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死んでも僕からは逃げられないからね

「ああ、それとね……」


 タケルには、まだ言いたい事が残っているようであった。


「な、何なの……これ以上何があるの?」


 ナツミの震える声を聞いて満足げな表情を浮かべ、少し伸ばした髪を指で遊びながら、タケルは更に話を続けた。


「慰謝料を払っているから、これでいいでしょって言う態度は、僕は間違っていると思う。誠意ある謝罪の気持ちもずっと伴っていないと、それは償いとは言えない。だからナツミさん、あなたは慰謝料を払い終えるまで、僕に対して常に誠意と敬意を持って、失礼の無いようにしなければならない」


「う、ううっ……分かったわ……」


 ナツミの目からは、いつの間にか涙が落ちていた。


「もう知ってると思うけど、僕は人の心が見える。だから、上辺だけの誠意では騙されないから、本当に心からの謝罪、心からの誠意でないといけない。分かったかい? それと、これはイジメの慰謝料とはまた別に……」


 タケルには、更にまだ付け加える事があるようだ。


「ナツミさん……あなたは、僕の力を見るまでは、謝ろうとはして来なかった。だからあなたは、その程度の人間であると既に判定されてしまっているんだ」


「え……そ、そんな事って……」


 ナツミは少し話しかけて、途中でもう話すことをやめた。強大な力とすべてを見抜く目、それらを持つタケルに何を言っても無駄だと分かったからである。


「だから、下級の人間、と言っても良いあなたは、僕の管理下に入る。僕がいいと言うまで、ナツミさんは僕の命令に全て従うこと。その期間がどの位になるのかは、僕が決める。ふふっ、安心していいよ。そんなに無茶な命令はしないつもりだから……。今のところね」


「う、ううっ……」


 ナツミは、流れる涙を両手で覆うと、またその場にしゃがみ込んでしまった。


 そんなナツミを見ながら、タケルはまた付け加えた。


「反論は認めない。反抗も許さない。逃げる事はできない。誰にも助けを借りてはならない。誰かに相談する事はできない。自殺なんかも許さない。まあ、もし死んでも僕からは逃げられないからね? 僕がいつ終わるとも知れないイジメに苦しんだように、あなたも僕の支配がいつ終わるのか、それをあらかじめ知る事は許されない……。分かったかい?」


 そこで一息つき、タケルは最後の言葉を告げる。


「隠れて命令に逆らっても、すぐ僕は分かるからね? さあ、次の授業が始まる。ナツミさん、席に戻るんだ」


「……はい……」


 ナツミは、もうそれ以上何も言えず、判決を受けた罪人のようにただうなだれて、タケルの命令に従い、席に戻って行った。


(さて……一人目はとりあえずこれで良し……と)


 席に戻り、そのまま顔を押さえて机に伏してしまったナツミを見ながら、タケルがそう思った時、ちょうど次の授業開始のチャイムが鳴り、教師が扉を開けて入って来た。


 2時間目の授業が始まる中、タケルを後の席から見つめる多くの生徒達の中には、ケンジの姿もあった。


 このケンジとは、先日タケルがヒロユキに勝つところを見ており、その後上手くタケルに自らの知略を売り込もうとしている、あの男の事である。


 新学期初日にタケルに謝る事もしておらず、タケルの力をまだ理解もしていないこの軍師気取りの男、ケンジは、タケルに近付く機会を窺っていたのであった。


(さっきまでタケルはナツミと話していたが、もう終わったようだ……次の休み時間は、今度は俺が"仕掛ける"ことにしよう……)


 自分を罪人ではなく人材であると勘違いしているこの男は、心の中でそう思っていた。


 そんなケンジの思いを知ってか知らずか、最前列の一番窓側の席に座るタケルは前を見たまま、楽しそうに微笑んでいたのであった。

 ナツミに与えてる罰は、彼女が最初に謝ってきた事もあり、そんなにまだ、きっついと言うほどではないですね。


 次はケンジ。

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