「ふーっふーっ……ふぅ……」
お腹に負荷をかけないように横隔膜を工夫しながら息を整え快楽を外に逃がす。
少しするとましになってきたので姿勢を仰向けに変更。
ロココ調の寝室の天井。
外からは木漏れ日が差し込み、のどかな時間。
『―――――!――――――❤』
部屋の外からはかすかに聞こえる2Pカラーの嬌声。
穏やかな空間が台無しである。
「メス堕ち……か」
モッさんの言にムカついたので2Pカラーをけしかけたものの、別にモッさんが間違ったことを言っているわけではなかった。
2Pカラー出現によって私がフィニッシュ時にぶっ刺されれば良いとほくそ笑んだのも束の間、2回目のセックスバフで同様のことをやった結果、なんと3時間しかバフがつかないという異常事態が発生。
流石にこれはまずいと私の快楽度やモッさんを何度も寸止めさせて最後に突っ込むなどなどいろいろなことをした結果、最悪な法則が判明した。
どうやらモッさんが私のオーガズムを高めた度合いによってバフの継続時間が変わるようなのだ。
思えばレズ百合プレイのサフィさんやゲイなのでイケメンであるケイさんがバッチ来いなリバさんはバフ時間が安定しているのに対し、私のバフ時間は妙に安定していない気がしてはいた。
考えないようにしていたというのが正しい。
だってバフそのものの威力は変わらなかったし。
だが、ステータス値とにらめっこした結果、セックス終了直後の私のオーガズム値とバフの時間が比例していたからには認めざるを得ない。
しかもただ快楽を高めればすぐ上がるというわけでも無く快楽度が高いセックスが継続すると徐々に継続時間が上がり、逆では数回後にガクンと落ちる傾向がある。
1回目のフィニッシュのみバフ時に気づけなかったのはこれのせい。
要は私のメス堕ち度によってバフ時間が変化するという寸法だ。
『――――――!!!――――――❤――――――❤❤――――――❤❤』
「どうすっかなぁ……」
遠くから聞こえる嬌声を無視しながらひとり呟く。
この世界に来た直後なら『冗談じゃねえ!私は乳と尻と太ももばいんばいんなねーちゃんといちゃいちゃしたいのに何で巨デブ種付けおじさんと積極的にいちゃいちゃせにゃならんのじゃ!』と叫ぶところだが、もう何回も極上の美少女を見ても『はぁーきれいだなぁ』くらいの感情しかわかなくなってしまった現在、正直後ろからモッさんの顔と体を見ずにやるくらいならば別に不快でなくなってきている。
モッさんそのものに対しても、まだこの世界をどこか他人事にとらえている私と違い、きちんとこの世界を自分のものとして捉えて悲劇を回避してなんとかマシな世界にしようともがいているモッさんの姿勢は異性としてではなく人として好ましく感じている。
いわゆる漢が漢に惚れるというものに近い状態だと自分は思っている。
まぶしい存在に対して何とかしてあげたいというやつだ。
この世界の役割として、英雄としての役目を負わさられる羽目になったモッさんだが、きちんと英雄で来ているように私は感じる。
まあそんなモッさんへの評価がなくても、想定外にディストピアなこの世界、不快感への許容の閾値は少し下げた方がよさそうだという認識は既にある。
そう、安全マージンは取っておくことに越したことがない。そのためには不本意ながらもう少しのメス堕ちも検討に入れるべき、という方向に傾いている。
今2Pカラーとモッさんがやってるであろう体液グチャグチャに混ぜて穴という穴をなめ合うようななめくじプレイは無理ではあるが、ある程度なら許容してもいいかなの気分だ。
具体的には上にまたがってする系のやつならモッさんの顔を枕か何かで隠せば行けそうな気がする感じ。
これが脳に魂がななじんできたって奴だろうか。
魂……。
「…………」
魂、ね。
完全に魂がこの身体と脳になじんだらどうなるのだろうか。
今は男の魂を構成する前世の延長線上に今の人生がある感覚だけど、魂がなじみきったら私は女で前世はただの昔の記憶になるんだろうか?
そのあたり少し気になるな。
「いまはどうなんだろう?」
もしかしで前世は既にただの記憶になってないか?
前世の記憶を思い出しても何も感じなくなってないか?
だからどうというわけでも無いがなんとなく気になってしまった。
確かめて、見るか。
前世の記憶で強い感情と紐づいてる記憶……何かあったかな。
……妻関係かな。
前世で人に無頓着な私でも妻が私に執着してるのはよくわかるくらいには妻は私に執着していた。
そんで、なんかのきっかけで浮気を疑われた時、特に凶器とか持ってるわけでも無い妻にマジで生命の危機を感じたことが何回か。
よし、ちょっと脳内前世妻を呼び起こしてシミュレーションしてみよう。
妻が本気で怒りそうなネタ……今の私がモッさんにメスオチしてるところを脳内仮想妻に見せてみよう。
『ふーん……「死がふたりを分かつても」って私は言ったのに死んだ程度で浮気するんだ?へー?』
ゾク。
い、いやほら。浮気っていうか。必要に迫られて、ね?
私も不本意な訳でして。それにほら、相手男だよ?
『余計ムカつくなぁ……』
ダメですか?
『ダメだね。ギルティ』
怖くなってきた。シミュ止めようかな。
あ、でもこの妻はあくまで私の想像な訳でこっちまで来れないわけで怖くないぞ。
『そうかな?私は君を捕まえた時に言ったよね?もう逃がさないって』
ひぇ。
『ちょっとまっててね。すぐ行くから』
心臓の鼓動がドドドドドドと急にデスメタバンドのドラムみたいな動きをする。
「やめやめやめ!!!!!」
手をぶんぶん振って脳内シミュレーションを強制終了する。
なんか脳内妻が勝手に動き出した気がする。
こわ。
怖!
でもよし。ちゃんと前世由来の恐怖心は感じれたな。
あれは純粋100%妻がぶちぎれた時の背筋の寒さだ。
いやーまだ前世の魂は強いみたいだね。
今の身体になってからまだ一か月も経ってないもんね。
安心安心。
……前世の妻について考えるのは心臓に悪いからしばらくやめとこう。そうしよう。
あ、メス堕ち許容どうすっか……。
まぁ、流れでいいや。




