表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/60

伝えたいけど出来ない

 ヒロユキと同様に、理事を親に持つサキもまた、心に焦りが生じていた。


(何なの、さっきのやつ! 金縛りとか何それ? 忍術か何か? そんなの使えるとか、ヤバいんですけど!)


 タケルの金縛りの力を先程体験して知ったサキは、父親にタケルを退学処分にするよう頼んでいる事が、もしタケルにバレてしまったら、タケルからの仕返しが来る事を警戒し始めたのである。


 サキはこの時、タケルに自分が首謀者であると既に見抜かれている事は、まだ分かっていなかった。


(あいつ、ケンカが超強くなっただけかと思っていたけど……あんなやばい事もできるんだったら、早く学校から追い出さないと)


 3時間目の授業が終わるとすぐに、サキは教室から出て廊下に出た。そして、先程は何故か使えなくなっていた携帯電話を、もう一度チェックしてみた。


「あ……今度は使える……」


 使えなくなっていた携帯電話が、また使えるようになっていた。サキは、急いで父の携帯電話に電話をかける。おそらく仕事中であろうが、サキはそんな事は気にしていられなかった。


 何コールかしたあと、父親が電話に出た。


「はいはい、パパだけど。どうかしたかい、サキ?」


 電話に出た父親に、サキは、急いでタケルの事を伝えようとした。


「あ、パパ? あのね、昨日頼んだ、タケルって人の事なんだけど……」


「ああ、はいはい、あの暴力を振るってるっていう生徒ね? もう校長には伝えてあるよ? 多分すぐ退学になると思うけど?」


 のんびりとした口調で答える父親に、サキは焦った口調で頼み込んだ。


「早く退学にするよう伝えて! あいつは……」


 あいつは、金縛りのような変な力を持っている……そのように、サキは言いたかった。


「あ、あいつは……えっと……あ、あいつは……何だっけ……?」


 何故か、サキはそれを言う事が出来なかった。


「ええっと……とにかく、あいつはヤバいの、ヤバイのよ! あ……あれ? 何でヤバかったんだっけ……?」


「だから、暴力を振るう危険な生徒なんだろう? 大丈夫だよ、サキ。そんな生徒を、可愛い娘の近くにはおいてはおけないからね。ちゃんと校長は処分してくれるはずだよ?」


「あ、いや、そうなんだけど、ええと……あれ?」


 サキは、父親に、何かを伝えようとしていた。しかし、いざ伝えようとした時、何故かそれを言う事が出来なくなったのであった。


「じゃあ、パパ仕事中だから。また何か話があったら、夜に聞くからね。じゃあサキ、バイバイ」


 そう言うと、サキの父親は、電話を切ってしまった。


 切れた携帯電話を持ったまま、訳のわからないといった表情になり、サキは考えた。


(あれ……? 私、タケルが金縛りとか使えるって言いたかったのよね……? 何で私、急に忘れたの?)


 サキは、もう一度父親に電話をかけてみた。


 また数コールすると、先程と同じ様にサキの父親が電話に出た。


「どうした? 何か言い忘れてたかい、サキ?」


「そ、そうなの! え、ええと……えっと……あれ? あれっ!? 分からない?! うそ! 分からない!」


 何故かサキは、タケルの力の事を、再び何も言えなくなってしまったのである。 


「そんな……そんな! 何で! そんなバカな!」


「サキ、どうしたの? 言いたい事を忘れたのかい? だったらまた夜に話を聞くから。じゃ、パパ仕事で忙しいから、また夜にね」


 そう言われ、サキはまた電話を切られてしまった。


「あっ、待って――」


 そのサキの声は父親には届くことは無く、サキは呆然として、手に持っていた携帯電話を見つめた。


「えっ……? そんなバカな……。金縛りの事、パパに言えない……? 何で……?」


 サキは、完全に混乱していた。


 いつの間にか、サキの指先は震えだしていた。


(僕の力の事は誰にも話せないって、タケルが言ってたあれって……こういう意味!?)


 サキは廊下から、タケルの居る教室に目を向けた。


 サキのその顔には、さっきまでは無かった、怯えの表情が現れていた。

 

 そして、同じ頃……ヒロユキにも、同様の事態が起こっていたのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ