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火あぶり回避したい魔女ヒロインですが、事情を知った当て馬役の義兄が本気になったようで  作者: 廻り
第二章

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51 公子の事情

 舞踏会から数日後。アレクシスは、本宮の謁見の間にいた。父親である公王から手渡された書簡に目を通したアレクシスは、ため息をついてから公王向けて視線を上げる。


「また、結婚の打診ですか。数か月前にも、来たばかりですよ」

「舞踏会でのお前の振る舞いが、王女の耳にも入ったようだな。他から打診が来る前に、先手を打ったのだろう」


 隣国フラル王国には、アレクシスと同じ歳の王女がいる。アレクシスとは、アカデミー留学時代にドルレーツ王国でおこなわれた舞踏会で、一度ダンスを踊っただけの仲だ。けれどそれ以来、たびたび結婚の打診が舞い込むようになっている。


 アレクシスとしては、公王の座を狙っているわけではないので、下手に後ろ盾となりそうな王女など、娶るわけにはいかない。誰かと結婚するにしても、弟が後継者に選ばれてからと決めていた。

 しかし、何度断ってもこうして定期的に、打診の書簡が送られてくるのだ。


 アレクシスの意思を知りつつも、公王が隣国からの書簡を見せる理由も、アレクシスは察している。公王はアレクシスに、王位を譲りたいと思っているからだ。

 私生児である息子を王位に就けるには、隣国の王女はうってつけの結婚相手だと考えているのだろう。


「僕の結婚相手は、もう少し吟味して決めたいと思います……。公子妃となられる方には、それなりの能力も必要となりますので」


 今までなら、「結婚はしない」と突っぱねていたアレクシスだが、今回は明言を避けるように返答した。

 アレクシスが公子の証を身に着けたことで、今の公王は気を良くしている。リズを守るためには、公王の機嫌は取っておくに越したことはない。


「ふむ。お前にその気があるなら、自分で選んでみなさい。だが今回は、国王陛下からの親書だ。今までのような断り方は、通用しないぞ。誠意を持って対応しなさい」

「はい。父上」




 第二公子宮殿へと戻ったアレクシスは、考え込みながら廊下を歩いていた。公王の言うとおり、今までのような書簡での断り方は国王に対して失礼にあたる。求婚を断るならば、直接フラル王国へ出向かねばならない。


「リズには、知られたくないな……」


 王女に対しての気持ちは全くないが、結婚相手の候補がいるということを、リズには知られたくない。もしもリズに知られて応援でもされようものなら、アレクシスにとっては地獄そのものだ。


「はぁ。面倒だ……」

「何が面倒なんですか?」


 突然、誰かに返答され、アレクシスは驚いて振り返った。そこには、幼馴染であるローラントの姿が。


「……急に話しかけるな。リズは?」

「リゼット殿下は、お部屋で本をお読みになっております」

「そう」

「それで、何が面倒なんですか?」


 あの日以来、ローラントは機会を見つけては、アレクシスに話しかけるようになっていた。アレクシスに、これまでの不満をぶつけたことで、何かが吹っ切れたように自然な態度で、彼は接してくる。そんなローラントの態度を、アレクシスも悪い気はしないでいた。


「フラル王国の王女に、会いに行かなければならない」

「結婚の件ですか……?」

「うん。今回できっちりと、ケリをつけてくるつもりだ」

「そうですか。留守はお任せ下さい。リゼット殿下のことは、最優先でお守りいたします」


 恋のライバルということはさておき、ローラントに任せておけば、リズの心配をせずにアレクシスは隣国へと向かえる。けれどアレクシスは、「いや」と否定を口にした。


「ローラントも、一緒に来て」

「なぜですか……?」

「少人数でいけば、最速で帰ってこられるだろう? 残念ながら、補佐と護衛の両方を任せられるのは、ローラントだけだしね」


 ローラントは、何かを思い出したように苦笑いする。


「アカデミーでの、辛い日々を思い出します」

「それはお互い様」


 大人の侍従や護衛を付けられなかったアカデミーでは、その役目を全てローラントが担っていた。嫌々ながらも完璧に役目をこなせるローラントの存在は、アレクシスにとっては貴重なものであった。

 その役目を再び任せるのは、本人が嫌がるかとアレクシスは少し心配していたが、ローラントに異存はないようだ。

 舞踏会の日、「頼ってほしい」と言っていたのは、酔っ払いの戯言ではなかったらしい。


「リゼット殿下は、どうなさるおつもりですか?」

「本当は任せたくないけれど、カルステンが適任だ」

「リゼット殿下が絡むと、兄上に厳しいですね。何かございましたか?」


 小説の設定を知らないローラントにとっては、アレクシスの態度は不自然に見えるようだ。だからといって、リズとの二人だけの秘密を、易々とライバルに話すつもりはアレクシスにはない。


「リズって、カルステンの好みを生き写しにしたように見えない?」


 事実だけを伝えると、ローラントは理解したように顔をしかめた。


「俺も、不安になってきました……。最速を越える速さで、帰って来ましょう」

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◆作者ページ◆

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