閑話:悪役令嬢はお風呂に入りたい・中編(リリアーナ視点)
「確か、浴室にも水道の配管は通っていたな?」
フランが言うと、兄様がこくりと頷いた。
「はい。上層階の貯水槽から各フロアのトイレと洗面所、風呂場などに水を供給しています」
へー。
各フロアに水洗トイレがあって清潔だなあ、って思ってたけど、そんな近代的な設備があったんだ。
「それを、二股に分けて……片方の水を供給直前に高火力で温めて注いだらどうだ」
「熱湯と水を浴槽で混ぜるの?」
「水の配管を合流させて、適温の温水を注いでもいい」
フランは紙に一本の線が二股になり、また合流する様子を描いた。別れた片方に、『加熱設備』と書き加える。
「問題は加熱方法よね」
当然、竃などは使えない。
私は魔法使い師弟を見た。
「魔法でどうにかならないの、ディッツ、ジェイド」
「コンパクトで高火力っつーと火魔法が一番ラクだな。書いてみろ、ジェイド」
「えええ……っと……」
ジェイドは懐から虹色に光るチョークのようなものを取り出すと、テーブルの上に魔法陣を描き始めた。
「単純に考えると……こう……かな?」
描かれた図形を兄様がまじまじと見つめる。
「うーん、悪くないけど1点で加熱してしまうと、高熱でパイプが痛みそうだね」
「加熱する箇所を長くするか?」
兄様の意見を聞いて、フランが図を修正する。左右対称だった配管が、加熱設備のある方だけ長くのびた。
「そうすると、今度は全体の魔力消費効率が悪くなりませんか」
「これを使うのは、魔力量の少ないメイドさんたち、ですからね……」
「なら、パイプを折りたたむのはどうだ?」
フランはうねうねとパイプを蛇行させる。それを見て兄様が目を輝かせた。
「さすが先輩ですね。折りたたんでしまえば、一か所に魔力を込めるだけで、パイプ全体の水を温められる……すごく効率がいいと思います。曲がったパイプは職人に作らせるとして……ジェイド、この形に合った術式は組める?」
ジェイドは首をかしげながら、テーブルの上の魔法陣を修正した。
「えっと……検証が必要、だけど……これを配管に仕込めば、使用者が魔力を通すだけでお湯ができる……と、思います」
「すごい、ジェイド!」
「あ、で、でも! 魔法陣用の塗料は、魔力を通しやすい代わりに落ちやすくて……使うたびに書かないと、うまく動かない、かも」
「それなら、これを使ってみるか」
兄様は急に立ち上がると、自分の荷物から小瓶を取り出した。中にはとろりとした透明な液体が入っている。
「最近王都で開発された、定着液だ。魔力を通しやすいのが特性で、利用方法を考えていたところだったんだが……今書いた魔法陣の上に塗れば、崩れなくなるんじゃないか?」
工作に使うニスみたいなものかな?
ぺたぺたとチョークの上から定着液を塗ってみる。文字はにじむこともかすれることもなく、そこに固定された。
「少し魔力が消費されるが、蛇口から湯が出るのなら、風呂を入れる手間は大幅に減るだろうな」
「そうね……」
あれ?
なんか、瞬間湯沸かし器給湯システム的なものができてる……?
使ってるのは、ガスじゃなくて魔力だけど。
魔法陣を見ながら、私はおずおずと口を開いた。
「あのさ……これ、台所と洗濯室にも設置したら、めちゃくちゃ便利になるんじゃ……ないかな?」
「ああ、そういえばそっちも湯を使うな」
フランは配管の図の隣に、台所、洗濯室、と追記する。
「……というか、このシステム自体を売りに出したら商売になるんじゃないか?」
兄様は魔法陣をじっと見つめる。それを聞いて、フィーアが肩をすくめた。
「それはどうでしょうか、若様」
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