8 佳世の気持ち
「ちょっと!!どういうことなのよ!」
「え?!あ、お、おはよ」
「おはよじゃないって!ねえ!!佳世、兵藤先輩と付き合ったってマジ?!」
「え?!ど、どうしてそれを……?」
「さっき新谷君に聞いたの!ねえ、あんた新谷君が好きだったんじゃないの?!」
「うっ……。そ、そうなんだけど……」
「話してくれるんだよね?!」
「わ、わかったよ……」
そうして学校に向かいながら昨日の出来事を友達に話した。
「なるほど?新谷君がバスケ部の子と一緒だったから腹が立って?勢いで兵藤先輩の告白を受けた、と?」
「は、はい……」
「この馬鹿!!!!!!!!!!」
「ひっ……」
「いくら頭に血が上っていたからって、それで好きでもない人の告白を受けるって……、何考えてんの!!」
「ご、ごめんなさい……」
「で?どうするつもりなの?」
「ど、どうするって……?」
「兵藤先輩との事!新谷君の事も!」
「え……、ど、どうしよう……」
「どうしようって……。決めてないの?」
「……うん。だって、告白受けてすぐに『ホントは他に好きな人がいます』なんて言えないよ……」
「そんなの!アンタが悪いんだから、謝って別れてもらうしかないでしょ?」
「そ、そうなんだけど……」
「新谷君、人気があるって言ったよね?アンタに彼氏が出来たってなったら、それこそバスケ部の子に取られちゃうよ?」
「で、でも……、レストランに二人で来てたし……。もう付き合ってるかも……」
「わかった!そのことは私に任せて!二人が付き合ってるかどうか、探りを入れてみるから!」
「そ、そう?頼んでいい?」
「うん。その代わり、ちゃんと兵藤先輩と話すんだよ?」
「うん、わかった」
やっぱりこの子は頼りになる。
小学校の頃からの友達で、いつも私の相談に乗ってくれていた。
小学校の頃の私は男勝りで、いつも駿と一緒に遊んでいた。
髪も短く、男の子と間違われることも結構あった。
中学に入ったころから、瞬の事を意識し始めた。
瞬には私のガサツな部分を知られていたから、少しでも女の子として意識して欲しくて頑張った。
日焼けも気を付けるようになったし、オシャレにも気を遣うようになった。
そのうち何人かの男子から、告白されるようになった。
だけど、瞬の私に対する態度は変わらない。
不安だった。
やっぱり私じゃダメなのかな……。
そんなときに、さっきの友達が勇気づけてくれた。
『新谷君は多分佳世の事、意識してると思う』って。
そんな実感は全くなかったが、その言葉を信じたかった。
ひょっとして、そうなのかな?と思いながらも、もし違ったら、と思うと行動には移せなかった。
そんなときに、兵藤先輩から食事に誘われた。
友達の間で人気のレストラン。
同い年の女の子の憧れの先輩。
正直、ちょっと浮かれた気持ちになった。
告白だろうな、とは思っていた。
断り切れずに、食事するだけ、と自分に言い聞かせ、レストランに向かった。
まさか、そこで瞬と会うなんて。
しかも、瞬の隣には他のクラスのバスケ部の女の子。
冷静ではいられなかった。
いや、言い訳はやめよう。
そんな一時的な感情で、兵藤先輩の告白に応えてしまった。
兵藤先輩に悪いことをしてしまった。
謝らなきゃ。
悪いとは思うけど、付き合う事は出来ない。
私は、瞬の事が好きなんだから。




