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しょうもなおじさん、ダンジョンに行く  作者: 埴輪庭


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作業所エリア②

 ◆


「それじゃあ、開けますぜ」


 歳三はそう言うなり、鉄扉に手を当ててぐいっと押し開けた。


「これは……」


 蒼島が怪訝そうな顔で口を開く。


 二人の前に広がっていたのは、奇妙な光景だった。広い空間に作業台が整然と並び、様々な年代の男たちが何かしらの手作業をしている。青年もいれば老人もおり、みな品質が悪そうな灰色の作業着を着ている。


「作業机の上にミシン……縫製か何かの刑務作業かな。皆、人間のように見えます。もしかしたらここに囚われている人たちなのかもしれませんね」


 奴以外は、と蒼島が一つの影を指し示した。


 ──牢屋に来た奴に似てるな


 部屋の最前方には学校の教室のように教壇らしきものがあり、一段床が高くなっている場所に設置されている。蒼島が言う黒い影は、その教壇の上から部屋全体を睥睨していた。


 さらに言えば、何かしらの作業をしていると見られる男たちの様子はどうにも普通ではない。


「奴が何かしているのでしょうか。男たちに自我を感じられません」


 作業をしている男たちの目は虚ろで生気がなく、ただ黙々と手を動かしている。歳三の目には、男たちは衣服を縫っているように見えた。


「刑務所では所内で使う物品は極力自分たちで作ったりしているみたいです。もちろん普通の刑務所では、という意味ですけど。もしかしたらこのダンジョンでもそうなのかもしれません」


「俺たちには関係ないよなぁ」と思っていると、蒼島も同じ思いだったのか続けて言った。


「建物の構造的に、僕たちが最初に検査された場所の近くに荷物置き場があると思うんですよね。そこが一応の目的地なので、できるだけ無用の戦闘は避けたいところですが」


「ウン、だったら目立たないように奥のドアまで移動するか……」


 装備があろうとなかろうと関係がない歳三ではあるが、社交性には欠けていても協調性がないわけではないので、ここは素直に蒼島に同意した。


 ・


 ・


 ・


 蒼島の推察通り、男たちはかつてこの巣鴨プリズンダンジョンに誘引され、脱出ができないまま囚われになった者たちである。


 協会所属の探索者もいれば、フリーの者たちや、そもそも探索者という社会的立場にある者ではなく、ただダンジョンの干渉を受けただけの犯罪者もいる。


 彼らには共通点があった。


 それは、自分がしたことに対してわずかながらでも罪悪感を抱いているということだ。


 そういった「弱い」存在は巣鴨プリズンダンジョンに永遠に囚われ続けるだろう。


 巣鴨プリズンダンジョンの地域的な特性と、ダンジョンというものが創られた目的(『それとソレと神と』参照)が化学反応を起こした結果、このダンジョンはそういう特性を持つに至った。


 ここを脱出するためには「更生」をしなければいけないが、その「更生」とは突き詰めて言えば強くなることだ。


 だから、「弱者マリ」に対して慈悲を示しただけではなく、苦痛がそれ以上長引くことのないようにと完殺した歳三はもちろん、弱い事は罪だと感得し、血によってこれまでの自分を濯ごうと考えた蒼島は「更生」したと言える。


 ◆


 ──タダで通してくれるか、どうか


 蒼島は気を張る。


 ここはダンジョンだ、この状況で戦闘なしに済むとは思えない。


 蒼島としては無駄な戦闘は避けたいところだったが、必要な戦闘ならば話は別だ。


 乙級指定のダンジョンのモンスター相手に、装備もなしでどこまで抗えるかは自分にもわからなかったが、四肢が引きちぎれようとも抵抗するつもりだった。


 しかし、そんな蒼島の決意とは裏腹に、看守然とした黒い影は明らかにこちらを認識しているにもかかわらず、敵意を向けてこない。


 もちろん、だからと言って蒼島は戦闘態勢を崩しはしないが、それとは対照的に歳三はあくまでも自然体のままだ。


 これでいて歳三という男はバトルマニアな気質にできているが、やる気がない相手に襲いかかったりするということはない。


「仕事中みたいだから、邪魔しちゃ良くないな。行きましょうぜ、蒼島さん」


 言うなり、歳三は手刀を切りつつ「すみませんね、失礼しますよ」と言ったおじさん仕草を取りつつ、部屋の奥へと進んでいく。


 随分図太いように見えるが、これはこれまでの人との出会いなどによってタフになった……からではなく、ダンジョンでの歳三は概ねこんなものである。


「そう、ですね」


 蒼島はやや戸惑い気味だったが、歳三の言に抗することなく大人しくその背を追った。


 ・

 ・

 ・


 ──視線を感じる


 蒼島は首元にチリチリとした何かを感じる。


 その何かには敵意とまでは言わないが、刺々しいモノが多分に含まれていることが感得できた。


 このまま無事では済まないだろうという予感……それは、「ん?」と歳三が疑問の声を発した時に確信へと変わった。


 言語化できぬ呻き声と共に、作業台で作業をしていた男たちの一人が蒼島めがけて飛び出してきたのだ。

さっさと終わらせます。


それとお盆の時期ということで、短編ホラーを一本書きました。


「廃病院のウワサ」という作品です。良ければそちらもよろしくお願いします。


掲示板の特殊タグ使いましたけど便利ですね。


あとここに書く事でもないとは思うんですが、「ネオページ」って新興のサイトで現代ダンジョン物の最新作を書きます。まだ投稿はしてないですが。契約作家ということで各種契約を締結中です。トータル30万文字程度で、私にしては珍しく完結させます。契約もあるので……。小銭につられました。あちらでのペンネームは「NIWA」です。なろう民が今さら新興小説サイトを利用するとは思えませんが、もし登録してる人がいたらよろしくです。

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まだまだ沢山書いてますので作者ページからぜひよろしくお願いします。
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