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日曜日へ

「あ……タケル君、ちょっと相談があるんどけど……」


 用が済んで帰ろうとしたタケルと絵里を、影山は呼び止めた。


「ん……? どうしたんです? 影山さん」


 呼び止められて振り返ったタケルに、影山はやけに爽やかな笑顔を見せ、少し小さな声で話しかけた。


「ねえ、タケル君、君は過去の出来事を見たり、人の心を読めたりするんだろう? それって凄いことだよ。そこで物は相談なんだが……ぼくの担当してる事件の解決、もし良かったら手伝ってもらえないかな? そんなに凄い力、自分のためだけじゃ無くって、ちょっと世のため、人のために使ってみる気は無いか?」


「ふふっ……そういう話ですか」


 タケルは、少しの間の後、影山に優しく答えた。


「僕は、特に世直しに興味があるわけじゃ無いんだけど……まあ、そうだなあ、もし僕が協力してあげたら、僕みたいに見過ごされている人がいなくなるように出来ますか?」


「うーん……そこで出来る! って言い切れないのが、しがない一警官の不甲斐ない所だけど……けどタケル君、いま君、もう僕の心の中、見えてるよね?」


 そう言った影山は、タケルの顔を覗き込んだ。まるで影山の方がタケルの心を読んでいるかの如き雰囲気すら、その光景からは感じられる。


「ええ……見えてます。少なくとも自分が担当する事件では、そんな事はしない、ってね……。あと、これで俺の仕事もばんばんはかどるぞ……とも見えてますね」


「ははっ……いやぁ、君には敵わないなあ」


 頭を掻く影山に、タケルは少し笑って答えた。


「ふふっ、いいですよ、分かりました。何かあれば相談してください。時間がある時には、少しお手伝いしますよ」


「本当か! そりゃあ助かる! よろしく頼むよ、タケル君!」


 喜色満面で握手を求められたタケルは、笑顔でそれに応えると、絵里と二人で、警察署を後にしたのであった。


 警察署から出た所で、絵里は不意にタケルに尋ねた。


「ねえ……。タケル、ちょっと聞きたいんだけど」


「うん? なんだい?」


 絵里の方にゆっくりと顔を向けたタケルに、絵里は先程から疑問に思っていた事を聞いてみた。


「さっき、あの警察官の人……影山さんだっけ、あの人に協力を求めてたじゃない? もし通報するような人がいたら……って」


 そんな絵里に、タケルは特に何も気にしてない様子で答えた。


「うん、そう言ったよ。変だったかい?」


「ええ……変だったわ。だってタケル、その気になればそんなの止める事ぐらい、簡単に出来るでしょ? 誰にもタケルの事を話せなくする事くらい……。クラスの皆は、実際、今そうなってるんだし」


「ふふっ……絵里さん、気付いてたね……」


 タケルはそんな絵里を見て、満足そうに微笑んだ。


「確かに、僕は誰かの助けが必要なんて事は無かったんだけどね……。でもああ言ってあげれば、影山さんも協力してる気分になれるんじゃないかな、と思って」


 そう言ってタケルは、ちょっと首をすくめた。


「まあ、ちょっとした遊び心みたいなものだよ。絵里さん」


「ふーん……まあ、私はあなたのする事を止めることはできないし、タケルの好きにすれば良いか……」


 ここ数日で、いろいろ考えても仕方ないと割り切ることを覚えた絵里は、そういうものかと自分の中で納得したのであった。


 そして……土曜日はその後何事も無く過ぎ去り、次の日……日曜日の朝がやってきた。

 タケルと影山、そしてその二人の会話に翻弄される若い警官、そんな三人が事件を解決する話を書くのも面白いかもしれませんが、ここでは省略。


 誰か……そういう話、書いてくれないものでしょうか……。

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