窓際クランの新人戦4
二万PV達成しました。ありがとうございます。
皆さんへの感謝の気持ちを込めて、本日は二話更新します。
こちらは一話目です。
アルティナは二十一体目の大型個体を狩るために移動していた。
時間を確認すると、後四十分を切っていたので、一緒について来た女の子に声をかけた。
「そろそろ後半になったし、君のポイントも稼いだ方がいいかな?」
「いえ。大丈夫です」
アルティナは走りながら少女に笑いかけた。
「でも、ゼロポイントだと君も困るだろ?」
「それはそうですが・・・」
少女が少し迷っていると、ギルド職員がすっとアルティナたちに近づいて声をかけて来た。
アルティナは今までなかったことに少し驚いた。しかし、その驚きはギルド職員の次のセリフで納得へと変わった。
「アルティナ様の順位に変動が発生したので報告します」
「ま、まさか!」
少女は驚きに目を見張ったが、アルティナは楽しそうに笑っていた。
「はは。もしかして、『紅の獅子』かい?」
ギルド職員は嬉しそうなアルティナの様子を不思議に思いながらも、アルティナに対して返事をした。
「は、はい。『紅の獅子』のレイラさんが先ほど2005ポイントを超え、現在単独首位です」
「ははは。さすがだよ。ユーリ」
アルティナは本当に嬉しそうに笑った後、気を取り直したように顔を上げた。
そしてパーティメンバーの少女に向かって言った。
「あまり時間はないから、手早く数匹倒そう」
ちょうどその時、通路の先にはぐれのマッドフィッシュが現れた。
しかし、パーティメンバーの少女は迷わず一つ前の通路を曲がった。
「アレ?さっきのモンスターを倒さないのかい?」
「アルティナ様の首位が優先です!」
少女は強い意志のこもった瞳でアルティナを見返した。アルティナは困った子でも見るように少女を見た。
「でも、君も困るだろ?」
「大丈夫です!私も貴族に連なるものです!最後には政略結婚することになるんですから!」
彼女は貴族の子女として探索者をやっている。たしかに、今後、政略結婚をして、探索者はそう遠くない未来に引退することになるだろう。それでも、探索者としてのキャリアがあるかないかで嫁ぎ先は変わってくる。
アルティナは説得のため声をかけようとして彼女の強い意志を含んだ瞳と目があって、一瞬たじろいだ。
「アルティナ様は私たちのヒーローなんです!ここで足を引っ張ってしまえばこれから先、ずっと後悔します!」
アルティナは今までずっと一人で戦ってるつもりだった。でも、彼女のように支えてくれている存在は沢山いた。自分の実績は自分だけのものじゃない。それに気づいて、自嘲気味に笑った。
「確か、アンジェだったよね?」
「は、はい!」
アルティナはアンジェと目を合わせた。アンジェは顔を真っ赤にしてこくこくとうなづいた。
「アンジェ、申し訳ないんだけど、今日は僕に付き合ってくれるかい?明日以降のことは僕がなんとかするよ」
「はい!よろこんで!」
アンジェが満面の笑みでそう答えると、アルティナはすっとアンジェのすぐ後ろに移動して、アンジェを抱きあげた。
「アンジェ、ちょっとごめんよ」
「きゃ!アルティナ様!?」
アンジェはお姫様抱っこの形でアルティナに抱えられ湯気でも出そうなくらい真っ赤になった。
「全力で走ろうと思ってね。ギルド員さんは申し訳ないけど、僕に捕まってくれるかな?」
「いいえ、いくらアルティナ様と言えど、ギルド職員が新人についていけないことはありません。ご自由に行動してください」
ギルド職員は当然のようにそう答えるとアルティナは笑顔を見せた。
「そうかい?じゃあ、行くよ!」
そう言って、アルティナは今までの10倍以上のスピードで駆け出した。
「うそ」
少し遅れるようにしてギルド職員が必死の形相でついづいした。
***
実況席ではルナがテンション高めに実況していた。
「おっと!アルティナ様がパーティメンバーを抱えて走り出したぞ!」
驚いた様子のルナとは違い、アルフレッドなその様子を納得したように見つめていた。
「アルティナも本気だな。これは勝負がわからなくなってきたぞ」
アルフレッドにつぶやきを聞いてルナはぐるりとアルフレッドの方を振り返った。
「そうなんですか?」
「あぁ。彼女の一番の強さはその破壊力ではなくスピードだからな」
二人がそんな話をしているうちにもアルティナは大型個体の部屋へとたどり着いた。
「おぉーっと!!もう大型個体の部屋についたようだ!」
「予想より早いな」
アルフレッドは何度か道に迷うため、大型個体の部屋にたどり着くのにもう少し時間がかかると思っていた。しかし、大型個体部屋まで一直線に来た。アンジェの誘導がうまかったのだろう。アルフレッドは声には出さなかったが、心の中でアンジェの評価を一段引き上げた。
「アルティナ様早い!!どんどん大型個体を倒していくぞ!!深層組のギルド職員がついていくにがやっとだ!」
画面の向こうでは、どんどんアルティナが大型個体を倒していく。そしてついに、レイラのポイントをアルティナが上回った。
「残り二十分にして再び逆転!これは勝負が決まったか!?」
「そうだな。このままだと『紅の獅子』のレイラに勝ち目はないな」
アルフレッドはユーリたちの映像をじっと見つめていた。そんな彼の様子を不審に思い、ルナはアルフレッドに声をかけた。
「おや?アルティナ様贔屓のアルフレッドさんがどうしました?」
「いや、ここまでやったやつがこれで終わるとは思わなくてな」
画面の中でユーリたちは立ち止まり、作戦会議をしている様子だった。




