9 もふもふで一休み
「あいつを倒すには水属性の魔法攻撃手段が必要だ」
「水属性……? あっ」
「そうだ、さっきちょうど『アイテム交換所』に追加されたアイテムなら、あいつにダメージを与えられると思う」
アリシアに説明する俺。
「確か……魔石以外に『ブルーオーブ』が必要、って書いてありましたね」
「ああ、『ブルーオーブ』はすごく高価な宝石だったはず」
「お金がたくさん必要、ということですか?」
「ああ。魔石を売れば、ある程度まとまったお金にはなると思うけど、それだけでは足りないだろうな……」
とはいえ、どれくらいの金額が必要なのかも分からない。
「まずは宝石を取り扱っている商人を訪ねてみるか」
言ったところで、アリシアの耳と尻尾が目に映った。
うっ、もふもふしたい……。
「ゼノさん?」
「はっ! い、いや、何も邪まなことは考えてないぞ!? アリシアにもふもふしたいとか、そんなことはちっとも!」
「もふもふしたかったんですか?」
「ははははは、俺がもふもふしたいなんて、そんなストレートに自分の欲求を表すわけがないだろ……はははは」
「目が泳いでますよ、ゼノさん」
「あ……」
バレバレだったか。
「す、すまん……もふもふしたら、きっと癒やされるだろうな、なんて考えてた」
「いえ、ゼノさんが相手なら……いいですよ?」
アリシアが微笑んだ。
頬が少し赤い。
「ちょっと恥ずかしいけど……」
「い、いや、君に無理強いするつもりなんてないから! さっきの言葉は忘れてくれ!」
「ふふ、無理強いとかじゃないです。ゼノさんが相手なら、本当に大丈夫ですよ」
アリシアがふたたび微笑む。
「ただ、気恥しいので、ちょっとだけにしてくださいね?」
「あ、ああ」
どうやら嫌がってはいないようだ。
お言葉に甘えてみよう。
もふもふ、もふもふ。
もふもふ、もふもふ。
ああ、至高の時間だ――。
その柔らかさやしなやかさに俺はうっとりと浸った。
「……ん、そういえば」
ふと思いつくことがあった。
もふもふがちょうどいい気分転換になったのかもしれない。
「どうかしたんですか、ゼノさん?」
「この間知り合った商人のフリージアさんっていただろ? 彼女に『ブルーオーブ』のことを聞いてみようかな」
「フリージアさんに……」
「確か、宝石も取り扱っている、って言ってたからな」





