退場劇
「馬鹿な……こんなことが起きるなど……」
ふら、と偽国王がセシリアに向かって歩を進めようとした。その瞬間、いっせいに近衛が動く。どどっと数人がかりで偽国王を床に引き倒して抑え込んだ。
「なにをする! 無礼だぞ!」
「無礼はあなたでしょう」
床に押さえつけられている偽国王を、宰相閣下が冷ややかに見降ろした。
「あなたの血統は否定された。今のあなた……いや、お前はどこの誰とも知れぬ馬の骨だ。王を偽った罪で、処されるがいい」
「ギュスターヴ!」
「連れていけ」
宰相閣下の指示に従い、近衛たちは偽国王を謁見の間から引きずり出す。
いれかわりに、オリヴァーが宰相閣下の前に立った。
「俺も一緒に行ったほうがいいかな?」
「……オリヴァーは別室で待機を」
「わかりました」
指示を出すと、また別の近衛がオリヴァーを連れていった。
「宰相閣下、あの……」
私はおそるおそる声をかけた。でも、王子がこのままでは寝覚めが悪すぎる。
意図が伝わったのか、宰相閣下は苦笑した。
「心配せずとも、大丈夫ですよ。オリヴァーはただ、あのふたりの間に生まれただけです。自ら血統の偽りを告発し、彼らの罪を止めた功績もある。……連座でもろともに罰されるようなことはさせません」
「ありがとうございます」
オリヴァーは勇気をもって出自を告白した。
いきなり血統が否定された上に、極刑にまで処されるなんて、かわいそうすぎる。なんとか生き残る道を残してあげたい。
「いやああっ!」
謁見の間に絹を裂くような金切り声が響いた。今度は元王妃カーミラが近衛に囲まれてヒステリーを起こしていた。彼女も退場すべき罪人だ。
「放して! 放しなさいよっ!」
暴れまわるカーミラに、近衛たちがあとずさる。
男相手ならともかく、ついさっきまで高貴な身分にあったご婦人を抑え込むのは、ためらってしまうらしい。
「カーミラ、落ち着いてください」
女は女同士、と判断したのだろうか。ずっと後ろに控えていたマリィお姉さまがカーミラの前に出た。宰相の娘の姿を見て、カーミラがさらにヒートアップする。
「あんたなんかに、名前で呼ばれる筋合いはないわよ! どきなさい」
「いいえ、あなたには罪を償っていただきます」
「私の何が悪いのよ!」
カーミラが叫ぶと同時に、マリィお姉さまの動きが止まった。やや間をおいて、つうっとその唇から赤いものがこぼれる。
「え……?」
呆然と己の体を見るマリィお姉さまの腹には、何か棒のようなものが刺さっていた。棒を中心に赤いシミが広がっていく。
「……あ?」
全員がマリィお姉さまに気を取られたその瞬間、視界が真っ白になった。
「な……!」
「煙幕だ!」
「視界を確保しろ!!!」
近衛兵たちの緊迫した声が重なる。
誰かが風魔法を使って、その場に広がった白い煙を押し流した。
煙幕の煙が取り除かれたそこには、腹を刺されて床に倒れこむマリィお姉さまの姿があった。
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