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私と、幼馴染と、  作者: 円寺える


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第95話

私、色んな女の子と相性が悪いのかもしれない。

だって今まで友達になれた女子っていない。

姫子ちゃんは別だけど、それ以外友人と呼べるような人間がいない。その理由としてはまず私の性格の悪さがあるんだろうけど。滝さんは人気者なのに、私は何故か受け付けない。綺麗な人間が嫌いなのか私は。否定できない辺り、そうなのだろう。潔白な純粋な無垢な人が嫌い。そう考えるとしっくりくる。やはり私は天性の性格最悪女かもしれない。


「ねぇ、滝さんって空のこと好きなんだね」


今だって、滝さんに「藤田さんは言わないから」的なことを言われていたにも関わらず、こうして躊躇なく口に出す。こういうところだ。


久々に私の部屋に来た空はいじっていた携帯を置いて、じっと綺麗な瞳で私を見る。

あぁ、そういえば空も綺麗な人間に入るのだろうか。私が嫌うのは心が綺麗な人間だな。


「何、急に。どうかした?」

「いや、なんか今日いきなりカミングアウトされたから」

「ふうん。まあ、なんとなく予想はつくけどねー」


帰りにコンビニで購入したチョコを食べ、にっこりと笑顔で咀嚼した空は今日の出来事を知っている風だった。


「無意識でやってんだろうねぇ、怖いよねぇ」


もぐもぐと食べながら呑気に言う。


「そんでそれを俺に言っちゃう優も怖いよねぇ」

「別に、性格が良くないことくらい知ってる」

「あはは、拗ねたの?」


面白がる空から顔を背ける。


私と空の違いは、開き直っているかどうかだと思う。

性悪な部分を開き直っている空と違い、私はどちらかというと卑屈だ。

だからといって、どうというわけではないが。

やっぱり空と私は全然違う。


「まあ、あれじゃない?優も滝から学べる所があるんじゃない?」

「は?」

「ほら、滝って文武両道じゃん。あれ、知らない?」

「知らない」

「書道部で活躍してるみたいだし、勉強もできる。皆表に出さないだけで狙ってる男子は結構いるんだよ」

「.....へえ」

「おまけに性格も良いし。うるさく目立つ方じゃないから話しかけやすいし、倍率高いぞー」


表向きの女版空みたいだ。

何で今まで気づかなかったんだろう。そんな女が空の近くにいたら気づくはずなんだけど。


「でもほら、優の方が俺と関係が深いじゃん。だから皆滝と俺のことそんなに言わないんだよねぇ。空くんと言えば藤田さんでしょ!みたいな」

「でも空のクラスメイトが滝さんとくっ付けばいいのに、って言ってた」

「そりゃあ、俺と釣りいそうな女だからでしょー」


つまり私はただの幼馴染というだけで、釣り合ってはいないと。


「滝は俺の周りを鬱陶しくうろちょろしないし、目障りじゃないから別に放っておいても害はないよ」

「....そうだね」


空に害はないだろう。

空には。


「優、滝のこと嫌いなの?」


急に雰囲気が変わった。

何もかも見透かしたような、それでいて言わせようとするような。


「べ、別に…ただ、ちょっと、苦手」

「ふうん。まあ俺には関係ないけど」


そうだろうよ。

どうせ空には関係ないよ。

だって滝さんは完璧だと思う。凄いと思う。でも嫌だ。

あの女もある意味性悪だ。

なんで私にカミングアウトしてくるの。意味が分からない。


空も空だ。


直接言われたわけではないが、遠まわしに滝さんを擁護しているかのように聞こえる。

例えお前が滝を嫌いでも俺は滝が嫌いじゃない。そんなニュアンスが。


気に入らない。


私と空は幼馴染で、今までだってたくさんの時間を共有してきた。誰より一緒にいる時間は長い。

たかが一回同じクラスになって、文化祭のために毎日一緒にいる関係だとしても、そこにいるべき人間は、貴方じゃない。ただの、尻尾振って空に媚びを売ってる女でしょう。


その場所は、私の....。


そこまで考えて羞恥で顔が赤くなる。


これじゃあ、まるで、私が嫉妬しているみたいだ。


あの女に、私が嫉妬を。

どれだけ空を好きだと言おうが、空の隣は今までもこれからもずっと私の場所だ。

なのに、たかがクラスメイトである女に嫉妬するなんて。


所詮私は空の幼馴染。彼女ではない。

愛の告白をされたこともない。


なのに、嫌いじゃないとまで言って、擁護するような雰囲気を醸し出している空。たかがクラスメイト、一瞬現れただけの女にそれを向けていると思ったら。


むかつく。


空のことを何も知らないくせに。

空のことを一番知っているのは私なのに。


ぽっと出の女なんかを褒めたりして。


空も、あの女も、むかつく。


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