ブラック・マリーとヘタレ・チキン
ファルナとマリーの二人は、生徒会室で作戦会議を行っていた。
「先生があたしたちに泣き付いて来るなんて……」
「あれで教師が務まっているなんて、驚きね」
被害に遭った教師は散々な言われようである。
「でも、シャロンさんとナコちゃんの平和な学園生活を守るためでしょう?」
「そうだね」
「学園の情報屋だったかしら? そのままな名前ね」
「情報屋かぁ、ついに成敗するときが来た!」
「マリー、知っているの?」
「うん、ちょっとね」
マリーがにやりと笑った。
「ふーん、何かいい方法でもあるの?」
期待と不安が入り混じった顔でファルナが聞く。
「とっておきとそうじゃないのと、先生を生け贄にする方法があるよ」
マリーが再びにやりと笑う。
「不安だわ」
完全に不安しかなくなった顔でファルナが肩をすくめる。
「安心してって、絶対成功させるから」
心配は要らないとマリーが笑い、ファルナが呆れたように溜め息を吐いた。
「いや、心配なのは成否じゃなくて……はぁ、もういいわ」
「とりあえずとっておきじゃない方法は、情報を買い占める」
「情報屋だし、それは出来るかも。でもお金はともかく確実性が問題ね」
どうやら情報屋は信用されていないようである。
「まあコッソリばらされてもわからないしね」
「一応、先生を生け贄にする方法を聞いておくわ」
「先に先生の弱みをばらまいて、それの価値を無くしてしまう外道な戦法デス」
マリーが悪い笑みを浮かべながら最低な作戦を自慢げに語る。
「確かに外道ね。ゲスだわ。極悪非道で、もはやマリーが人に見えないわ」
「そんな冷たい目で言われるとさすがに心にささるよ」
「本当によく思い付いたわね」
ファルナがこめかみを抑えて首を振る。
「ほめられてない……」
当たり前である。
「じゃあもうとっておきの方法でいいよね」
「ちょっと待って、ちゃんと説明してくれるんでしょ?」
心配そうにファルナが問う。
「残念! これは逆に向こうの弱みを利用して黙らせる方法だからね、ばらしたら可哀想だし」
「大丈夫なの、それ?」
「あいつはちょっと痛い目見といたほうがいいから」
「まあ、生徒会に苦情とか嘆願書が届いたりするほどだものね」
生徒から教師まで被害に遭っており、今回はナコとシャロンにまで被害が及ぶとして対応が検討された。
しかし教師は役に立たず、学院長は自らは動かず、ファルナとマリーが適任として役目を押し付けたのだ。
学院の情報屋は、結局とっておきの方法で懲らしめることになったようだ。
「さてさて、約束の場所は倉庫の陰だったよね」
「そうね」
「情報を買いたいと偽って近づき……にやり。」
「……その顔はやめなさい」
「はい」
二人がアホな掛け合いをしている間に、どうやら情報屋のいる場所に近付いてきたようである。
「お、あんたら生徒会のトップ二人組じゃん、こんな場所に何の用だ?」
軽薄さを装った男子生徒が、二人を油断なく観察する。
「決まってるじゃない、情報をね」
マリーが決められたサインを見せ、二人が客だということを証明する。
「はっ、なるほどね。あんたら程の奴がうちに来るとは、光栄だぜ」
「噂はよく届くしね、悪名高い情報屋さん」
マリーと情報屋が、にやりと笑う。
「この二人にはちょっとついていけそうにないわね……」
ファルナから冷たい視線を送られたマリーが、ファルナに向けて手を降りながら、ゆっくりと情報屋へ近付いていく。
「少し耳を貸して」
情報屋は警戒しながらも、それに応じた。
「ん? ああ……」
マリーが情報屋の耳元に口を近付け、とっておきの言葉を囁いた。
「あんた、ファルナのことが好きなんだよね」
「! ……何の話だ?」
情報屋の動揺を感じ取ったマリーが、一気に畳み掛けていく。
「気付いてないと思ったの? 変態さん」
「な、何言ってんだ!」
思わず声を上げてしまう変態さん。ファルナと目が合い、慌てて反らした。
「?」
ファルナはただ首をかしげるだけだ。マリーがそこで待っていてと手で合図を送る。
「ばらしちゃっていいの?」
この情報屋はかなりのヘタレで、ヤケになっても想いを伝えるということなど出来ないだろうことを、マリーは知っていた。
「ストーキングしてたこととか――」
「やめろ」
まさしく変態さんであった。
「ちょっと取引をしたいだけだから」
そして、本題に入った。
「取引だと? 何の情報が欲しい」
「残念、情報を売って欲しくないの」
「何だと?」
「詳細はここに書いてあるから、このルールを破れば……」
「くっ、そんなもの……」
「いいの? 他にもいくつかネタはあるよ」
とてつもなく悪どい顔でマリーが囁く。
「このルールさえ守れば情報屋は続けていいから、ね?」
「……仕方ねぇ」
こうして学院の平和は守られたのだ。
「交渉成立だね」
マリーがファルナに向けて親指を立てた。
生徒会室に戻ってきた二人が、先程のことについて話始める。
「マリー、とっておきって結局なんだったの?」
「鈍いなぁファルナは」
「……悪かったわね」
ファルナが頬をふくらませ、マリーを睨み付けた。
「いや、悪くはないと思うよ?」
ファルナが鋭いと困ることが沢山ある、とマリーが焦る。
「これで平和は守られたのだ! ……ってね」
「どう見ても悪役だったけどね」
「ダークヒーローっていうのがあるの!」
大体悪役である。
「ほぼ悪役じゃない」
「うっ……」




