16 時は経ち
あのファミレスでの出来事から、佳世とは疎遠になった。
偶に近所であっても、ぎこちない挨拶を交わすだけだった。
それからは、高校時代、千尋と過ごした。
千尋とはその後、同じ大学へ通い、付き合いも続いた。
そして大学卒業後、社会人三年目で結婚した。
結婚してからわかった事だが、俺も千尋も、子供を作り辛い体質だった。
結婚前に、子供は何人が良いとか、子供が出来たときの為に家を買う貯金の話とか、二人で話し合っていた。
だから、二人の体質が判ったときは、落ち込んだ。
けど、頑張ったんだ。
二人でならきっと、って。
結婚して五年間、妊活も頑張った。
千尋はつらそうだったが、励まし合いながらやって来た。
だけど……。
二人とも精神的に限界を迎えた。
お互いの事を思い遣る余裕がなくなっていった。
誰が悪いワケでもないのに。
お互いを傷つけあうようになっていった。
疲れた。
疲れていた。
俺も、千尋も。
子供を諦めればよかったんだろうが……。
二人とも意地になっていたのかな……。
結局、離婚することになった。
俺も千尋も、子供が居なくても、幸せそうな夫婦がいることも知っている。
それでも。
自然にそう考える事が出来なかった。
お互いの事を嫌いになった訳じゃない。
だけど。
二人で居ても、幸せにはなれないんじゃないか。
お互いにそう思い始め、両親たちも交えて話し合った。
30を超えたとはいえ、まだ二人とも幸せになれるはずだ。
その為に、別れた方がいいという結論になった。
二人で住んでいたアパートも引き払い、しばらく実家に世話になる事になった。
「悪い、親父、お袋」
「まあ、気にすんな。しばらくゆっくりしたらいい」
「そうね。でも、家事は手伝いなさいよ!」
「わかってるって」
「そういえば、佳世ちゃん、まだ実家暮らしなんだってよ?」
「へ?そうなのか?」
「連絡とってみたら?昔は仲良かったんだから。気晴らしになるんじゃない?」
「あー……。まあ、考えてみるよ」
両親は俺と佳世の間にあった出来事を知らない。
もう10年以上連絡なんてしてないしな。
ばったり会ったら話くらいはするかもしれないが。
そんな風に考えていたある日。
「あ!瞬!久しぶり!オッサンになったねえ!!」
佳世と再会した。




