157.反撃
ガンマの妹フェリサは魔蟲族の護衛軍がひとり、肉弾のフンコロと戦闘中。
敵は真球という、接地面ゼロの完全な球体になれる能力持ちであることが、兄ガンマの助言により判明。
触れることのできない、完全なる球体を前に、果たしてフェリサはどうやって攻略するかというと……。
「…………」
フェリサは、深く腰を落とす。
両手を広げて、動かなくなった。
「なんじゃ貴様……わしを嘗めておるのか……?」
『あ、姐さん! 無茶や! フンコロのやつを、真正面から受け止めるなんて!!!!!』
敵は真球となれる。
こちらから触れることは決してできないし、触れようとするとその部分が無限の圧力で消し飛ぶ。
圧力は力÷面積。
接地面積が無限大にゼロに近いのなら、無限に力が発生する。
そんな凄まじい力を前に……。
フェリサは、まさかの正面から挑むようだ。
「ふぇふぇ……血迷ったか……」
『! 姐さん……そうか。そういうことか……』
リコリスは心を読める。
フェリサの作戦を読み、そして……。
『わかった、姐さん……わいは勝つってしんじとるで!!!!』
リコリスは待避する。
「信じるってわりに、逃げるのか?」
『ちゃうわ、あほ。姐さんのすることに、巻き込まれんようにするだけや』
フンコロはフェリサに疑念のまなざしをむける。
はったりだろうとは思う。
だが……。
フェリサの顔に恐怖の色は浮かんでいない。
堂々と、待ち構えてる。
「ブラフだ。動揺を誘うだけの」
そう判断し、フンコロは球体となって、距離を取る。
敵が逃げないのなら、最大の勢いを持って、一直線に潰す……!
……しかしフンコロは気づいてなかった。
自分が、フェリサの取った行動に、対応していることに。
それが狩人の張った罠だと知らずに。
フェリサが用意した、勝負の土場にあがってしまった。
それが……彼の敗因となると知らずに。




