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幼少期

次の日僕は仲の良い友達というか、悪友というか、気の良い仲間3人でいつも集まって遊んでいた。

一人はセナ・ウィリアムズ、この島の漁師の息子で男3人兄弟の末っ子で、将来はこの島を出て冒険家になるのが夢らしい。

もう一人はアイリ・テイラー、この島の農家の娘で四人の兄弟姉妹の三番目、将来は僕達が怪我しても直せるようにシスターになりたいそうだ。


僕は待ち合わせの広場にある大きな木の下に向かっていた。

家を出て、いつもの道を走っていく。

既に二人は待ちくたびれたように、広場にある椅子に座り込み楽しそうに話をしていた。


「ごめ~ん、待った?」


「遅いぞ、レン」


「待ちくたびれちゃったじゃない」


「時間通りだと思うけど…」


「せっかく遊びに行くのに、早く行かないと時間が勿体ないだろう」


「そうよ、ただでさえレンは、なかなか遊んでくれないのに早く行きましょ」


「それは悪かたったな、僕もいろいろ忙しくて」


「で、今日はどこに行く」


「そうだな、この前は森で遊んだから今日は海に行くか」


「賛成~、それじゃ早速レッツゴー、一番遅かった人が罰ゲームね」


そう言うと先に走り出すアイリ。


「ずるいぞ、アイリ」


「それはないよ、アイリ」


「ハンデよ、ハンデ、か弱い私が負けないように」


「何言っている、足はアイリが一番早いじゃないか」


「気にしない、気にしない、早く追い付いて来て」


いつものように海へと続く下り坂の道を走っていく。

海に着くと貝やウニ、アワビにサザエを捕ったり、釣りをして魚を釣り上げ、それをそのまま浜辺で焼いて食べるのが習慣となっていた。

多く捕りすぎた分は、家に持って帰るようにしていた。

いつもの光景、いつもの時間が過ぎていたがその日は違っていた。

一通り食べ終わり、遊び疲れて木の木陰で休んでいると、突然、


『カン、カン、カン』


鐘の警報が鳴っていた。

僕はどうしたのだろうと思っていたら、アイリが


「あれは魔物が来た合図だわ」


「え、魔物、この島に魔物なんか来るのかよ」


確かにセナの言うとおり、僕が生まれてから今日まで魔物なんて来たことなかったが、本当に魔物だろうか、何かの誤報かも知れない、そう思っていたら、


『ドドーン』


何かの爆発音が聞こえた来た。


「やっぱり魔物よ、あそこ」


アイリが指差す方向、山の中腹辺りに煙が立ち上っていた。


「本当に魔物かよ」


「早く逃げないと」


「あそこ、私の家の近く…、家族が気になるからちょっと行って来るね」


そう言うとアイリは走り出していた。


「アイリ」


「戻れ、アイリ」


アイリには届かないのか、山に続く道を駆け登っていた。


「どうする、レン」


「どうするって…、友達だから追いかけないと」


「だよな、よし追いかけよう」


僕は父さんから借りているお古の剣があるのを確認し、背中に担いでアイリの跡を追った。

登っている間にも、爆発音が二回ほどあったが、僕の家族は大丈夫だろうか。

魔物だったなら、父さんとクリスさんが退治してくれるだろうから、騒ぎはすぐ収まるだろうと思っていた。

登り坂を登っているときも、逃げ出す人とすれ違ったが、僕と友達の家族はすれ違わなかった。

道は何本もあるから違う方向に逃げたのだろう、そう思いたかった。


坂を登り、アイリの家が見えてきた。

アイリの家に着いた時、丁度アイリが家から出てきた所だった。


「私の家族がいないの」


アイリは泣きながら、家族の名前を叫んでいた。


「きっともう安全な所に逃げたんだよ」


「そうだよアイリ、僕達も早く安全な所に逃げないと」


「そ、そうだね、は、はやく、にげない、とね」


「そうだよアイリ、家族は無事でいるはずだから泣かないで」


「うん、あ、ありがとう」


「よし、それじゃ、煙の上がってない方向に逃げるぞ」


そう言って煙の方向を確認した時、既に手遅れだった事を理解した。

すぐ目の前の上空に魔物が空を飛んでいる事に気が付いてしまった。

緑色の体に、背中に付いている大きな羽根を羽ばたかせ空中に留まっている。

人間のような体に鬼のような顔、大きな耳と角が目立っていた。

多分、この魔物がガーゴイルと呼ばれる者だろうか。


「グヮグヮ、こんな所にも美味しそうな人間がいるな、

こんな遠くの島まで飛んできて正解だったな、

こんなに餌が豊富だし、美味しそうな人間の子供もいるしな」


僕達の方を睨み付け、こちらを狙っているようだった。


「ここは僕が引き留めるから、逃げるんだ」


「レン、流石にお前でも魔物は無理じゃないか」


「そうよ、一緒に逃げましょレン」


「イヤ、皆で逃げたら直ぐにでも襲いかかってくるだろう、大丈夫、無理はしないさ、それにそのうち父さんとクリスさんが来るはずだから」


「だけどしかし」


「早く、行け!」


僕は思わず叫んでしまった。

こうでもしないと逃げてくれないだろうから、僕は背中の剣を抜き構えた。

絶対に友達を傷付けたりさせない。


「行くぞ、アイリ」


「でも、レンが…」


「レンの気持ち、分かってくれ」


「ありがとう、セナ、そしてアイリ」


セナがアイリの手を引き、無理やり引っ張って行った。

あとは、父さん達が来るまでガーゴイルを引き留めるだけ。


「おい、小僧、もしかしてお前が俺様の相手をするつもりか」


「そうだと言ったら」


「グヮグヮ、笑わせるな餌の分際で、俺様に勝てると思っているのか」


「さあ、どうだろう」


「グヮー」


僕に向かって飛んでくると思ったら、ヤバイ、セナとアイリの方に向かって飛んでいった。

僕は慌てて追いかけたが、気付くのが遅れて間に合いそうになかった


「セナ、アイリ」


僕は思わず叫んでいた。


「グヮグヮ、まずは美味しそうな餌二匹ゲット」


そこへ上空から斬りかかる人物がいた。

クリスさんだ。


「お待たせたしました」


ガーゴイルに斬りかかったが、ガーゴイルは素早く旋回して交わして空中に停止している。


「グヮー、しつこい奴らめ、後で倒そうと思ったが今ここで先に倒してやる」


良かった、セナとアイリへの攻撃は諦めたようだ。

もしクリスさんの来るのが遅かったら、そう思うとゾッとする。

クリスさんとガーゴイルは、にらみ合いが続いた。

クリスさんとしては、空中を飛んでいるので何とか地上に落とさないと、攻撃も出来ないし近づくことも出来なかった。

ガーゴイルは相手が騎士だと分かると、警戒してなかなか攻撃範囲まで降りてこなかった。


僕は狩り用の弓矢を持っていた事に気がついた。

僕は、弓を構え空中を飛んでいるガーゴイル目掛けて矢を放った。

放たれた矢は、真っ直ぐにガーゴイル目掛けて飛んでいき、左腕に突き刺さった。


「グヮッ」


魔物は堅くて普通の攻撃は効かないと思っていたが、これなら何とかいけそうだと感じだが、二撃目を構えようとしていたらガーゴイルはこちらに向かって飛んできている。


「グヮ、よくも餌の分際でお前から先に殺してやる」


僕はガーゴイルの形相ぎょうそうを見て、思わず逃げ出しそうになったが、あまりの恐怖に体が動かず黙って見ているだけだった。


心の中では『ヤバい、早く逃げないと』そう呟いていたが、体が動かない。

『誰か助けて』声に出なかったが、そう叫んでいた。

ガーゴイルが目の前まで来て、剣を僕に向けて突き刺そうとしているのが分かったが、体が動かないのでただ呆然とその動きを見ていた。

すると右側から何か黒い影が通り過ぎて、ガーゴイルの左の羽根を切り裂いて行った。

ガーゴイルは、体制を崩し地面に落下、そのまま数メートルしたの木の根まで転げ落ちていった。


「二人とも何やっているんだ。

今まで修行した成果が出ていないじゃないか。

特にレン、ガーゴイルの気迫に負けてしまうとは情けない」


僕を助けてくれたのは父さんだった。

クリスさんが近づいてきて、


「でもレンくん、実戦は初めてなんでしょ。

最初は仕様がないじゃないですか」


「クリス、甘いよ。

実戦が最初だからいいだと~、それでさっきは俺が居なかったら死んでいたんだぞ。

最後まで気を抜くなよ、まだガーゴイルは倒していないからな」


確かにそうだ、クリスさんが来なかったら友達を、父さんが来なかったら僕は間違いなく死んでいただろう。

これが実戦か、今まで訓練していた時も死ぬことはない、そう思っていたのが甘かったのかも知れない。

これが命のやり取り、生きるか死ぬか…、もう一度ガーゴイルを見てみると先程と違い、体の緊張が解けたように普段と変わらない動きに戻っていた。

ガーゴイルは必死に飛び上がろうとしていたが、左羽根が破損していたので飛び上がる事は出来ないようだ。


「気を抜くなよ」


僕は件を構え直し、ガーゴイルの出方を伺っていた。


「グガッ、よくも餌の分際で俺様の羽根を傷付けやがったな。

許さね~、覚悟しろよ」


そう言うとガーゴイルは、力を貯め始めた。


「不味い、ガーゴイルが戦闘モードに入る前に殺るぞ」


父さんとクリスさんは、ガーゴイルに向かって襲いかかって行ったが、


「遅~い」


ガーゴイルの戦闘モードに入り、身体能力が更に向上した。

一瞬、爆風が起こったと思ったら、父さんとクリスさんは一緒に飛びされていた。


「父さ~ん」


僕は叫んだと同時にガーゴイルは、目の前に現れて僕に向かって剣を振り下ろしていた。

一瞬の出来事で対応の遅れた僕だったが、剣がたまたまそこに有ったのか、それとも剣が防いでくれたのか分からなかったが、僕の意思とは関係なくガーゴイルの攻撃を防いでくれたが、そのあと外部の蹴りが飛んできて衝撃で何十メートルか飛ばされてしまった。


お腹に激痛が走り、暫く動くことが出来ないでいた。

父さんとクリスさんは、いつの間にかガーゴイルの傍で剣を振って戦っている。

二人の攻撃は、ガーゴイルをしていたが全て塞がれ、致命打を与え切れずにいた。

クリスさんは、剣のスキル駿速を発動する。

30秒間だけ速さが加速する。

スピードの上がったクリスさんは、ガーゴイルを切り刻んでいくが戦闘モードに入っているガーゴイルに深手を与えることは出来ないでいた。


「これでも駄目か」


「クリス、同時に攻めるぞ」


父さんとクリスさんは同時に攻めて攻撃しているが、防御もかなり上がっているらしく、剣を切りつけても皮1枚しか傷付けることが出来なかったが、それでもガーゴイルの攻撃を交わしながら傷を増やしていった。

僕も攻撃に加わらないと、そう思い体を確認していく。

手は動くし力も入る、足はどうだ、大丈夫そうだ、蹴られた腹はどうだ、痛みはあるがこのくらいなら行けるか、よし。

僕はゆっくりと立ち上がり、剣を構え静かに素早くガーゴイルに近く、二人を相手にしているのでこちらには気付いてないようだ。

僕は全身の力を剣に込める勢いで、ガーゴイルに向かって突き刺す。


「グヮーーー、この餌が!」


「離れるんだ、レン」


突き刺した剣は背中に深々と付き刺さったが、刺した剣を抜くことも出来ず、またもやガーゴイルの後ろ蹴りをまともにくらって数十メートル飛ばされてしまった。

腹が無くなったかと思うくらいの衝撃で、あまりにも痛さにのたうち回っていた。


「レン、大丈夫か」


「餌の分際で人の心配している暇はないだろう」


クリスさんも剣を飛ばされ、腹に蹴りをくらって飛ばされていた。

飛ばされた剣は僕の直ぐ近くに落ち、あと少しずれていたら僕に直撃していたかも知れなかった。

父さんは一人で何とか持ちこたえているが、クリスさんと二人で戦っていた相手を一人で捌くには限度があった。

みるみるうちに、体力が無くなり動きが鈍くなる父さん、早く助けに行かないと父さんが危ない。


しかし僕の剣はガーゴイルに刺さったままだった。

どうする、どうすれば…、その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「レン、早く目の前の剣を掴みなさい、お前の父さんが危ない。

早く急いで早く、早く」


僕は言われるまま、クリスさんの剣を握り確認する。

この剣自体は使えそうだな、剣にも相性があるからな。

剣を何度か振ってみた。大丈夫そうだ、お腹の痛みもだいぶ治まったし、でもさっきと同じで勝てるのか。


「レン、少し力を貸すから一気に攻めなさい」


「え」


訳も分からなかったが、僕の持っている剣が輝き出し剣のスキル駿速が発動した。


「30秒だぞ、行くんだ、早く、早く」


「うん」


そう言うと僕は駆け出していた。

速さが強化されて、いつもより遥かに速く動いていた。

先程のガーゴイルも父さんも全てがゆっくりとスローモーションのように動いていた。

その中を一人僕だけが速く、ガーゴイルを切り裂いていた。

だが、やはり深く傷をつけることは出来なかった。

動いているとき、驚いている父さんの顔が見えて、父さんでもそんな顔するんだと戦っている最中なのに思ってしまった。

ついでに、僕の剣も返して貰わないと、ガーゴイルの背中に刺さった剣を抜くと大量の青い血が噴水のように出た。

あっという間に30秒が過ぎ、時間が元に戻る。


「まず、お前から殺してやる」


そう言うとガーゴイルは僕の方に向かって来ていた。

父さんも体力の限界なのか、無くした足を地面につき、大きく呼吸しているのが分かる。

僕が何とかしないと、でもどうすれば…、またもや声が聞こえてくる。


「仕方ない、今回だけ特別ですよ。これで倒して下さいね」


そう言うとまた剣が輝き出し、今回違ったのは剣から根っこみたいな物が何本も僕も腕に突き刺さり一体化していっている。

不思議なことに痛みは無かったが、ちょっとグロテスクかな。


「更に身体能力上げたからね、30秒しかないから早く」


ガーゴイルがスローモーションのように見える中を、僕は素早く動き切り裂いて突き抜ける。


「グヮーーー、バカな餌の分際で…」


そう言うとガーゴイルは上下真二つに割れて砂となって消えていった。

残ったのは金貨と宝石のみだった。

これが僕の最初に出会った魔物の出来事だった。



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