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しょうもなおじさん、ダンジョンに行く  作者: 埴輪庭


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特別な依頼⑥

 ◆


 歳三の辞書に計画性という単語はない。


 探索に限った話ではなく、人生全般でそう言える。


 この男はライブ感で生きているのだ。


 まあライブ感で生きる為にはセンスがいるのだが。


 これは特殊なセンスで、意識して鍛えるのが難しい。


 このセンスが欠如していると、俗に言う "生きづらそうにしている人" になってしまう。


 こういう人間は自由にしているよりむしろ束縛されている方が良いのだが、 "生きづらそうにしている人" ほど自由を求める傾向にある。


 そして歳三には、そういったセンスが欠片もない。


 だから色々と上手くいかない。


 ・

 ・

 ・


 歳三は倉庫と思しき空間を漁っていた。


 ここのどこかに浦田技研が求める目的の "チップ" があるかもしれない、という友香の情報に従った形だ。


 広さはそこまででもなく、奥行100mほどで高さも精々が10mと言った所。


 根拠がない情報ではなく、チップの性質を鑑みて、ダンジョン化する前の旧町田工場の見取り図を確認した上で大体の目途をつけたのだ。


『大きさ的には縦横20cm大の正方形ですね。見た目銅板のような感じで、恐らくは保護ケースに入れられていると思いますよ!』


 友香の言葉に歳三はほっと胸をなでおろす。


 自身の不器用さに無頓着でいられるほどには歳三も鈍感ではなかった。


 モノ探しなんて言う単純労働で成果を出せずに、それが原因で見限られてしまったらと思うと──……歳三は金玉袋の裏まで鳥肌が立ってしまう。


「そんなでかいんですかい!良かった!それならすぐ見つかりますぜ!……見つかる筈だ!いや、見つかるといいんですがね、俺はなかなか間が悪いみたいで……」


 なぜかどんどん意気消沈していく歳三に、友香は笑いを堪えながら適当に励ましつつ、捜索を続ける。


『あ!それそれ!その奥のやつです!』


 捜索開始から20分程過ぎた頃合だろうか、友香が明るい声で歳三に言った。


 チップの大きさは友香から聞いていた歳三だが、やはり想像していたものよりずっと大きい。


「チップっていうから、もっとこう、こまいやつかと思っていたんですがね」


 歳三の言葉に友香も『チップにも色々ありまして』と適当に流す。詳しい説明をしたってどうせ分からないだろうと思っての事だ。友香の見立ては正しい。


 ところで無事に目的のブツを見つけた歳三なのだが、これですんなりと帰還とはいかない辺りが彼の宿命というか、運命なのかもしれない。


 歳三はライブ感で生きており、そのセンスの無さゆえに色々と上手くいかないのだ。


 ・

 ・

 ・


「それをここから持ち出させるわけにはいかない。チップを置いてここを去れ。まあ、貴様も我々の事は承知の上でここに誘いこんだのだろうから言っても意味がないかもしれないが、一応警告はしておくぞ」


 氷刃を思わせるような鋭い声が歳三の背に突き刺さった。

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まだまだ沢山書いてますので作者ページからぜひよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
[良い点] 珍しくじらされる文量!あ、明日も期待していいのかな…!?
[一言] ようやくか
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