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【完結】S級パーティーから追放された狩人、実は世界最強 ~射程9999の男、帝国の狙撃手として無双する~  作者: 茨木野
第2章

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46.妖精と依頼



 人外魔境スタンピードの荒野にて

 リフィル先生の兵器……もとい、手料理を食べた俺たち。


 しばらく腹痛でダウンしていたのだが、ようやく、腹の調子が戻ってきた。

 ま、まさかあそこまでまずいとは……。よく吐かなかったもんだ。

 

 ちなみに我が妹は先生の料理をぺろりと食べていた。しかも美味い美味いと頬張っていたな。

 先生が虫を食べてる俺を見て、驚いていたけど、ああいう感覚だったのかね……。


 食事を終えた俺たちは、妖精であるリコリスから事情を聴取することにした。

 妖精。手のひらサイズの人形に見える、翅の生えた生き物。


 今まで十数年生きてきたけど、生で妖精を見るのは初めてだった。

 おとぎ話の中の存在じゃなかったんだな。


『わいらは妖精や。元々は帝国の北部、妖精郷アルフヘイムっちゅーっとこに住んどった』

「知ってるよ。というか、俺たちは帝国から来たんだ」

『なんやお隣さんやったんか。よくまあそんな遠いとこから来たな』

「そりゃこっちの台詞だよ。リコリス。おまえはどうして妖精郷アルフヘイムじゃなくて、西の人外魔境スタンピードにいるんだ?」


 すすっ、とリコリスが気まずそうに目線をそらす。

 狩人の目を持たなくても、何かやましいことがあったんだなと察せられる。


「なんかやらかして、故郷でも追い出されましたかぁ?」

『ちょ、ちょっといたずらしただけなんだ! なのに母ちゃんに妖精郷アルフヘイムを追われてよぉ……!』

「まあどんなおいたしたかはさておきですがぁ……。リコリス君、君が逃げてきたのは円卓山テーブルマウンテン、そうですね?」

『ああ。あそこの山頂から逃げてきたんや。せっかくわいが楽園つくたっちゅーのに』


 リヒター隊長からの問いかけに、リコリスが不満げにそう答える。

 楽園?


「あらなぁに、楽園って」

『文字通りの意味やで。緑生い茂げ、花々は咲き乱れ、果実たっくさんの楽園や。わい、頑張って作ったんやで。それをあの蟲どもめぇ……!』


 どうやらリコリスは故郷の妖精郷アルフヘイムを追われた後、新天地として円卓山テーブルマウンテンを選んだみたいだな。

 そこで魔蟲族からの介入を受けた……と。


「あそこで何があったんだ?」

『妙な髪色の変な人間が、蟲どもを引き連れてやってきたんや』


 ぴくっ、とリヒター隊長の表情が一瞬こわばる。

 蟲を連れた人間なんてそうはいない。いるとすれば改造人間を作ったあの男、隊長の兄であるジョージ・ジョカリ。


 俺でも気づいたのだ。隊長はもっと早くから気づいていたに違いない。

 ぎゅっ、と彼女が唇をかみしめる。自分の実の兄が悪事に荷担していたとしって、憤っているのだろうか。


『あのピンク髪男はあっちゅーまにわいの楽園を実験場に変えてしもおうた』

円卓山テーブルマウンテンを実験場にして、何を作ってるんだ?」

『そこまではわからん。ただ何人もの妖精が捕まっとった。わいもその一人や。仲間達がわいだけを逃がしてくれたけどな』


 仲間を呼んできて欲しい、ってところだろうか。

 あそこで魔蟲族の実験が行われてる。そこに並の冒険者が行ったところで、返り討ちになるのが目に見えている。


 蟲の駆除は、俺たち帝国軍人の仕事だ。

『なあ、あんたら強いやろ? おねがいや! 楽園を取り戻しておくれ!』


 ぽたぽたとリコリスが涙を流す。


『あそこには多くの仲間がいて、今なお酷い目にあっとるんや! せやけど、わいひとりじゃどうにも、奴らに太刀打ちできへん! 頼む……!』


 俺は仲間達を見回す。彼らの表情からは、リコリスに対する同情心がうかがえた。

 俺も同じだ。仕事でここに来たとはいえ、仲間との幸せな暮らしを理不尽に踏みにじった、あの蟲どもは絶対に許せない。


「任せてくれ、リコリス。俺たちが、おまえの仲間を救ってやる」

『ほんまか!? おおきに……! おおきに……!』


 リコリスは何度も頭を下げる。

 ぼたぼたと涙を流す様から、よほど仲間達が心配だったのがうかがえた。


「これからの作戦ですがぁ、いったん軍に報告し、援軍が来るのを待った方が得策ですねぇ」

『いや、そんな時間はあらへん』

「なに、どういうことですかぁ?」

『あのピンク髪の男は、おそろっしい実験しとった。巨大な蟲を作ろうとしてたんや』

「巨大な蟲……ですかぁ」


 今でも十分、魔蟲はサイズがでかい。それを凌駕するとなると、もはや怪物といってもいいほどだろう。

 そんな化け物が、この土地でのさばっているのか……。


『あいつが最高傑作って言ってた蟲が、明後日には完成するつっとった。叩くなら今夜や』

「明後日か……急だな。というか、俺らに会わなかったら、今頃どうしてたんだよ?」


 運良く合流できてたからいいものの、下手したら誰とも会えずに、巨大蟲がふかしていたかも知れない。

 そう思うとぞっとする。


『そんときゃ、仲間達が捨て身の自爆魔法をかます手はずになっとたわ。わいは仲間の命がおしい。みんなと再会して、またのんきに暮らしたい。やから、手を尽くしたわけや』


 次善の策はきちんと用意していた訳か。しかし、妖精は気合い入ってるな。

 外に脅威を逃がさないように、自分たちの命を張るなんて。


「そうと決まれば、戻ってる暇はありませんね。報告をしたら、すぐに出発しないと」


 こうして俺たちは、妖精からの依頼を受けることにして、一同、円卓山テーブルマウンテンへと向かうのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] フェリサも顔色悪くしてだだだだっ!じゃなかったでしたっけ??元気にうまいうまい、は辻褄合わないですよ〜 [一言] ご自身で最初から読み直してみてはいかがでしょう??
[気になる点] 前の話でフェリサは 顔色がみるみるうちに悪くなって……。 だだだだ! と外に出て行った。 ってありましたが美味しと言って食べたのですか?
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