窓際クランの決戦前日2
レイラがユーリを追い越してクランハウスの扉を開いた。そして、リュウの方を振り返った。
「・・・とりあえず中にどうぞ。お茶くらいは出します」
「おぉ。悪いな」
リュウがレイラの後をついてクランハウスに入ろうとした。しかし、フィーがそれを見て黙っていなかった。
「レイラもユーリも何こいつと仲良くしてるのよ!!」
「・・・もう、過去の清算はした」
レイラが淡々とそう言うが、フィーは納得できていないようだ。ユーリもレイラに同調するようにフィーをなだめに入った。
「そーそー。今はお世話になってるわけだし」
「そうだけど!」
ユーリはフィーをいつでも止めに入れるようにフィーとリュウの間に立った。リュウに手を出してしまえば怪我をするのはフィーの方だと言うことは分かり切っていた。
「長く苦しめられたフィーに思うことがあるのはわかる。でも、俺の顔を立ててくれないか?」
「あーもう。しょうがないわね。なんか私がわがまま言ってるみたいじゃない!」
レイラは首を傾げた。
「・・・みたいじゃない。フィーはわがまま言ってる」
「なっ!」
三人の様子を見て、リュウは思わず笑い出した。
「はっはっはっ。やっぱ、おめぇらおもしれぇわ」
「あんた何笑ってんのよ!」
ついに掴みかかろうとしたフィーをユーリは羽交い締めにして止めた。
「フィー。流石によそのクランマスターにそれはどうかと思うぞ?」
「いいのよ!私もクランマスター代行だから」
「そうは言ってもなー」
リュウは一通り笑った後、フィーの方を見た。
「代行の嬢ちゃんはそっちの魔術師の嬢ちゃんが俺のことを歓迎してると思ってるのか?」
「だったら何よ!」
リュウはニヤリと笑った。
「それは違うぜ?だって、そっちの嬢ちゃん絶対むちゃくちゃ熱いかめちゃくちゃ渋いお茶を出そうとしてたぜ?」
ユーリがレイラの方を見ると明らかに瞬きの回数が増えていた。どうやら図星だったらしい。
リュウはレイラのほうを見て笑顔のまま言った。
「超えてきた修羅場の数が違うんだよ」
レイラは少し悔しそうな顔をしていた。それを見てユーリは大きくため息を吐いた。
「はぁ。とりあえず中で話しましょう。フィーもレイラもまさかクランハウスの中にも入れたくないとは言わないよな」
フィーとレイラが渋々と言った感じでうなづいたので、ユーリはリュウをクランハウスの中へと案内した。
***
リュウとクランハウスのロビーでテーブルを囲んだ。
しばらくすると、奥からレイラが人数分のお茶を持ってきた。明らかにリュウの前に置いたお茶は沸騰している。火の魔法で器ごと温めたのかもしれない。その上、色がかなり濃い。言い当てられたので、暑くて渋いお茶を持ってきたらしい。
ユーリが自分のカップとリュウのカップを取り替えようとすると、リュウはカップに入ったお茶を一気に飲み干し、レイラの方を向いてニヤリと笑った。レイラはそれを見て一瞬悔しそうな顔をしたがすぐにいつもの無表情へと戻った。
ユーリがため息を小さく吐くと、リュウは今度はユーリの方を向いた。
「で?調子はどうだ?」
「まぁ、ぼちぼちってところです」
肩をすくめながらユーリがそう答えると、リュウの目に力が入った。ユーリは姿勢を少し正した。
「勝算は?」
「七割。と言いたいところですが、良いところ五分五分ってところですかね」
リュウは驚いたような顔をした。
「ほー。五分五分まで上げたか。やるな」
リュウさんは懐から一枚の紙を取り出した。それをテーブルの上に裏向きでおいた。
「じゃあ、頑張ってるお前たちに入れからのプレゼントだ」
「これは?」
ユーリが紙を手にとって表を見ると、そこには名前がつらつらと書いてあった。その中にはユーリやレイラ、フィーに加えてアルティナの名前もあった。フィーとレイラもユーリの横から紙を覗き込んだ。
名前の横にはなんの意味があるのかわからないが数字が書かれていた。一瞬位階かと思ったが、値を見てすぐに違うとわかった。ユーリやフィーに50というすうじがついているうえ、アルティナは1以下になっている。
「明日のエントリー表だ。あとはオッズだな」
「オッズって!?賭け事をしているの!?」
フィーは大きく目を見開いてリュウの方を見た。彼女にとって新人戦で賭け事をすると言うのが考えられないことなのだろう。
ユーリやレイラにとってはさもありなんという感じだ。注目されるイベントな分賭け事は盛り上がるだろう。
「まぁ、ずっと続いてる慣例みたいなもんだ」
「まぁ、当然ですが、うちの倍率はすごいですね」
三人ともオッズが10倍を大きく上回っている。よく読んでみると、掛け方も小さい字で書かれていた。掛け方に1位2位を当てるものもあるようだ。
「そうだ。お前らが健闘してくれれば俺らが儲かる。2位でもボロもうけ、1位をとってもらえれば丸儲けって感じだな」
レイラが顔をあげてるいいの方を見た。
「・・・リュウさんが元締めってこと?」
「そうだぞ。こういうのは元締めが一番儲かるからな」
ユーリとフィーも顔をあげてリュウの方を見た。リュウは悪そうな顔で笑っていた。
「サイテー」
フィーがそう言うと、リュウはにやりと笑った後、席から立ち上がった。
「まぁ、そういうことだから、頑張ってくれ」
そう言い残してリュウは手を振りながら帰って行った。
ユーリは色々理由をつけていたが、リュウは純粋にユーリたちを激励するためにきてくれただけのような気がした。まあ、フィーもレイラも否定するだろうから口には出さなかったが。
ユーリもここ数ヶ月でだいぶ賢明になったのだ。
1日1000PV &ブックマーク50件突破しました!
皆さんありがとうございます。今後も頑張っていきます。
ということで、感謝の意味も込めて今日はがんばって二話投稿したいと思います!
間に合わなかったらごめんなさい。




