18 それから
「おかあさん、きいて、きいて!!」
「なあに?」
「きょうね?ようちえんで、しんじくんと、すなのおしろつくったの!」
「そうなの?良かったね!」
「うん!それでね?しんじくんと、きょうあそんでもいい?」
「え?いいわよ。加奈が信二君のお家に遊びに行くの?」
「ううん!しんじくんがおうちにくるの!」
「あのね……。もう約束しちゃってるんじゃないの」
「うん!やくそくしたの!」
「順番が逆でしょ……。もう。ま、いいか!もう来るの?」
「うん、たぶん」
「そう、おやつあったかしら……」
「ケーキがいい!」
「ケーキなんてないよ?クッキーでいい?」
「しょうがないなあ、クッキーでいいよ!」
「はいはい。佳奈は信二君と仲良しさんね?」
「うん!しんじくん、やさしいの!」
「そう?」
「うん!かながないてたら、あたまなでてくれるの!」
「……そう。信二君の事、好き?」
「うん!大好き!」
「じゃあ、ちゃんと伝えないとね。後悔しないように、ね……」
「つたえるってなに?こうかいって?」
「うーん、信二君に好きだよって言うの。あと……後悔……は難しいか。もう少し佳奈が大きくなったらね」
「ふーん?しんじくんには、すきっていってるよ!」
「そう?なら大丈夫よ」
「うん!」
「お帰り!」
「ぱぱ、おかえりなさーい!!」
「ただいま。おお、佳奈、ただいま!!」
「ぱぱ、きいて、きいて!!きょうしんじくんがおうちにあそびにきたの!」
「しんじくん?」
「ほら、ご近所さんの……」
「ああ、あの子か。遊びに来たのか?」
「そうだよ?しんじくんはね?いつもかながないてたら、あたまなでてくれるの!」
「!!そ、そうか」
「うん!やさしいの!」
「よかったな、佳奈。いいお友達なんだな」
「うん!」
「ねえ、友達から昨日聞いたんだけどね?」
「ああ、どうした?」
「えっと……あの……ね?」
「ん?言いづらい事か?」
「ううん、その……。相原さんの事」
「千尋のこと?」
「うん。再婚したって聞いたでしょ?」
「ああ」
「子供……生まれたって」
「!!そう……か」
「言わない方が良かった?」
「いや……。良かった、千尋も……やっと……」
「うん。良かったね」
「ああ、本当に……良かった」
千尋の事は気がかりだった。
俺だけが……って思ってたから。
そうか、本当に良かった。
「ねえ、佳奈がさっき言ってたよね?」
「うん?」
「泣いてたら信二君が頭を撫でてくれたって」
「ああ」
「私たちみたいだね?」
「そう、だな」
「佳奈、信二君の事が好きなんだって」
「え?だ、だけど、幼稚園児だろ?友達としてってことだろ」
「そうなんだろうけどね……佳奈には私みたいに後悔して欲しくないな」
「……まあ、な」
「だからね?ちゃんと教えたの。好きって伝えなさいって」
「そ、それはまだ早いんじゃないか?」
後悔して欲しくはないけども。
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