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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は婚約を破棄したい

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絶体絶命(フランドール視点)

 戦場を横切って、俺たちはひたすら隠し通路の入り口に向かって走った。

 スマホのGPS機能のおかげで、直前まで彼らがいた場所はわかっている。このまま向かっても、そう大きくすれ違うことはないだろう。


「フラン先輩!」


 予想の通り、隠し通路と戦場を結ぶ林の中でグラストンが声をかけてきた。シュゼット姫を抱えて立つ彼のそばには、騎士数名とツヴァイの姿もあった。


「何事ですか、あれは」

「ヘルムートが白銀の鎧『ランス』を引っ張り出して暴れている」

「はくぎ……?」


 そこまで言って、グラストンは絶句した。

 無理もない。

『ランス』は彼らランス一族の象徴だ。

 乱心者に利用されるなど、あってはならない事態だ。


「とにかく一旦逃げるぞ。あんなものが出て来たのでは戦いにならない。『乙女の心臓』を復活させて、他の白銀の鎧で戦うしかないだろう」

「そんな途方もない……」

「可能性がないわけじゃない。議論はあとだ、走れ」


 俺は答えを待たずに走り出す。あわててグラストンたちも追って来た。

 王都へとつながる街道に出ようとした時だった。


『しュゼット……さマ……』


 ずん、と白銀の鎧がこちらに向かってくる。さきほどの無差別攻撃と違い、あきらかに目的を持った足取りだった。

 こちらの姫君を見つけたのだろう。


「ひっ!」


 シュゼットがグラストンの肩にしがみついた。その顔は蒼白だ。


「フラン先輩……」

「逃げろ」


 短く告げる。

 これ以外の指示など、出しようがなかった。

 グラストンはシュゼットを抱えて走り出す。それを見て、白銀の鎧が吠えた。


『しゅぜっトサまアぁぁぁぁ! あなタも、ワタしをすてルのかぁぁ!』


 無理やり攫っておいて何をいまさら。

 しかし、俺たちの心情など狂人は理解しない。


『待てエェェ!』


 ぶん、と金色の槍が空を薙ぐ。

 稚拙な一撃だが、その手に持つ武器は神の作ったものだ。強烈な衝撃波がこちらに向かってくる。


「グラストン!」


 彼らをかばうように、衝撃波の前に体を投げ出して術を展開する。

 背中が一瞬、焼けるように熱くなったかと思うと、周囲にドーム状の壁ができた。

 ばきん! と派手な音がして、衝撃波がはじかれる。


「フラン先輩!」

「振り向くな!!」


『ランス』見据えたまま、振り向かず叱咤する。

 上着に仕込んでいた緊急防御魔法に残存魔力を全部つぎこんだせいで、頭がくらくらする。すぐには立ち上がれそうになかった。

 白銀の鎧は、また一歩こちらに近づいてくる。

 無駄かもしれない。

 もう間に合わないかもしれない。

 それでもぎりぎりまで、あがくしかない。


「フランドール様」


 ジェイドがそばにきて、俺を助け起こした。


「お前も逃げてよかったんだが」

「あなたを見捨てたら、フィーアに殺されますよ」

「違いない」


 冗談に思わず笑みがこぼれた。

 目の前で『ランス』が槍を振りかぶる。


「ジェイド、攻撃を防げるか?」

「衝撃波ならなんとか。でも、槍そのものは無理ですね」

「だよな……」


 俺たちの頭上にあるのは、絶望だった。

 さすがにあがく手段が思いつかない。

 なんという理不尽だろう。

 俺はここまでなのか。

 あの女をこの手に抱かずに終わるのか。

 愛する者の笑顔を、拝むことはできないのか。

 嫌だ。

 死にたくない。

 俺は未来を手にしたいんだ。

 無駄と知りつつ、もう一度防御魔法を展開しようとした時だった。

 流星が、落ちて来た。


『ア?』


 天空から、まばゆい光がまっすぐに『ランス』へと突っ込んでくる。

 ドカンとすさまじい音がして、大地が震える。再度の衝撃に、俺たちはまた吹っ飛ばされた。

 必死に体を起こし、ふたたび開けたとき、そこには白銀の鎧が二体存在していた。


「は……」


『ランス』が地面に倒れ伏し、その隣に新たな鎧が立っている。衝撃で全部は見えてなかったが、どうも『ランス』に飛び蹴りをくらわしたらしい。

 新しい鎧のサイズや質感は『ランス』と変わらない。

 だが、胸に刻まれた紋章は剣。そして、手には小ぶりな剣を持っている。


「ミセリコルデ……?」


 間違いない、わが宰相家が受け継ぐべき鎧だ。

 呆然と見上げていると、『ミセリコルデ』がこちらに向かってきた。

 俺の前までくると、膝をついて腹のハッチを開く。

 そこに座っていたのは、黒髪の少女だった。

 会いたいと。

 最期に一目だけでも見たいと願った、愛しい女だ。

 俺は夢でも見ているんだろうか? あまりの状況に、恋人が光って見える。

 ……いや、そんな気がするだけじゃない。本当に、花びらのような金色の光をまとわせている。

 何が起きているんだ、これは。

 呆然とする俺に、彼女は赤い瞳をまっすぐに向けた。


「フラン、乗って!」

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