表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/60

うん。ちょっと待って?

 タケルは、カゲヤマにこう切り出した。


「カゲヤマさん、あなたが今見るとおり、僕には特別な力があります。それで、僕はこの力でいじめっ子たちに仕返しをし始めたんです」


 カゲヤマはタケルの話を聞き、そりゃそうだろうなと言わんばかりにうなずいた。


「僕の力のおかげで、誰も警察に僕の仕返しを訴え出ることは出来ません。でも、僕の仕返しを見ていた人が、警察に通報するっていう事もあるとは思います。それで……」


 タケルは、顔を少しばかりカゲヤマに近付けた。


「もし誰かが僕の事を警察に通報してきたとしても、見過ごして欲しいんです……。僕の訴えをそうしたように」


 タケルからそう言われ、カゲヤマは困ったような、申し訳ないような、それらが入り混じったような微妙な表情になった。


 傍から見ると、それはまるでタケルからカゲヤマがクレームを付けられているように見えなくもない。


(カゲヤマさんも、いろいろ忙しいよな……)


 窓口の近くで仕事をしていた、最初にタケルたちに応対した若い警官は、そんなカゲヤマをちらっと見てそう思った。


「うーん……。それは、ちょっと……立場上分かったとは言えないけど……。あの、仕返しって、具体的にどんな事するの?」


 カゲヤマの質問に、タケルは素直に答えた。


「そうですね……。痛めつけたり、自由を奪ったり……あとは、そうそう、殺して紙に封じ込めたり……あ、それから、暴力団の人はもう何人か殺しちゃいました」


「ええ……」


 タケルの答えには、カゲヤマもなんと言えばよいかすぐには思い付かなかった。


 「殺した」と言うキーワードに反応した窓口の近くの若い警官が、ハッとした顔で窓口の方を見たが、一見普通に話しているカゲヤマとタケルを見て、彼は気のせいかという顔をしたあと、また机の方に顔を戻した。


「まあ、基本的には、償いをさせようと思っています。殺して紙に封じ込めてる一人も、後で適当な時に生き返らせてあげるつもりです」


「うん。ちょっと待ってね? 頭を整理するからちょっと待って?」


 カゲヤマは頭を乱暴にガシガシと掻いたあと、改めてタケルに尋ねた。


「えっと……タケル君……? 君は、人を紙に封じ込める事が、出来る?」


 さっき言ったよと言わんばかりに、タケルは当然の様に答えた。


「はい。出来ますけど、何か?」


「うん、うん、ちょっと待ってね? まだ僕が君に追いつけていないみたいだから……えーと、人は紙の中に入れる……と」


 微妙に違う解釈をしつつあるカゲヤマだが、タケルは特に訂正する気もない様子でカゲヤマを見ている。


「で、さっきこうも言ってたよね……? あとで生き返らせる……って。それも……出来るのかい?」


 そのカゲヤマの質問にも、タケルはさも当たり前だといわんばかりに答えた。


「はい、もちろん出来ますけど。基本的に、僕は何でもありなんです」


「何でも……あり……」


 カゲヤマは、頭の整理がまだ出来ていない様子で、しかし理解はなんとか出来ているようであったが、その場に呆然と立ち尽くした。


「で……? 見過ごしてもらえますか? 僕の仕返しを」


 タケルからそう言われて、やっとカゲヤマは我に返った。


「え……ええと……ぼ、暴力団の人たちは……? 何人か殺したって言ってたけど……」


 そのカゲヤマの質問には、タケルは笑って答えた。


「うん、もう興味ないから、生き返らせるつもりはありません。心の中を見たけど、かなり悪いことしてる人達だったし、僕や母も殺されそうになりましたし」


「な、なるほど……。と、と言う事は……正当防衛……? かな……?」


 カゲヤマも、短い時間の中で、段々とタケルにある意味追いつき始めていた。


「うん、まあそうですね。で、結論は? カゲヤマさん」


 タケルに促され、カゲヤマはすこし考えてから喋り始めた。


「うん……。もうね、色々と分からないことはあるけど……まあ、あれだ。君を止めようとしても無駄だという事はよく分かったよ。それに……」


 カゲヤマは、更に言葉を続けた。


「僕もね……。そんなにいい人間でも無いけど、悪い奴が何もお咎め無しでのさばってるのを見て、何とも思わないほどの悪徳警官でも無いんだよね。いじめなんて、大嫌いだし……だから、口では言えないけど……ねえ君、僕の心の中、もう見えてるよね?」


 そう言ってニヤッと笑うカゲヤマに、タケルも微笑み返す。


「ええ、見えてますよ……影山さん……。構わないからやっちまえ、ってね……」


「ははっ……本当、凄いね君……」


 微笑み合う二人の姿は、見る人によっては、なぜか越後屋と悪代官の様な悪巧みの雰囲気すら感じさせた。


 その時、ちょうど窓口の近くの若い警官がまた頭を上げると、二人がお互い微笑み合ってたので、彼はこう思った。


(ああ、結構長い話になってたみたいだけど、クレームは上手く処理できたみたいだな……さすが、影山先輩だ)


 そう思った彼は、安心してまた机に視線を落としたのであった。

 カゲヤマは、味方になった!


 味方になったので、カゲヤマ→影山と表記が変更になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ