もう全部モッさん一人でいいんじゃないかな?
「うっわ」
「ひぇ」
「カンストステータスは知ってたけど、これは……目の前にするとすごいな」
「もう僕モッさんだけでいいと思うな。はい終わり!閉廷!終了!解散!僕は家に帰ってサフィとグチャグチャポリネシアンセックスする予定があるから帰っていい??」
リバさん、サフィさん、ケイさん、翔太さんの順番にモッさんのステータスを見てドン引きする。
開示された勇者側のステータス翔太さん1:ケイさん10:モッさん800くらい。
翔太さんとケイさんはカンストしていないとはいえ、モッさんのあまりのステータスの圧倒差に唖然とするほかない。
そりゃあ原作では翔太さんやケイさんの時はデコイとアイテムが必須になるわこれ。
「まーこれなら魔王のスペックが多少上振れしてても楽勝だぁね」
モッさんのステータスを改めて確認して楽観論を述べるケイさん。
「じゃあ僕は商会に戻って――」
「お前はスキルの関係で今回魔王城同行は必須だからダメ」
「ちぇー」
あきれ顔のケイさんにぼやく翔太さん。
「話を戻すぞ。モッさんのバフ前ステータスは原作とかねがね変わらないな……とすると自分と翔太のカンスト数値も同じとみて良いだろう」
「カンスト後のバフあり基準で僕7:ケイ59:モッさん300ってところだね」
「ねえやっぱ僕魔王城凸しなくていいんじゃない?戦力にならないよこれ。魔王城って上級兵で1、四天王クラスで30、魔王で150だよね?」
「お前は一回攻撃回避できる魅了スキルがあるし、自分は対個人範囲攻撃スキルや対女性敵への足止めスキルがあるからつゆ払いと攻撃妨害に必須だってここに来る前に言ったろうが」
「そうだったっけ?そうだったかも」
「おまえな……」
冗談を言える程度には余裕があるということだろう。
「勇者3人で魔王城に凸するときの役割としては翔太さんが一度魅了スキルで相手のターンをスキップさせ、その間にケイさんがつゆ払い、最後にモッさんがピンポイントで斬首という流れ?」
「基本その流れでいいと思いますヴィーさん」
その流れであっているかをぼろ雑巾状態でまだ役に立たないモッさんの代わりにケイさんに聞いてみると、その認識で合っているよう。
あとは魅了スキルは万一の際の若干の足止めにもなるようなので、不測の事態があった際の撤退プラン用としても翔太さんは必須のようだった。
ちょっと何僕いらないよねとか言ってるんですか翔太さんん、
逃げ札一回分とか超重要じゃないですか。絶対逃がさんぞ。
「とりあえず、今の通常バフ後ステータスなら魔王戦も確実に勝てるってことであってる?」
「大体そう考えてくれればいい。もちろんダメージの入り方とかによって油断できるものじゃないけど、今入ってる四天王までの情報だと、敵側戦力は原作通りと考えて差し支えない。とすれば、多少戦い方の推移が変わっても正面突破の短期決戦で十分対応可能だね」
リバさんがケイさんに纏めを聞き、勇者のスキルについては現状で十分勝算があるということで結論がまとまる。
「じゃあ巫女側のスキル確認……といってもスキルがあるのはヴィーさんだけなんだが、この、傾国の美女Lv3って元からあったの?」
「屋敷に戻る途中に見つけたスキルっすね。モッさんにスキルを強制発動させられる……何の意味が?」
ケイさんの質問に事実をそのまま返答する。
代理で発動って相手がNPCとかでアホタイミングでスキル発動するとかを頭抑え込んで変えるくらいの用途しかないのでは?
「巫女のスキルで勇者に関連するものは原作だと勇者の意思やMP関係なく発動できたから結構重要。MP枯渇したときの最期の一手としての最終カードになる」
思った以上に強いスキルだなこれ。
HP1で即死回避できるスキル並みには強いじゃんコレ。
「じゃあ最後に2Pさんの確認をするぞ。……この撮影Lv1と都市管理特権管理者権限ってのはどこまでできるんだい?」
「撮影スキルは普通にカメラなしで写真が撮れるだけのスキルですわね。多分わたくしが元々都市管理システムだったから都市内の状況を把握する監視システム関係でついたスキルじゃないかと思いますわ」
「ふむ、もう一つの都市管理特権管理者権限は?」
「都市管理特権管理者は、現存アーコロジーの内、ヴェスプッチ大陸――現人類が新大陸と呼んでいる326都市と旧大陸――人類統一帝国に属する大陸にある19都市すべての操作権限を有しておりますわ。管理者様に一言いただければこの都市に居住するすべての不法滞在者を24時間以内に排除可能ですわ」
ケイさんの質問に物騒な返答をする2Pカラー。
何回止めても収まらないその殺意は何なの?前世の初期KKKだってもう少し殺意抑えてるぞ?
「ぐ、具体的に何をするつもりだい?」
頬を引きつかせながら深堀をするケイさん。
止めといたほうがいいのに……。
「都市循環空調の一酸化炭素濃度循環装置を停止し、処理前の一酸化炭素含有ガスを居住区画に開放すれば計算上は3分でアーコロジー内一酸化炭素濃度は1.68%になりますわ、そのうえで――」
「はいこの話やめ!ジェノサイドの片棒は絶対かづがないからね……!!!」
「もごもごもごご…~~~……あぁー管理者様の大きな手に包まれて顔が幸福ですわぁー」
すらすらとジェノサイド計画を話し出す2Pカラーの口をモッさんが手でふさぐ。
顔を塞がれた2Pカラーは抵抗するでもなく恍惚顔。
無敵かお前。
「あ、モッさん生きてたんだ」
「正直起きるのもきついけどね……で、ケイ。俺は断固ジェサイドには加担しないよ。可哀そうは抜けないの!」
手を罰点にして断固拒否のジェスチャーをするモッさん。
「そんなお前にいいニューと悪いニュースがある……どっちが聞きたい」」
それに対して片手で頭を抱えながらモッさんによくある二択を伝えるケイさん。
「いいニュースだけ聞きたい」
止めておけばいいのに悪あがきを試みるモッさん。
「悪いニュースは元老院がな――」
「いいニュースからでお願いします!」
「……ゲーム原作基準の数値を基にした場合、モッさんを魔王城に凸させて数日内に攻略できれば、全戦線での大侵攻前の領土回復までにかかる期間は2か月、魔王軍占領地域の全開放まで3か月で行ける」
「本当か!それだったら原作の胸糞イベントの8割は回避できるじゃないか!!!人家具も、人間牧場も、人肉缶も、脳コンピューターも全回避!いいじゃん!希望が見えてくるね!!」
ぱっと明るい表情になり物騒なワードがモッさんの口からポンポンと出てくる。
ワードを聞くだけでろくでもないことが想像できるイベントがポンポン出てくるのほんと何なの?
転生してから突っ込みっぱなしでそろそろきついんだけど?何か?身体は突っ込まれっぱなしだからそこでバランス取るとかそういうのか?
「じゃあ初手亜人のアーコロジーを人質に取って不可侵締結した上での全員で魔王城凸のプランC案そのままでいこうそうしよう!」
「僕もそれでいいと思う。それならこの案で元老院に提示する?」
「それなんだがな、悪いニュースの方にかかわってくるんがが……そのままだと多分通らない」
「どういうこと?」
「貴族連中、特に人口密集地域の高位貴族どもが亜人領に色気出し始めた。多分2Pちゃんの情報が知られればもっと悪化すると思う」
ケイさんの言葉にモッさんと翔太さんが『あー』と声をハモらせる。
「ここでかー……」
「政治家って余裕出るとすーぐ色気出すんだから……」
「で、その対策を話し合いたいんだ……」
コンコン
そう言ってケイさんが話を続けようとすると応接室の扉からノック。
「入っていいよ」
モッさんが声をかけると初老の男性、確か屋敷の執事だったろうか――が入ってきて来客を告げる。
「勇者様方。元老院より緊急の招集です」
「ちょっと時間切れみたいだね。残りは帝都に向かう移動中に話そう」
少しうんざりとした表情で、ケイさんが話を締めた。




