遠い異国の二人
守護ロボットを倒したあと、私達はナコを寝かせるために誰にも見つからないように一度寮へ戻ったところ、ちょうど部屋に戻っていたファルナとマリーに事情を説明しナコを任せ、学院長室へ三人で向かった。
二人は物分かりがよくて助かる。何か諦めたような目をしていた気がしたが、きっと気のせいだろう。
「学院長、入ってもいいか?」
「調査の結果は出ましたかな?」
学院長室へ入り、お茶を淹れている学院長に声をかける。
「その事で話がある」
「おや、そちらのお二方は?」
此方を向いた学院長が二人に気付く。
「私はイヴ、日ノ下の国の女王よ」
「自分は――」
「――あんたはいいの!」
「…………」
「扱いが酷くないか?」
「自分はこれが……いえ、これで良いのです」
なるほど、これが……いや、これで良いのか。
「ひ、日ノ下の国と言うと伝説に語られる結界に隠れた楽園の?」
「楽園なんて知らないけど、結界を張っているのはたしかね」
「その女王様がここにいらっしゃると言うことはその結界は解けたんですかの?」
「結界は解くわけにはいかないわ、だから抜け道を通ってきたの」
「抜け道とはまさかあの迷宮のことですかな?」
「迷宮? ……あれのこと。そうよ」
「それで、日ノ下の国の女王様がここへは何の御用でいらっしゃったのですかのう?」
そういえばまだ聞いていなかったな。
「シャロンとナコを日ノ下へ招待するためよ」
「私達を?」
「そうよ、あなたたち日本から来たんでしょう?」
日本……ナコの故郷で、恐らくこの世界には無い国だったか。
「日本について知っているのか」
「私は詳しく知らないわ、けどあなたたちに会って欲しい人がいるの」
その会って欲しい人が日本について知っているのだろうか。
「それと、ついでにこの国の王にも会っていくわ」
「国王様に、では急ぎ取り次ぎを致しましょうかの」
「あと、一番高い宿を用意しなさい」
「はっ、自分にお任せを」
「宿への紹介も書きましょうかの、地図はこちらに」
「失敗したらわさびを醤油で飲ませるからね」
「ごくり……」
いまの「ごくり……」はどちらなのだろうか。
「さすがに死んでしまいます」
なるほど、わさびと醤油はそんなに恐ろしい物なのか。
「じゃあ失敗しなきゃ良いのよ」
「はっ!」
果たして少年は大丈夫なのだろうか。
その後宿を取れたという報告を待って解散となった。イヴは国王に会った後宿で休み、明日の午後また訪ねてくるらしい。
暫くはここにいるつもりだったが、ナコにどうするか聞いておかなくては。




