イケメン勇者と男の娘勇者
屋敷に戻ると重要な来客が待っていたようで、モッさんは私と2Pカラーを連れて応接室のドアを開ける。
応接室に入ると書斎机の前の方のソファーに男女2人が座っており、その手前にある丸テーブル脇のソファーにもう2人の女性。
「やぁ二人とも待たせたね……って何その視線」
入るなり、男1人と女3人の来客は私と2Pカラーを見て驚きの表情を浮かべる。
「人体錬成は一生に一度だけって教皇猊下にも約束したじゃないですか。お替りするとか……何考えてるの?」
「あーあー僕知らないー」
そして来客に物騒な疑いを掛けられるモッさん。
ウケる。
「諭されたのか洗脳されたのか……どっちにしても君には失望したよ」
来客のうちの一人、整った顔の青年政治家のような雰囲気のイケメン男性が諦念口調でモッさんに吐き捨てるように言う。
「やってないからね!?この子は人体錬成産じゃないからね!?」
「僕と一緒に教皇猊下に自首しよう?今なら火あぶりで済むと思うから」
もう一人の来客も完全にモッさんを確定有罪扱い。
こちらは男装の令嬢みないな風体、ジト目でハスキーボイスで諭している。
なぜか見るだけでめっちゃキュンキュンする見た目なんだがどういうこと?
「俺は無罪!信じて!?あとあの火あぶり死ぬほど痛いんだよ!?」
いや火あぶりにされて死なんのかい。
というか一度火あぶりにされたような口ぶりだけど何したんだお前。
帰宅早々の頓珍漢な状況に頭が痛くなる。
そもそもこいつら誰なんだって話で。
……そういえばほかの勇者ってイケメンと男の娘だったな。
こいつらか?
「……この4人は?」
モッさんを詰問&諭している推定勇者二人とこちらを怯えた目線で見つめる女性二人を見ながらモッさんに問いかける。
「うん、残りの勇者と巫女。ちょっとプランCについて話したかったから伝書鳩で呼んだんだ」
「ほぉーん」
とすると丸テーブルの方にいる二人は巫女か。
片方は青髪のサイドテールな少女、もう片方は赤毛をポニーテールにした陽キャな雰囲気を感じさせる少女。
どちらも私には劣るがかなり整った容姿をしている。
特にポニテの方の少女は私よりも胸でかいんじゃないか?
私と同じでTS転生なのだろうか? それとも普通の転生? 原作キャラ?
「……ひっ!」
「あ、アタシはデコイにしても効果薄いわよ!?」
そんな私の視線を値踏みと捉えたのか、硬直して涙目で悲鳴を上げるサイドテール少女となにやら命乞いのようなことをのたまうポニテ少女。
あれ?もしかして私元キャラの悪鬼羅刹だと思われてる? なんで?
「デコイ?あぁアイテム錬成後の廃棄物のことですわね?あれは触媒側のスキルはあんまり重要じゃないので今のあなたでも問題なくってよ」
「ひぃ!こっちだった!?」
「やっぱりキモデブ悪落ちしてるじゃない!?金髪の方がオナホ令嬢でしょ!?」
2Pカラーの言葉に反応して悲鳴を上げるサイドテール少女、2Pカラーの方を指さして震えながら叫ぶポニテ少女。
あー……髪以外同じだからどっちかが転生者でどっちかがオナホ令嬢だと思われてるってことか。
まぁ結構現実だとゲームと細かい差異あるみたいだし、そういう展開もあり得るか。
「してないよ!?金髪はキ=タナイ地下廃都市遺跡ダンジョン管理システムの擬人化存在だよ!?」
「そんなわけあるかい!」
「さすがにもうちょっとこう、言い訳を取り繕ったほうが良いんじゃないの?」
「ほんとだよ!?」
イケメンが勢いよく突っ込み、男の娘の方がないわーとドン引き。
そうだよね。
あの場に居なかったら私も同様の反応を示すと思う。
「そんな事よりわたくしお二人に聞きたいことがありますの!よろしければ一緒に入浴などいかがかしら?」
「た、助けて翔太君!!!」
「ケイさん今ならぎりぎり逃げれるでしょうそうしよう!?」
2Pカラーの提案に何か危機を感じたのか、男の娘勇者に助けを求めるように手を伸ばすサイドテール、イケメンに逃げる算段を提案をするポニテ。
ふーむ。
つまり男の娘↔サイドテール、イケメン↔ポニテって組み合わせみたいだな。
でも逃げるって言ってもねポニテ巫女さん?
「うちのモッさんカンストしてるから精子を推進材にして旅客機の速度で追っかけてくるけど逃げれるの?」
ギャグみたいなスキルだけど逃げれるかって言ったら多分無理では?
「死ぬんだぁ……」
「せっかく女の子に転生したのに……儚い人生だった……」
泣いちゃった……。
私の残酷な宣告に絶望して観念する巫女二人。
ポニテの方はTS転生確定っぽいな。
どっかのVtuberみたいなこと言ってるサイドテールの方はまだわかんないなぁ。
「あら自裁なされますの?それなら脳死後に体の方の有効活用をしてもよろしくて?」
そして2Pカラーは二人の様子を理解できないのか、倫理観ゼロな提案をしている。
「「ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ」」
もう何も言う気力も残っていないのか巫女二人は手を取り合ってがたがたと震えるだけの存在になってしまった。
「よろしくないからちょっと黙ろうな?」
「わかりましたわー!おくちチャックですわ!」
このまま美少女が美少女を無自覚に追い詰めているシチュエーションを楽しむのもよいが、放置していると後々恨まれそうな気もするのでゴーイングマイウェイな2Pカラーをたしなめ勇者二人の方に視線を移す。
「そっちのイケメンと男の娘も遊んでないで自己紹介とかしてくれない?」
「半分くらいは本気なんだけど」
「同じく」
「……自己紹介後にステータス開示したらわかることっすよね?もし私かこの2Pカラーのどっちかがオナホ令嬢でモッさんが悪落ちしてるならアンタら詰んでるんだから、はよ」
「……わかったよ。じゃあ僕から。僕は少弐翔太。年齢は17歳。ゲームで言うところの男の娘勇者。担当は経済で大商会の御曹司兼アイドル。冒険者部隊は僕が率いるよ」
「自分はケイ・コクガン。年齢は31歳で担当は政治。庶民院議長兼人類統一軍元帥を拝命しています。正規軍は自分が率います」
「紹介どうも。じゃあ潔白の証明がてら私と2Pカラーのステータスを開示するよ。おい2Pカラー、ステータス開示して」
「わかりましたわお姉さま!!――ステータスオープン」
ほい、ステータスオープン。
次回は巫女と主人公と2Pカラーのお風呂女子会です。




