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【書籍⑦巻&コミック①巻、12月発売】クソゲー悪役令嬢~滅亡ルートしかないクソゲーに転生したけど、絶対生き残ってやる!  作者: タカば
悪役令嬢は婚約を破棄したい

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【閑話】破れた夢の末路(カーミラ視点)

 ハーティア王宮謁見の間で断罪された私は、とにかく走った。

 憎き宰相の娘を刺し、煙幕で近衛の目をくらまし、手近な隠し通路へと飛び込んだ。そのあとどこをどう走ったかはよくわからない。

 便宜の見返りに、とユラから手に入れた姿隠しの魔道具を使い、とにかく周りの目をくらませて一目散に城の外へと出た。

 罪人として裁かれれば、二度と祖国の土を踏むことはできない。

 それだけは、受け入れられなかった。

 私の願いはあの方のもとへ戻ること。

 こんなちゃちな国で生を終えることではない。

 隠し財産を回収し、今までのありとあらゆる人脈を駆使して、とにかく国境へと向かった。ハーティアからの追手には、不思議と見つからなかった。あの宰相が私を放置するとは思えなかったが、それどころでない事態が起きていたのかもしれない。

 あの国は近いうちに滅びる。

 邪神に蝕まれ、モンスターに侵略された国など、少々がんばったところで立ちなおせるわけがない。

 滅びゆく国の道連れになるのもごめんだ。

 関所の役人に金を握らせ、無理やり国境を超える。疑われるかと思ったが、ユラから入手した認識阻害の魔道具がうまく機能したらしく、皆私を老婆だと思い込んだ。政敵を追い落とす作戦はことごとく失敗していたくせに、こんな時にだけ役に立つとは。なんという皮肉だろうか。

 老婆に身をやつして、ひたすらに移動する。

 王都は目指さなかった。

 家族に会ったところでいまさらである。

 ただ、あの方のもとへ。

 あの方が暮らす保養地の館へと向かった。

 館は今どうなっているだろう。

 柔らかな木々に彩られた、美しい館。庭に佇むあの人を見るのが楽しみだった。

 あの方がいるのはきっとあそこだ。

 長い旅を経て、ついに館の門にたどり着いた私は、姿隠しの魔道具を使って中に入った。

 ああ、も変わっていない。

 二十年以上経つというのに、庭は私が無理やり嫁がされたあの日と変わらなかった。

 あの方は決まって、優美な東屋で読書をしていた。

 そう思って奥へと進むと、そこには少年がひとり佇んでいた。

 つややかな黒い髪、黒い瞳。

 一目見て直感した。彼はあの方の子供だ。

 あの方の美しさをそのまま受け継いだ、完全無欠の男の子。

 いつの間に私はこんな子を産み落としていたのだろう。

 不思議な心持ちだったけれど、溢れてくるのは喜びだ。

 あの子を抱きしめたい。

 柔らかな体に触れて、自分が母だと実感したい。


「ア……」


 声をかけたのに、少年はなぜかあとずさった。


「ひ……だ、誰?」

「ア……」


 母だと名乗ろうとしたけれど、喉が引きつれてうまく動かなかった。


「テオ、どうしたの?」


 庭の奥から女がひとり現れた。少年の侍女だろうか、下品な赤い髪に趣味の悪いドレスを着ている。少年は何を思ったのか、女に向かって駆けていく。


「お母様、怪しい人が!」


 何を言っているのだ。母は私だ。

 首をかしげる私の目の前で、女は少年を後ろに隠してしまった。


「ここを誰の館だと思っているのです。用がないなら立ち去りなさい」

「ア……?」


 お前こそ私を何だと思っている。

 私はこの国の王女で、あの方の妻だ。立ち去るのはお前だ。

 少年に近づくには、どうにもあの女を排除しなければならないらしい。残ったわずかな魔道具で、果たせるだろうか。

 考えていると、庭にまた新たな人物が現れた。


「ジル、テオ、どうした?」


 それは、目もくらむような美丈夫だった。

 艶のある黒い髪に、黒い瞳。精悍だったその美貌は、二十年を経て深みを増している。

 間違いない、あの方だ。


「ア……」


 一歩、あの方に歩み寄る。

 やっと、帰ってきました。

 あなたのために、すべてをなげうってここまで来たのです。

 一目あなたに会うために。


「何者だ」


 あの方は、ぎろりと私を睨みつけた。

 そしてなぜか女と少年を背にかばう。


「お父様!」


 やはり少年はあの方の子なのだ。

 美しい黒い瞳がよく似ている。


「変なおばあさんが入ってきて……!」

「大丈夫だ。お前たちは私が守る」


 おばあさん?

 私はそこで、認識阻害の魔道具を使ったままだったことを思い出した。こんなものをつけていては、わからなくなっても仕方がない。

 持っていた魔道具を投げ捨てて、あの方へと進む。


「アア……」


 これでわかったでしょう?

 私です。

 あなたに愛を誓った王女です。


「不審な老婆よ、そこで止まれ。今すぐ立ち去るのなら、罰さないでいてやる」


 どうして?

 私は魔道具を外したはずだ。なぜまだあの方から老婆と思われているんだろう。


「ア……?」

「去れ、と言っている。これは脅しじゃない。近づけば斬る」


 あの方はすらりと剣を抜いた。

 切っ先が向けられる。

 どうして?

 私はあなたの妻で、その少年の母です。

 そんなものを向けられるいわれはない。

 むしろ……。


「旦那様」

「ジル、お前も下がっていなさい」


 下品な女が少年とともに、あの方によりそった。

 それはまるで、夫婦で親子のようだった。


「アアアアアアッ!」


 なぜこんなところに女がいるのだ。

 あの方の隣は私の場所だ!

 あの少年を抱きしめるのは私だ!

 お前がいていい場所じゃない!

 失せろ!


「止まれ!」


 踏み出した瞬間、体を灼熱が襲った。

 目の前が真っ赤に染まった、と思ったら体が地面に引き倒されていた。


「あなた、殺してしまうなんて」

「十分警告したというのに、老婆はお前を襲おうとした。これは、正当な処置だ」

「お父様……」

「怖かったな、テオ。もう大丈夫だ」


 あの方の声が、少しずつ遠くなっている。


「どこから迷い込んできた浮浪者か知らぬが、何か心を患っていたのだろう。せめて手厚く葬ってやろう」


 その言葉を最後に、私はもう何も聞こえなくなった。


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小説版もコミック版も、どちらもよろしくお願いします!!

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