176.最終作戦
俺たちは皇帝陛下たち、そして、メイベルを救出するため、魔蟲どもの拠点、妖精郷へ乗り込むことになった。
軍部は少数精鋭で救出部隊を作り、そして妖精郷へと軍人たちを送り込む。
マリク隊長、そしてリヒター隊長の作った魔道具を装備し、進軍を開始。
妖精郷は帝都から以外に近く、馬車で3日くらいで着く位置にある。
だが、マリク隊長の作った魔道具、魔法自動車によって、その時間は半日に短縮された。
馬と違って魔法で動くため、休ませる必要も無く、一定の速度で進むことが出来る。
とても便利な魔道具だ。
やがて、俺たちは妖精郷が見える位置にまでやってきた。
陣を張り、そして機を待つ。
俺は蜻蛉の矢で周辺、そして森の中を偵察する。
妖精郷の森は帝都よりも狭い。
そして内部は常闇が広がっており、何の装備もしてない人間が行けば、たちまち迷子になってしまうだろう。
蜻蛉の矢を駆使し、俺は妖精郷内部の正確な図面を引く。
それを隊長たちに共有。
ほどなくして、マリク隊長が、救出部隊全員を集めた。
「よし、作戦を説明するぞ」
リスのマリク隊長が、シャーロット副隊長の肩に乗っかった状態で言う。
「おれたちの第一目的は、妖精郷内部にいる、捕らわれた人たちの奪還だ」
第一、と強調したのは、次の目的があるからだろう。
「第二目的は、魔蟲の根絶だ。リヒター説明を」
リヒター・ジョカリ隊長がうなずいて説明する。
「我々を苦しめ続けている魔蟲、それを根絶する方法がわかりましたぁ。それは、魔蟲たちの王を討伐することです」
「……魔蟲の王、か」
剛剣のヴィクターが言っていたな。
彼は王直属の護衛軍だと。
つまり彼らのトップ……王が存在するということだ。
「魔蟲王は魔蟲たちの王であり、配下を生み出すさいに、自分の魂を切り分けて与えている。ゆえに、魔蟲王の肉体が滅びれば、その魂も死滅……。魔蟲たちも死ぬと言うことです」
「ようするに、今回は、陛下たちを救出する、そして魔蟲王を討伐する。この二つを行う」
すっ、とオスカーが手を上げる。
「なぜ同時に行うのかね? 我々にとって一番大事なのは陛下の命では?」
「それは当たり前だ。しかし今は好機なんだよ」
とマリク隊長が答える。
「やつらは陛下を奪うために、かなりの人員を割いた。剛剣のヴィクターをはじめとした、護衛軍たちを派遣。しかしやつらは胡桃隊が倒した」
「なるほど……やつらにとっての秘蔵っ子が、現在かなりの数減らされてる状態っていうんだね」
「ああ。こちらも危機的状況ではあるが、しかしチャンスでもある。向こうはかなり手負いだ。この機を逃すわけにはいかない」
俺も隊長の意見に同意だ。
魔蟲はほっとくと直ぐに増えるからな。数が減っていること。そして、敵側も、俺たちの主目的が、陛下奪還にあると思わせておくことで、敵の裏をかくことができる。
「まとめるぞ。今回の作戦は、1.魔蟲王を討伐、2.陛下たち捕虜の奪還。この二つを目的に動いていく」




