森での初戦闘!!
ユウト達が森へ入ってから既に1時間が経過した。
その間に小動物等は発見したがモンスターは現れていない。
「このまま順調にいけばいいんだけど……」
ユウトは代わり映えのない森を進みながら周りを警戒する。
そして、その肩に少し眠そうなテュポンとまっている。こっちはあまり警戒はしていないようだ。
「はは、テュポンは意外とお気楽だな」
「キュイ?」
テュポンが『そう?』と言うように首を傾げている。ユウトはその反応に苦笑いを浮かべる。
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その後も二人は話ながら森を進んでいく。
二人は暫く黙って歩いていたが、ふとユウトが足を止めた。
「キュイ?」
テュポンは『どうしたの?』と言うふうにこちらを見つめてくる。
テュポンに見つめられる中、ユウトはお腹を押さえて照れるように笑いながら答える。
「アハハ、お腹が空いちゃって」
朝から何も食べてないからもうペコペコだよ。
それに、太陽が真上って事は昼頃って事だよな? 朝からずっと歩いてるってこともあり、何時もより腹が空いている。
そんなユウトを見ながらテュポンは『なにそれ?』っと首を傾げている。
「……?」
その姿にユウトはある疑惑が頭に浮かんだ。でもあえてそれを否定する。
まさかそんな事はないよな? ないない。……でも、もしそうなら。
聞いてみるか。
「……テュポンはお腹空かないのか?」
いや、まさか生物としてそんな事あるはずないよな。
その思いをこめた瞳でテュポンを見つめる。
「キュイ?……キュイ!」
テュポンは少し間があってから首を縦に振るった。
「…………」
ユウトはお腹が空いている事すら忘れるぐらい驚いていた。
そして、自分の手を見つめた。
「いったい何れくらい自然の摂理を無視してんだよ俺のスキルは……」
「キュイ?」
はぁ、さすが固有スキル、自然の摂理の無視するほど協力ですか。こりゃああの王女が欲しがるのも頷けるわ。
「はぁ、もう考えないようにしよう。……それより食べ物を探そう」
ユウトは深い溜め息を吐いて食べ物を探しだす。
その姿にテュポンはまた首を傾げる。
********
「さて、何かあるかな?」
辺りを見渡すが木ばっかりだな。まぁ、森だから当然か。
「木の実とかでもいいんだけどな。そこら辺に落ちてないか…な? ってキノコがメッチャ生えてるじゃん!」
上ばっかり見て気付かなかったよ。
試しにと足元のキノコを拾い上げる。
「これ食えるのか? 何か毒々しい色してんだけど」
毒があるか分からないと食べられないな。どうしたものか……。
「どうにか調べられないかな?」
ん? 調べるって調べられるじゃん!!
「そうだよ! 鑑定のスキルで見ればいいんだよ!」
何で忘れていたんだろうね?
「まぁ、やってみようか。【鑑定】」
キノコ
毒々しい見た目だけど食べれば美味しいよ!!
「相変わらずの説明ありがとう。そして、食料ゲットだぜ!! ……なんちゃって?」
何だろうこの気恥ずかしさ? 誰かツッコんでくれたらいいんだけどな。
その後は黙々とキノコを集めては鑑定をしていった。
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「ふぅ、結構集まったな」
10分位集めて30個は多いのか少ないのか? まぁ、いいや。
「それより生で食うのはさすがに嫌だよな。でも、火をつける事は出来ないし、どうしたものか」
「キュイ?」
ん? 多分火が欲しいのって言ってるんだよな。
「うん。火が欲しいな」
「キュイキュイ!!」
テュポンは胸を叩いて『火なら任せて!!』っと胸をはる。
「出せるのか? でも、テュポンにそんなスキルは無かったような?」
「キュイ!」
『大丈夫!』と胸をはる。
「そうか? ならこの木の枝がたくさんあるところに火をつけてくれる?」
ユウトの言葉にテュポンが頷き、何かをいい始めた。
「キュイキュイキュイキューイ!!」
「な、なんだ?」
何かを言っているテュポンの口の前に魔法陣が浮かび上がってくている。
ちょっとヤバそうな気がしてきたぞ! それにドラゴンに火と口の前の魔法陣ってこれアレじゃねーか?
「ちょ、ちょっと待て! ブレスはヤバイって!」
何れくらいの威力があるか分からないけどライターとかの代わりにブレスはないだろう!
しかし、ユウトの言葉は遅かった。
もう既にブレスの準備は整っていた。
「キューイキュイ!」
テュポンがブレスを噴く瞬間にユウトはしゃがみこむ。
しかし、何時まで経ってもブレスが襲ってくることはない。
あれ? ブレス来ないな?
ユウトはいそいそと頭を上げる。そこには木の枝に火をつけて笑顔のテュポンの顔があった。
それを見た途端にユウトは申し訳ない気持ちがいぱっいになった。
「アハハ、ありがとうテュポン。それにしても急にブレスを噴くと思ったからビックリしちゃったよ。でも、ちゃんと手加減してくれたから良かったよ」
「キュイ!」
『当然だよ!』と、テュポンが言っているのが分かる。……はは、ホント申し訳ないよ。
「さて、気分を変えて早くキノコを食べよう」
キノコを木の枝に刺して火で炙っていく。
「焼けたかな? じゃあいただきます。……ん! 意外と旨いなこのキノコ! これなら何個でも食べられる!」
ユウトは次々と焼いて食べていく。
キノコはみるみる内に減っていき、最後の1つも平らげた。
「ふぅ、旨かった。これで当分は腹も空かないだろう。
さて、早く火を消して町へ急ぐか」
「キュイ!」
ユウトはさっさと火に砂をかけて消していく。
するとテュポンが急に唸りはじめた。
「キュウ!!」
「どうしたテュポン?」
今までに見たことのない表情で森を見つめている。
「何かいるのか?」
「キュイ」
という事はモンスターか。さっきの火が原因かな? にしてもテュポンのあの表情は何かヤバイのかね。
「キュイ!!」
テュポンが隠れているモンスターへ威厳をする。
ガサッ!ゴソッ!
ッ! 何が出てくる!?
「ギャッ!ギャッ!ギャッ!」
出てきたモンスターは肌が緑色をしていて、人の子供くらいの身長に耳が少し尖っていた。
これってゲームとかでよくいるゴブリンだよな? ゴブリンぐらいにテュポンはあんな表情になるのか? もしかしたら俺が知っているゴブリンじゃないかも知れないな。
鑑定をしてみるか。確かイメージするだけでも発動出来たよな。
(よし、【鑑定】!!)
ゴブリン ★ Lv.3
モンスターの中じゃあ最低層のモンスターだよ
鑑定じゃあステータスまで見れないのか。そんな事より何でテュポンはあんな表情をしてたんだ? ユウトはテュポンの顔をもう一度見る。すると、テュポンが両手で鼻を押さえているのが見えた。
「って! ゴブリンが臭かったからあんな表情してたのかよッ!」
紛らわしいわッ! まぁ、でも強敵じゃなくて良かったよ。それに単体だし問題ないだろう。
「よし、戦ってみるか。この世界で俺の武術が何れだけ通用するのかもみたいしな」
「キュ、キュイ」
『が、頑張って』って、そんなに臭いか? まぁ、いいや。
「さて、かかってこいよ最低層」
「ギャッ!ギャーッ!」
挑発に怒ったのか、何も考えずに突っ込んでくる。
そんなゴブリンにユウトは……
「遅い!」
「ギャッ!?」
顎を殴り、脳震盪を起こさせた。
「ちょっと弱すぎないか?」
「ギャ、ギャッ!」
完全に勝負ありだ。ただ、止めをどうさすか? う~ん……あ! そうだ! アレで止めをさそう。
「じゃあもう終わりな?」
「ギャ、ギャッ!」
ゴブリンは必死に首を横に振るがユウトは止まらない。
「【引っ掻き】!!」
「ギャッ!?」
引っ掻きがゴブリンの首と胴体を切り離した。
それをしたユウトは……
「うぇ、いくらじいさんに人を殺す事の出来る武術を習ったからってさすがに首チョンパはグロいわ。それにあの死体どうしよ」
意外と気楽だった。
『レベルが上がりました』
『配下にゴブリンを追加しました』
そんなユウトの頭に機械的な声が響きわたった。
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