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【完結】S級パーティーから追放された狩人、実は世界最強 ~射程9999の男、帝国の狙撃手として無双する~  作者: 茨木野
第2章

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57.戦いの覚悟


 ガンマと別れ、先に敵地へと潜入したリフィルたち。


 新兵器、魔法狙撃銃マジック・ライフルによって外にいた見張りの魔蟲族たちを全員無力化。

 リフィルたちは敵の本拠地である、巨大樹のなかに潜入成功。


『こっちや!』


 妖精リコリスの先導によって、3人は建物のなかへ侵入した。

 中は樹をくりぬいて作られた通路が縦横無尽に走っている。


 妖精達はこの中に捕らわれ、リヒターの兄ジョージ・ジョカリにより人体実験を受けていた。

 そのため、リコリスは中の様子を知っているのだ。


 しかし……。


「おかしいですねぇ」

『ああ、変や……蟲どもがおらへんわ』


 外には見張りが何人かいたのに、一転して中にはさっきから魔蟲族たちの姿が見えない。


「どういうことかしら?」

「……おそらく罠でしょうねぇ。二重の意味で」

「二重?」

「ええ。兄は敵がここに来るのは想定内なんだと思いますよぉー」

「……待ち構えてるってことね」

「そうなりますねぇ。ま、こちらにはフェリサ君がいますから、問題ないでしょう」

 

 こくん、とフェリサがうなずく。

 彼女は耳がいい。建物内に仕掛けられた罠を見抜くのに、長けている。


「フェリサ君が想定外だとは思いますが、それ以外は兄は見抜いてきてますねぇたぶん」

「なるほど……あまりここで色々考えてても無意味ってことね」

「ええ。想定内ってことでしょうから。さ、いきましょう」


 フェリサが手斧を持って、先を進んでいく。

 たまにこんこん、と壁を斧で叩く。


 フェリサは斧をブーメランの要領でぶんなげる。

 カーブの軌道を描きながら飛んでいった手斧が消えると同時に、どがん! という爆発音がした。


 フェリサがうなずくと、全員が走る。

 曲がった先には魔導人形ゴーレムが待ち構えていた。


「やはり罠ね。でもどうやってわかったの?」

「フェリサ君は耳がいいですから。壁に振動を与え、反響音で敵の待ち伏せを見抜いたのでしょぉ。すごい聴力です」


 褒められてもフェリサの表情は晴れない。

 兄が作戦遂行のための時間を稼ぐため、命を削って戦っているからだ。


 引き返したくなるフェリサだったが、ぐっ、とこらえて先へと進む。

 先ほどのリフィルの説得が効いてるのだ。


 兄はみんなを守るために戦っている。

 だから、自分も兄のように、みんなを守るために戦おうと。


 それに兄が負けるわけがないのである。

「先へ行きますよぉ」


 リコリスのナビゲーション、フェリサの罠探知を使って、一行はスムーズに内部を進んでいく。

 出てくる罠を次々と発見してみせるフェリサに、リヒター達は感心しきりであった。


 だがリヒターの表情は晴れない。

 リフィルはなんとなく理由を察していた。


「お兄さんと、戦うことになりそう?」

「まあ……衝突は避けられないでしょうねえ」


 リヒターはわかっているのだ。

 兄に説得は通じないと。


 そうなると刃を交えることになるだろう。

 実の兄と戦う覚悟が、果たしてこの人にあるのだろうか。


「…………」

「フェリサちゃんは、たぶん躊躇なく斧を振るうわよ? いいのね?」

「…………」

 

 リヒターは目を閉じて、はぁ……とため息をつく。


「ここで即答できれば、楽なんですけどねぇ……」


 おそらくはリヒタージョージとの仲は、あまり良好ではないのだろうとは察せられる。

 それでも、彼女からは、はっきりと迷いが表情から見て取れた。


「でも……ま、ガンマ君やフェリサ君が覚悟を見せてるなかで、ぼくだけがケツまくるわけにはいきませんからねぇ」


 リヒターたちはとある部屋の前までやってくる。

 魔道具の鍵で、入り口をロックされているようだ。


 フェリサがいくら斧で攻撃してもドアが開かない。


「その魔道具に暗号を入力しないと絶対にあかない仕組みになってます。さがってくださぁい。ぼくがやります」


 リヒターは魔道具タブレットを取り出して、端子を魔道具に貼り付ける。

 暗号を解読し、リヒターが番号を打ち込む。


 ごごご……とドアが自動で開いた。

 中にはいくつもの培養カプセルが立ち並んでいる。


 その最奥には、見上げるほどの巨大な【繭】があった。

 繭はどくんどくん……と脈打っている。

「あ、あんな大きな卵がふ化したら……」

「そんなことさせませんよぉ……って、台詞を、あなたも言うんですよねぇ兄さん?」


 リヒターがにらみつける先、卵の前に座っていたのは……。

 桃色髪の男、ジョージ・ジョカリ。


 どことなくリヒターと顔立ちは似ているが、しかし瞳の奥にはどうしようもない闇が広がっている。


「やあ妹よ。思ったより遅いじゃないか。私を殺す覚悟をするのに、時間がかかったのかな?」


 くつくつとジョージは笑っている。

 妹から殺意を向けられているというのに、どこ吹く風。


『ダチを返しにきてもらったで!』

「まだ、それはできないかな。妖精の力が、この卵をふ化するのに必要でね」


 培養カプセルの中には妖精達が捕まっていた。

 液体のなかでみな、苦悶の表情を浮かべている。


「…………」


 フェリサは手斧を培養カプセルに向かって投げる。


 がきんっ!


「…………!」

「邪魔されると困るんでね。抵抗させてもらうよ」


 ぱちんとジョージが指を鳴らすと、地面や壁から小さな卵が排出される。

 それは途中でふ化すると、改造人間へと変化した。


 蟲と人間の特徴を併せ持つ、異形の化け物に囲まれるリフィル達。


「想定内です。推して参りますよぉ、兄さん」


 リヒターは両手に銃を、リフィルは杖、フェリサは斧を構える。

 戦いの幕が、切って落とされた。

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