10 フリージア邸
俺はアリシアとともに、フリージアさんの邸宅を訪ねた。
以前に聞いた住所に行くと、想像の十倍くらい大きな邸宅があった。
「……いや、十倍じゃきかないな。想像の百倍くらい大きいぞ……!」
フリージアさんは国内で五指に入るくらいの大商人だそうだから、これくらいの家に住んでいるのは当たり前ってことなんだろうか。
お金持ちってすごいな……。
俺たちは正門に行き、用件を伝えた。
ほどなくして、邸宅内に招き入れられ、応接間に案内された。
その応接間も豪華な内装で彩られている。
「すごい家だな……」
「お金持ちです……」
「この椅子一つで庶民の年収くらいはありそうだよな」
「もっとするかも……」
「だな……」
俺たちは顔を見合わせ、ため息をついた。
と、ドアが開き、ドレス姿の美女が現れる。
まるで貴族令嬢やお姫様のような出で立ちの彼女は、商人のフリージアさんだ。
「ゼノ様! アリシア様! ようこそおいでくださいました!」
フリージアさんが俺たちを見て、パッと顔を輝かせた。
「お久しぶりです、フリージアさん」
「ご無沙汰しております」
ぺこりと頭を下げる俺とアリシア。
「この間のお礼をぜひさせていただきたい、と思っていたところです」
フリージアさんが会釈した。
「さあ、どうぞお掛けください」
促され、俺たちはソファに腰掛ける。
「うわ、ふわふわだ」
「柔らかいです」
座っていてこんなに気持ちがいいソファは初めてだった。
「実は――折り入って、フリージアさんにご相談したいことが」
俺はさっそく用件を切り出した。
俺たちは紅茶を飲みながら、フリージアさんと話をしていた。
ちなみにこの紅茶も高価そうな代物だった。
香り高くて、めちゃくちゃ美味しい。
「『ブルーオーブ』ですか……」
「ええ、かなり高価で希少な宝石だったかと思いますが、なんとか入手したくて」
「そういうことなら、私の方で手配いたします」
フリージアさんがにっこりとして言った。
「ありがとうございます。あ、代金の方は――」
「お二人は私の命の恩人です。代金など必要ありませんわ」
にっこりと笑うフリージアさん。
「いえ、さすがにタダというわけには……」
「私もあなたたちにお礼をしていない状況です。今回の『ブルーオーブ』の手配を持って、その礼とさせていただく……ということでどうでしょう? もちろん、不足ならばもっとお支払いいたしますし」
「不足なんて! 十分すぎますよ」
俺は慌てて両手を振った。





