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私と、幼馴染と、  作者: 円寺える


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第84話

登校中、空と話した通り、午後のホームルームでは文化祭の話題だった。

私のクラスは比較的やる気がないようで、クラスメイトはそれぞれ簡単なものをと思案していた。

他のクラスの生徒がちらほら廊下を通っているが、あれは「俺たちのクラスはこれをやるんだけど、そっちは何をやるの?」と言いに来る連中だ。

もう他クラスは大体決まったらしく、お化け屋敷や迷路、輪投げなどの声を聞いた。


「えーと、これまで出た案は展示だけですけど、他に何かやりたいことありますか?」


文化委員が二人、前に立ち、困った顔で皆に聞くが誰も何も言わない。

うちのクラスに積極性はない。

文化祭を楽しみにしている陽気な子たちもいるが彼女たちは、友達とずっと一緒に行動したい、他クラスを見て回りたい、空と話がしたい、などの気持ちが強い。文化祭当日、忙しいものは避けたいのだろうから、クラスの出し物が展示になるのは当然だ。


「じゃあ、展示にします」


文化委員は半ば諦めたように小さな声で言った。

文化委員としては何かやりたかったのだろう。それこそお化け屋敷とか。


「何を展示したいですか?」


何を展示するか、何だっていい。皆の目がそう言っている。

どうせ自分たちは当日遊ぶのだから、何の展示をしようが関係ない。


「皆が好きなものを展示する、で良くない?」


山本さんがそう言った。


「今手作りのぬいぐるみにハマってるんだけど、わたしそれ展示でいい?」


可愛らしい趣味だ。手作りってすごい。


「好きなものって何でもいいのかよ?」


展示すらも面倒な男子が山本さんに聞く。


「いいんじゃない?撮った写真とか作ったものとか」


山本さんも面倒なのか、どこか投げやりだ。


「それなら楽だな」

「いらなくなったシールとかでもいい?小学生の頃買ったやつがめっちゃあるんだよねー、要る人あげます的な感じで置いてもいいかな」

「それだったら俺もえんぴつとか置いていい?さすがにもう使わねえよ」


目立つ人がどんどん意見を言っていく。こういうのはクラスで発言できない子たちにとってとても有難い。話は進んでいき、どうやら「何でも展示」にするようだ。他人に見せたいものや要らなくなったもの、なんでも置くことにした。

それだったら私も置いていいだろうか。昔、空に近づくため私を物で釣ろうとした人たちがたくさん要らない物をくれたので、それを置きたい。ちょっと可愛い物もあるから、捨てずにとっておいたのだ。


「じゃあ、何でも展示っていう看板ぶら下げることでいい?」


結局最後は文化委員ではなく山本さんが仕切っていた。

こういうときの文化委員なのだが、やはりクラスの発言者には敵わない。

文化委員の二人はどこか面白くなさそうに、「何でも展示」と黒板に書いた。


うちのクラスは決まったので、陽気な男子が他のクラスに伝えに行った。


それと同じタイミングで、とある男子生徒が私たちのクラスに向かって言った。


「俺らのクラス、あれになったぜ。門の飾りみたいなやつ」


誰だ。俺らのクラスってどこのクラスだ。

考えていると山本さんが声を上げた。


「空くんのクラスじゃん!」


彼は空と同じクラスだったのか。

ということは、空は貧乏クジを引いてしまったようだ。

門の飾りつけは年々違ってくるが、去年は確かイラストや花、風船などで豪華に飾っていた。

あれは見ただけで時間をかけたものだと分かった。

今年は空のクラスがやることになったのか。


「いいなー、空くんのクラス。どうせ居残りとか買い出しとかするんでしょ」

「本当だよね。わたしも空くんと同じクラスがよかった」

「絶対クラスの女子たちが自慢してくるわ」

「最悪。でもいいなー」


切実さが伝わってくる。

クラスの男子は複雑そうな表情で、羨ましそうに語る女子を見ていた。


とにかく、明日から文化祭の準備にとりかかるだろう。

私たちは展示する物を持ってくるだけだが。

空たちのクラスはキャーキャーと叫びながら楽しそうに準備をするんだろうな。

その光景が容易に浮かんでしまう。恐らくそれは私だけでなく、山本さんたちもそうだろう。

現に、嫌そうな顔をしている。


帰ったら空の愚痴が始まりそうだ。


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