窓際クランの決戦当日2
ユーリたちが探索者ギルドに入った頃、大広間の大水晶版が起動していた。
そして、その大水晶版には一組の男女が写っていた。その女性の方がテンション高く話し出した。
「皆さん。今年もやってきました!国王主催。探索者ギルド協賛の新人戦です!」
新人戦の実況だ。数年前から、ただ探索者の様子を見ているだけではわからないと言う国民の声を聞いた国王が大手クランに声をかけ、実況と解説役を用意したのだ。国民にも好評なため、毎年選定されている。
実況の女性がポーズを決めながら言った。
「実況は私。『月下の羊』のマドンナ!探索者みんなのアイドル。ルナちゃんです!」
『月下の羊』は中堅クランで、クランメンバーが美男美女ばかりであることで知られている。王都内外で探索者のイメージアップのために呼ばれるのは大体このクランだ。
「そして解説は?」
「どうも。『金色の麒麟』のクランマスターのアルフレッドです」
解説役は毎年前年の魔石採取量が最も多かったクランのクランマスターが行う。クランマスタークラスの人なら新人の動きの解説は誰でもできるので、魔石採取量一位のご褒美的な意味が一番大きい。
そして、ここ三年は『金色の麒麟』のクランマスターがこの場に呼ばれていた。
実況と解説役の紹介が終わると、今度は新人戦のルールが書かれた紙が大写しになった。
「はい。例年通り、この組み合わせでやっていこうと思います!まず、ルールの説明です」
ルールは以下の通りだ。
・協会側の決めたポイントからスタートする。
・探索によって倒したモンスターの数で競う。
・モンスターは一体倒すごとにその階層数と同じポイントが探索者に付与される。
・大型個体は普通個体の10倍のポイントを付加される。
・ポイントが入るのは最後にとどめを刺した探索者とすると。
・集計はパーティについていくギルド職員が行う。
・期間は午後一時から三時間
ルール説明が終わると、実況と解説の二人が写った。
「皆さん?ルールのおさらいはできましたか?それでは注目選手を紹介していきましょう!アルフレッドさん。誰が優勝すると思いますか?」
今まで厳しい顔をしていたアルフレッドが表情を崩した。
「そんなの、うちのアルティナに決まってる。あの子は可愛いし、強いし・・・」
どうやら、アルフレッドもアルティナのファンらしい。ルナはしばらくの間気持ち悪いアルフレッドを見ていたが、話が進まないと思ったのか、アルフレッドの一人語りに割り込んだ。
「あー。おーい。戻ってきてくださーい。だめだこりゃ。まぁ、そうは言っても、アルティナ様がダントツで強いので、優勝はおそらく、アルティナ様ですね」
ルナは横で語り続けるアルフレッドを放置して、話を進めた。しかし、職業意識が残っていたのか、アルフレッドはハッとしたような顔をして咳払いをした。
「おほん。そうだな。今回は本気らしいしな。普段連れてる取り巻きも今日は一人しか連れていない」
「うわ。戻ってきた!まあいいや、そうですね。では注目ポイントはどこだと思いますか?」
アルフレッドは威厳を取り戻すように腕組みをして厳しい顔をした。今更な気もするが。
「そうだな。毎回、この新人戦では、五階層の大型個体を何体狩れるかが肝になってくるそれは知っているよな」
「そうですね。一番ポイントが高いですもんね」
五階層の大型個体が一体で50ポイントと最高のポイントが取れる。
「そうだ。それに、大型個体はいる場所がわかっている。だからこそ狩りやすい」
大型個体は何もしなければ移動しない。そのため、発生する場所に行けば戦うことができる。
「本来は場所がわかっているため、先回りして狩ってしまうと言う妨害ができるのだが、アルティナは戦闘時間がほとんどない。先回りし続けるのは難しいだろう」
「なるほど。じゃあ、アルフレッドさんは他のパーティはアルティナ様を無視して全然別の場所で狩りをすると予想してるんですね?」
アルフレッドは大きくうなづいた。
「そうだ。今回五階層に行くパーティはおそらく5つ。いつもより多い。それでも、五階層全体からしたら十分に余裕がある。みんなバラバラのところで狩りをするだろう」
ルナは手元にある資料を確認した。先ほど入ってきたエントリー表の最新版だ。パーティメンバーの位階が五以上のパーティは五つあった。
「今年は多いですよね。いつも二大クランで一つづつだったのに」
「そうだな。今年はいつもに加えて、アルティナと窓際クランと『クロネコ』から一つづつだ」
ルナは資料を確認して大きく目を見開いた。五つのうち二つが中小クランのパーティだったからだ。
結局、ミミたちもユーリのアドバイスで位階が五に上がり、ジャイアントシーホースを問題なく倒せるようだったので、五階層で新人戦に参戦することになっている。
「アルティナ様はまだしも、他の二つは予想外でした」
「そうだな。特に『紅の獅子』の方は三ヶ月前に結成してこれだからな。何か秘密があるんだろう」
アルフレッドは目を細めてユーリ、フィー、レイラのパーティを見つめた。
「そうなんですか!?ある意味注目のパーティですね。もしかしたら、優勝しちゃうかも?」
「ははは。流石にそれはないだろ。所詮色物だよ」
肩をすくめてアルフレッドはそういった。大広間からもいくつかの嘲笑が上がった。
この時は誰も、ユーリたちの快進撃を予想していなかった。
説明回です。ちょっとルールを明確にしておいたほうがいいかと思い、入れました。
そこまで細かくやるつもりはないです。




