白銀の鎧『ミセリコルデ』
「リリアーナ……?」
ミセリコルデのコクピットから顔を出した私を見て、フランは呆然とそこに立ち尽くした。気持ちはわかる。いきなり巨大ロボットが登場したかと思ったら、中から私が出てくるなんて予想外だと思う。
でも、ぼんやりしている時間はない。サブモニターには、『ランス』のステータスが表示されている。
「早く乗って! 『ランス』はまだ生きてるわ!」
私はフランに向かって必死に叫んだ。
「運ぶだけならともかく、私ひとりでバトルは無理いぃぃ!」
「わかった」
フランはすぐにコクピットへとのぼってきた。私はメイン操縦席から副操縦席に移動する。入れ替わりに、フランがメイン操縦席におさまった。
ハッチが閉まって、モニターに電源が入る。丸い全方位モニターに外の様子が映し出されて、外の様子を透視しているような感覚になる。
「フラン、操縦できるわよね」
「一応な」
もちおに確認してもらったところ、白銀の鎧の操縦シミュレーターにフランがアクセスした記録が残っていた。空き時間に操縦方法を確認していたらしい。
彼にまかせればいけるはず、たぶん。
『ミセリコルデ』は立ち上がると後ろを振り返った。
飛び蹴りを食らって地面にめり込んでいた『ランス』がゆっくりと体を起こしている。
『メインパイロットとコパイロットのペアリングを確認。両者の魔力連携を開始します』
もちおが静かな声でステータスを通知してきた。すぐ目の前の席にいるフランが顔をあげる。
「ペアリング?」
「細かい説明はあと! 私ならフランの補助ができるってことだけ、わかってればいいわ」
「……了解。確かに、聞いてる暇はないらしい!」
ぐん、と『ミセリコルデ』の機体が傾いた。ランスからの攻撃を避けたのだ。
距離をとり、短剣を構える。
『貴様ぁアッ!!』
行く手をふさがれて、『ランス』が吠えた。
巨大ロボのハッチ越しなのに、叫び声がびりびりと響いてくる。
「あれに乗ってるのって、ヘルムートよね? めちゃくちゃキレてるけど、なにがあったの」
「お姫様を盗み出した」
「なるほど? 大事に囲ってたシュゼットを救出されたから、怒ってるのね。もちお、シュゼットの状況は?」
声をかけると、すぐにイケボのレスポンスがあった。
『シュゼット様の生存を確認。現在、グラストン様とともに戦場から離れようとしています。同じ集団に、ジェイド様とツヴァイも含まれています』
サブモニターに、固まって走る騎士たちの姿が映し出された。中央に、シュゼットを抱えて走るグラストンの姿がある。その両脇を白いマントを着たジェイドと、黒いフードを被ったツヴァイが並走していた。
「グラストンたちが守ってるなら、とりあえずは大丈夫ね。戦闘に集中してよさそう」
「だが、『ランス』の制圧は難しいぞ」
ぎいん、と嫌な音が間近で響いた。
『ミセリコルデ』が、『ランス』の槍をはじいたようだ。
二度、三度と鋭い槍が繰り出される。
フランはそれらすべてを、短剣を使っていなしてみせた。そしてまた、相手から距離をとる。防戦一方だ。
「もしかして、反撃しづらい?」
「機体性能はほぼ同じのようだが、その分リーチの差が痛い」
そういえば、こちらには剣が一本しかなかったんだった。
しかも『ミセリコルデ』はとどめの剣。刃先は鋭いが、刀身は短い。そもそも戦場でメインウェポンとして使うような武器じゃない。
「慌てて出て来たから、武器の換装まではできなかったのよね」
ぎん、とまた『ミセリコルデ』が槍をいなした。
中で操縦しているのはヘルムート。腐っても王子の護衛役を務めるほどの槍の使い手だ。槍同士ならともかく、小さな剣一本では攻めきれない。
「問題はリーチの差……剣の性能自体はいいから、距離を詰められれば可能性はあるわよね」
「考えは間違ってない」
すぐに肯定が返ってきた。この方向で考えてよさそうだ。
「じゃあ、私が隙を作るわ」
「何かあるのか?」
フランが振り向かずにたずねてきた。見えないとわかりつつも、私はにやっと笑ってみせる。
「とっておきの、奥の手を披露するわ!」
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