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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は婚約を破棄したい

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戦闘開始(シュゼット視点)

 けたたましいラッパの音が突然聞こえてきた。進軍を促す太鼓や人の雄たけびがその後に続く。さらに、金属がぶつかり合う音も響いてくる。


「……始まりましたわね」


 私は壁を背にしながら、横目でおそるおそる窓の外をうかがった。

 城の一番奥にある城主の部屋からの視界は広くない。

 景色だけなら何事も起こってないように見えた。

 だけどただならない音はずっと続いている。

 コッコッコッコ、とすぐそばの廊下を足音が近づいてきた。すぐにゴンゴン、と鍵のかかったドアがノックされた。


「どなた?」

「あなたの騎士です」


 認定した覚えのない『私の騎士』は誇らしげにそう名乗る。


「ドア越しに失礼します。あなたを狙う不貞の輩が攻撃を始めました」

「……そう」

「しかしご安心ください、すぐに迎え撃ってまいりますので」


 主君を守るために戦う。騎士としてこれほど心躍るものはないのだろう。戦いに赴くというのに、声は嬉しそうにはずんでいる。


「私はここで待機しています。どうぞあなたは目の前の敵に集中してください」

「かしこまりました!」


 激励の言葉を受け取ったことで、ヘルムートの声がまた明るくなる。スキップでもしそうな勢いで、またコツコツと足音が遠ざかっていった。


「……ふう。これで、よし」


 ああ言っておけば、ヘルムートの注意は敵へ向くだろう。

 私は立ち上がるとクローゼットへと向かった。用意された中でも、比較的丈が短くて動きやすいシンプルなドレスに着替える。

 この城を取り囲んでいた人々は、数日前に使い魔で私の存在を確認していた。その上で攻撃を仕掛けたからには、考えがあるはず。いつになるかわからないが、必ずどこかで接触を図るだろう。

 深窓の姫君として育てられた自分に戦う術はない。しかし、それでも私には手もあれば足もある。救助者に従って走るくらいはできなければ。

 あらかじめまとめておいた手荷物もポーチにいれて肩から下げる。ハンドバッグは持たない。極力手に何ももたないほうがいいのだと、リリィとクリスから教わった。

 戦いの音は絶え間なく続いている。

 接触があるのは、空からか。それとも廊下からか。

 私が窓の外に目を向けた瞬間、部屋の奥でドカン! とすさまじい音が鳴った。


「ひゃっ!」


 思わず身をすくめて振り返る。

 部屋の側面、壁に作りつけられた本棚が揺れていた。ドゴ、ドゴン、と音がするたび壁側から室内に向かって本棚が跳ねる。衝撃で本が棚から放り出されて床に散らばった。

 突然の異常事態に、何をどうしていいかわからず、私はポーチの紐を握りしめて立ちつくすしかない。

 これは見ていていい事象なのだろうか。

 今すぐ逃げたほうがいいのか。

 でも、どこへ?

 出入口は相変わらず施錠されている。この部屋に隠れ場所なんかない。

 ドゴッ、とひときわ大きな音がして、ついに本棚が壁から外れた。

 支えるもののなくなった本棚は、バタン! と大きな音をたてて倒れた。奥からもうもうと埃が煙のように吹き出してくる。


「……!」


 本棚の奥は真っ暗な空洞になっていた。

 奥から、ぬうっと埃と同じ灰色の塊が出てくる。

 人影だ。

 そう思った瞬間、


「ゲホッ! ゲボゲホゲホ、ゴホッ!!」


 人影は大きく咳き込んでむせた。

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