12 山賊退治2
山賊が陣取っているのはアッピラ山のふもと付近だという。
そこへ向かう途中、騎士団に出くわした。
総勢で十五人程度だろうか。
隣国の騎士団のようだが――。
「山賊退治に来た、だと?」
事情を説明すると、若い騎士隊長が不機嫌そうに顔をしかめた。
名前はカイル。
二十歳そこそこで隊長に抜擢された凄腕だそうだ。
「冒険者風情が! 引っ込んでいろ!」
カイルが怒鳴る。
「ここは俺たち『聖剣騎士団』三番隊がやる! お前たちの出る幕なんてない!」
「今まで苦戦続きだったんでしょう? 俺たちも手伝った方が――」
「騎士の名折れだ!」
カイルは頑として聞き入れない。
「じゃあ、後からついて行くだけでもお願いできませんか?」
俺は妥協案を出した。
「何?」
「山賊退治が終わり次第、商品の運搬を再開したいので。できるだけ早く、事実を確認する必要があるんですよ」
「……確かに、作業が遅れれば遅れるだけ、お前たちの依頼主の損害は大きくなる、か」
うなるカイル。
「分かった。事情があるようだから特別に許可する。ただし、俺たちと山賊との戦いに手出しはするなよ。冒険者の手など絶対に借りん!」
「ありがとうございます」
ま、騎士団がピンチになったら助けに入ればいいか。
――さっそくピンチになったようだ。
俺たちと騎士団が進むと、ほどなくして山賊たちに出くわした。
襲いくる山賊たちと、立ち向かう騎士団。
が、騎士団の動きが鈍い。
「この辺りには【パワーダウン】と【スピードダウン】のデバフ魔法をかけてある。敵の力と素早さは軒並み低くなるのだ」
山賊たちの奥にいる魔術師が笑っていた。
なるほど、こいつのせいで今までも騎士団が苦戦していたのか。
「ちっ、話に聞いていた以上に厄介だな――」
カイルがうなる。
「だが、騎士の名にかけて山賊などに――」
隊長だけあってカイルはさすがに強い。
パワーもスピードも下がった状態でなお、山賊たちを圧倒する。
「すごいな……」
「さすがに騎士隊長さんは強いですね……」
俺とアリシアは後方待機のまま。
もし騎士団がピンチになったら、あのアイテムを使おうと思ったけど、その必要もないかな?
と、
「ならば、これで――【アタックダウン】」
魔術師がさらに魔法を唱えた。
とたんにカイルの剣が鈍る。
「これは……!?」
「攻撃力が下がるデバフ魔法をかけた。三重のデバフに耐えられるかな、若き騎士?」
「ひ、卑劣な……っ! ああっ……」
カイルはたちまち山賊たちに押し返され、剣を弾き飛ばされてしまった。
「終わりだ!」
山賊の一人が丸腰になったカイルに剣を繰り出す。
「そろそろ出番みたいだな」
俺は捕獲用の銃を構えた。
さっそく新アイテムの出番だ――。





