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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は婚約を破棄したい

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攻城戦(フランドール視点)

 どごん、と轟音を響かせて破城槌が城門に激突した。ランスの城壁全体がびりびりと震える。だがしかし、堅牢な城門はそれでも衝撃に耐えきった。

 城の無事な姿を見て、騎士たちの間からいらだちの声が上がった。


「さすが名城ランス。頑丈だな」


 後方の指揮所から彼らを見ていた俺は小さく息をついた。

 今使っている攻城兵器は国内でも五指に入るほどの大型なものだ。あれで城壁にヒビすら入らないとは思わなかった。その堅い守りには思わず称賛の声が漏れてしまう。

 城門の奥から甲高い男の笑い声が響いてくる。

 者言わぬ死者の騎士団の中で唯一言葉を発する生者、ヘルムートだ。城壁に反響して、何を言っているか正確なところはわからないが、どうも頑丈な門に無駄な攻撃を加えている俺たちをあざ笑っているらしい。


「あの城壁、作ったのはヘルムートじゃないんですけどねえ」


 医療従事者を示す白いマントを羽織り、隣に立っているジェイドがあきれ顔になる。


「己の一族のものはすべて、己のものと思っているのだろう」


 貴族家の御曹司にありがちな勘違いだ。祖先が連綿と築いてきたものを自分の一部と認識し、思うままに振りかざす。大抵その先に待っているのは破滅なのだが。


「だいたい、こちらの戦力が破城槌程度なわけがあるか」


 攻城戦にあたり、自軍には火矢や爆弾、爆発魔法など、二次被害の出る武器の使用を禁じていた。言うまでもなく、シュゼット姫に怪我をさせないためである。

 現状、堅牢な名城を落とすにはまったく火力が足りていない。だがそもそも、現在行われている戦闘はあくまで陽動。

 本命はツヴァイとともに城内に潜入したグラストンだ。

 彼がシュゼット姫との接触に成功したという報告はすでに受けている。地下通路に入ったため、現在は通信が途絶えているが、彼らがランス城からの脱出に成功すれば、事態が大きく動くはずだ。


『フラン先輩!』


 片耳に装着していたイヤホンに、グラストンの声が響いてきた。

 はっと顔をあげると、ジェイドもこちらを見ている。彼もイヤホンとスマートグラスを通して同じ情報を受け取ったのだろう。

 グラストンの声は息があがって弾んでいた。何かあったのだろうか。


『シュゼット姫の救出に成功しました。隠し通路から城外に出たところです』

「よくやった」

『ただ、追ってきたアンデッド兵の始末に手間取り、出口に待機させていた騎士数名が負傷。用意していた馬がつぶされました』


 息が上がっていたのは戦闘のせいだったか。


「姫君に怪我は?」

『ありません。ただ、幽閉生活で体力が落ちており、自力で走れません。俺が抱えてお連れします』

「わかった。こちらからも馬をつけた迎えを出す。ジェイド……」


 部隊で最も信頼できる魔法使いを振り返ると、首を振られてしまった。


「ボクはお嬢様の命令でここにいます。戦闘終了までフランドール様のそばを離れませんからね」

「お前は命令系統が違うんだったな……」


 ジェイドはそもそも、俺を守るためにハルバード家から派遣されている。戦闘状態の今、俺の護衛を放棄できないという主張は筋が通っていた。

 ありがたいような、はがゆいような。


「わかった。迎えは別の者にまかせる」


 俺は騎士数名に命じて、彼らのところに向かわせる。

 救助に必要な指示を出し終わったあと、立ち上がって隊列を組む騎士たちに叫んだ。


「ただいまより、作戦をフェーズツーに移行する!」


 おお、と騎士たちから声があがった。

 弓兵部隊の間に次々と火が灯される。奥にさげられていた投石器が、前方へと運ばれてきた。そのほか、城を徹底的に破壊するための兵器が前線に現れる。


「ランス城を破壊せよ!」


 命令を合図に、いっせいに攻撃が始まった。

 炎を纏った矢が降り注ぎ、燃える岩が投げ込まれる。突然の攻勢にランス城の城壁はなすすべもなく削られていく。


「……ヘルムートが、城壁から離脱しました」


 ドローンを使って、ランス城を監視していたジェイドが報告した。映像をスマートグラス越しに注視しているのだろう。眼鏡に手をあてて、あらぬ方向を見つめている。


「奥へと向かっています」


 突然攻撃作戦が変更され、驚いているのだろうか。


「次に向かうのは作戦室か、城主の部屋か……」


 行動を予測していると、ジェイドがぴくっと顔をあげた。


「いえ……中庭を抜けて、地下に向かうようです」

「なぜだ?」


 ヘルムートにとって、さらってきたシュゼット姫こそが最重要護衛対象だ。騎士が主君のもとへと駆けつけず、他に向かうなどありえない。


「シュゼット姫の不在に気が付いたか?」

「その可能性もありますが、この状況で地下を目指す理由がわかりません」

「グラストンが使ったような抜け道があるならまだしも、ただ地下にあるだけの部屋では、上階の炎で蒸し焼きになるだけだぞ」

「ですよね。もちお、中庭の地下には何がある?」


 ジェイドが管理AIに命令する。白い猫は視界の端で首を振った。


『わかりません。グラストン様からいただいた地図情報には、部屋の記載はありませんでした』

「建物の内部構造は観測できなかったんだったな」


 数日前、AIの作り出したランス城の立体模型を思い出す。中庭には何もなかったはずだ。

 だがグラストンはなぜ地下に向かった?

 あそこには何がある?

 俺は何を見落としている?

 自分たちが相手にしているのは、狂った騎士候補生だけではない。悪意を持って暗躍する邪神だ。

 ただ攻め滅ぼされておしまいになるシナリオを、用意しているとは思えない。

 何があったら、一番怖い?

 何があったら、一番困る?

 考えろ。

 あいつは最も不都合な事態を引き起こして笑うやつだ。


「フランドール様!」


 ジェイドが声をあげた。

 はっとして城を見ると、ヘルムートが逃げ込んだ中庭から光が噴き出していた。

 何が燃えている光かはわからない。

 とにかく、目もくらむような光の柱があらわれ、そこを中心に瓦礫が外へと飛ばされていく。敵も味方も関係ない。近くにいた者はその勢いに吹っ飛ばされた。


「全隊、さがれ!」


 やばいと判断して叫ぶ。

 騎士たちもまずいと感じていたのだろう。突撃の勢いが止まる。

 柱の光が収まった時、そこから現れたのは白銀に輝く巨大な鎧だった。

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